株式会社らしく

次世代経営人材を確保するための道筋~「5つの資質」を軸に、「育成」と「採用」の両面から取り組む

企業の成長には、事業を率いる経営人材を継続的に輩出する仕組みが欠かせません。しかし近年、多くの企業から「経営を担える人材がいない」「次期役員の候補が見当たらない」という声が寄せられています。

背景には、事業環境の変化に対して、育成も採用も従来のやり方のままという課題があります。本記事では、経営人材を内部で育てながら外部からも確保するためのコツとポイントをご紹介します。

変化の激しい時代、今「経営人材」に求められる資質とは

高度経済成長期からバブル期にかけての日本企業は、人口増加と国内市場の急拡大、輸出産業の成長という明確な追い風を受けていました。社会全体が拡大均衡を前提に動いていたため、企業経営にも比較的分かりやすい成功パターンが存在していました。

「右肩上がりの市場成長」「終身雇用・年功序列型の人事制度」「均質性の高い組織文化」「国内市場を主戦場とした、競争環境の明確さ」といった特徴が当時はありましたが、バブル崩壊後、日本企業が直面する環境は大きく変化。市場は縮小局面へと移り、グローバル競争が激化し、従来型の成功モデルが次々と通用しにくくなっています。

変化の激しい現代において、求められる「経営人材」の要素も流動的になり、環境変化への感度の高さや、非連続的な意思決定が求められるようになりました。このような環境下の中で、「経営人材」を自社でいかに確保していくか、「育成」「採用」の両面で考えていきます。

「経営人材」の育成~内部からリーダーを輩出する

経営人材の育成は5つの資質を軸に考える

経営人材に求められる要件は、変化の激しい時代において、従来の延長線では通用しにくくなっています。経営人材に必要な資質として以下5つをご提案しています。

  1. 方向を示し、浸透させる力
  2. 組織風土を変える力
  3. 異見を聞く力
  4. 決定し、結果責任を取る力
  5. 矢面に立つ力

日立製作所の川村隆氏やソニーの平井一夫氏の歩みに示されるように、経営人材は視座の高さだけでなく、組織に実行と変革をもたらす存在であることがわかります。「大企業の有名な敏腕経営者だから、うちの会社とは業界も事業も規模も異なるし⋯⋯」という観点もある一方、「経営人材」が持っている要素を因数分解し、共通項を見つけていく事で自社の「経営人材」を考えていくきっかけになります。

「経営人材」に欠かせない経験を積ませる手法~タフ・アサインメント

また、経営人材育成の中核となるのが、タフ・アサインメントです。これは経営に近い非連続な経験を若手〜中堅のうちから積ませる手法で、以下が代表的です。

  1. 経営領域を対象とする業務経験
    事業部門の全体管理、新サービス立ち上げ、グループ会社との協働など、事業の全体像を理解する経験は視座を高めるために有効です。
  2. 成長や改革が求められる非連続な職務
    新会社立ち上げ、ターンアラウンド、撤退判断のような、難易度の高い環境は候補者の資質を見極める機能も果たします。
  3. 部門横断のプロジェクトを任せる
    DX推進や重要な業務改革プロジェクトのリードは、組織横断での意思決定力を磨く実践の場となります。

タフ・アサインメントは単なるOJTではなく、育成と選抜を兼ねた仕組みとして設計することが重要です。加えて経営人材育成は、現場経験だけで完結するものではありません。タフな業務を経験しつつ、必要な知識・思考を体系的に補うOff-JTを組み合わせることで成長スピードが高まります。

「経営人材」の育成におすすめのコンサルティングプランと研修

「経営候補人材」の採用~外部から変革者を招く

経営候補人材を外部採用する場合の効果・注意点

これまでの経営人材養成という観点だけでなく、経営人材の確保のためには「外部採用」という選択肢も持っておきたいものです。一方で、一般の中途採用と同じプロセスでは、ミスマッチの可能性が高まりますので、採用ターゲットを考える上でのペルソナの設定、そして選考プロセスにおいても工夫が必要です。

■効果例

  • 即戦力確保が短期間で叶う可能性がある
  • 自社の変革や改革に、高いモチベーションで臨んでくれる可能性がある

■注意点例

  • 「不適合リスク」~厳選して採用したのに、うまくパフォーマンスが出せない
  • 「コスト」~早期退職の可能性があり、かけたコストを回収できない

上記のように、外部採用は絶対解ではなく、もちろん例外もあります。効果と注意点を理解した上で、自社に必要な取り組みを把握し推進していく必要があります。

経営人材に必要な「5つの資質」をもとに、採用ターゲット(ペルソナ)を考える

育成のパートでお話しした「5つの資質」のうち、どんな資質が採用ターゲットとしたいか、書き出してみましょう。

項目 A社(人材ビジネス企業) B社(SaaS系企業)
方向を示し、浸透させる力 ◎特に必要 ○あればよい
組織風土を変える力 ◎特に必要 ○あればよい
異見を聞く力 ○あればよい ◎特に必要
決定し、結果責任を取る力 ○あればよい ◎特に必要
矢面に立つ力 ○あればよい ◎特に必要

上記の例では、特に自社に足りない要素を持っている人材を採用ターゲット(ペルソナ)として設定しています。

いずれの資質もあった方がベターですが、自社では現状を踏まえて、どの要素を持っている人が欲しいのかを明確にし、「あれもこれも」にならないことが大切です。

経営候補人材採用で抑えるべきポイント①~求職者がキャリアをイメージできるように募集する

求職者とお話ししていると「求人票に書かれている業務内容や求める人物像、魅力ポイントが、どの会社に当てはまりそうな内容で違いが分からない」というご意見を多く耳にします。

例えば人事職の採用業務では「採用計画の策定」「各部門との要件すり合わせ」「求人媒体の選定・運用」「エージェント折衝」「書類選考・面接調整・面接官」⋯⋯のように羅列するのではなく

  1. 「採用計画の策定」であれば、誰と話してどんな計画を策定するのか(社長と話すのか、人事部長と話すのか
  2. どのくらいの部署、どんな職種が対象となっているのか
  3. 事業計画や配置にどの程度関われるのか
  4. 目標数を達成するためのプロセスの選択まで任されるのか
  5. 予算はどのくらいか(可能であれば)等)

採用における競合他社と事業における競合他社がいる中で、どれだけ他社と差別化して具体性を持っていくのかが重要です。一般的な言葉を多用するのではなく、自社の業務で無意識に行っている事を言語化していく事をおススメします。

経営候補人材採用で抑えるべきポイント②~「自社の魅力」を言語化して募集する

採用は競合他社との闘いであり、優秀な人材は取り合いになります。その環境の中で、いかに他社との差別化を図り、自社オリジナルの魅力を出していくかが重要になります。「うーん、うちの魅力って何なのだろう。あるのかな」とお悩みになる採用担当の方もいますが、確実にあります。そしてアピールすると求職者に喜ばれる魅力は意外にも普段の仕事の中に隠れている事が多いです。

例)ある会社では「当社は人を大事にするカルチャーが自慢」との事。具体的な事例を探していくと、「そういえば、全社員が見られるグループチャットがあって、そこに質問すると社長や経営陣含めて10分間で3件以上返信来るんだよね」と話しており、そのエピソードから「あ、そうか!うちの会社はおせっかいが多い会社かも!」と気が付きました。

「人を大切にする会社」ではなく、「グループチャットに質問すると10分間で3件返ってくる『おせっかい』が多い会社」のように具体例があると、求職者は「何この会社、面白そう」と反応してくれることが多くなります。ミドル、ハイレイヤー人材紹介事業を手掛けている人材会社では、企業様の魅力や特徴を言語化し、魅力に変えて求職者に発信していく事を行っています。

企業人事の皆様へ~らしくの人材紹介サービス

安定した人材戦略を「育成」と「採用」で成し遂げる

自社の置かれた事業フェーズや課題によって、内部育成の比重と外部採用の比重は変わります。重要なのは、両者を対立ではなく補完関係として捉えることです。

内部育成と外部採用を組み合わせて、自社の経営戦略・事業戦略に合わせた人材ポートフォリオを作り、実現のための選択肢を多く持っていく事が継続的な事業成長に繋がっていきます。

>株式会社らしくの人材紹介サービスはこちら

セットでおすすめの研修・サービス

上級管理職(部長・幹部・経営層向け)研修

上級管理職は、一般的には部長クラス以上の役職に就き、経営の代行者・部門経営者として組織経営の中核を担います。

組織によっては役員と合わせて「役員・経営層」と呼ばれ、本部長や部長を兼任するケースなどもあり、組織全体を主体的に牽引していく意識・スキルを持った人材が配置されます。これから会社を担われる方へ向けての研修です。

>上級管理職(部長・幹部・経営層向け)研修まとめはこちら

サクセッションプラン(後継者育成計画)関連サービス

2022年1月17日の国会の所信表明演説で新しい資本主義の構築のために、「人への投資」や「人的資本の開示」の推進が宣言されました。

その人的資本開示の項目には、リーダーシップやダイバーシティ、ウェルビーイングなどとともに、「後継者の育成」の項目もありますが、社長、経営幹部の後継者を選定し、育てる「後継者育成計画」のことをサクセッションプランといいます。

>サクセッションプラン(後継者育成計画)関連サービスまとめはこちら

研修のプロが選んだ動画コースを毎月配信 動画百貨店の定期便~部長の選択・社長の選択

インソースが開発した動画コンテンツ約900種類から、個人や組織の課題・目的に応じた動画を毎月2講座ずつお届けするサービスです。

プラン社長と部長の違いは配信期間です。貴組織のために選んだ動画教材を「社長の選択」は1年、「部長の選択」は6カ月、お届けいたします。

>動画百貨店の定期便~部長の選択・社長の選択の詳細はこちら

関連記事

関連シリーズ一覧

    • 公開

    名著から学ぶ経営戦略シリーズ

    • 企業戦略論

    • <名著から学ぶ>業務改善研修~効率と安全性を高める「トヨタ生産方式」

    • <名著から学ぶ>リーダーシップ研修~組織の価値を高める「真実の瞬間」