デジタル化が変えた、初級管理職の仕事~6つの変化がもたらす新しいマネジメント
デジタル化の波は、組織の在り方そのものを根底から変えています。安定的な環境で機能していた従来の官僚制マネジメントが限界を迎え、管理職には全く新しいアプローチが求められるようになりました。
では、具体的にデジタル化は組織活動にどのような変化をもたらし、それが管理職の仕事をどう変えているのでしょうか。現代の組織を特徴づける6つの変化を通じて、新任管理職に求められる新時代のマネジメントの本質を探ります。
現代の組織を特徴づける6つの変化
- 「ベテランの経験値」の価値の急低下~データドリブンでの意思決定
- 組織のフラット化~自律分散型組織への移行
- 業務のプロジェクト化~定常業務からの脱却
- 「先んじること」の重要性~アジャイル思考のマネジメント
- 自由度の高い働き方~従業員エンゲージメントの向上
- 人材の流動化~セルフマネジメント重視の部下育成
1.「ベテランの経験値」の価値の低下~データドリブンでの意思決定
ビジネスを取り巻く環境変化が激しい現代では、過去の成功体験をそのまま活かせる場面が減ってきており、ベテランの仕事の仕方を後輩たちがそのまま踏襲することも少なくなってきています。かつてほどベテランの勘や経験が有効に働かなくなっており、それに代わる形で「データドリブン」が重視されています。
「データドリブン」とは、ビジネスにおける重要な判断や行動をデータに基づいて行うことを指します。管理職は、大量のデータの中から意味のある情報を抽出し、それを適切に解釈するスキルを身につける必要があります。
たとえば、顧客の購買データやウェブサイトのアクセス解析データなどを活用することで、市場のニーズを正確に把握したり、施策の効果を客観的に検証したりすることが可能になります。データという客観的な根拠を持つことで、より説得力のあるリーダーシップを発揮することができます。
2.組織のフラット化~自律分散型組織への移行
デジタル化は情報の流通を加速させ、組織の階層を減らす「フラット化」を促しています。これにより、意思決定の権限が現場に委譲され、従来のトップダウン型マネジメントは機能しにくくなりました。管理職には、局面に応じて管理・統制を行う支配・牽引型のリーダーシップだけでなく、メンバーの自律性を引き出し、支援するインクルーシブ・リーダーシップを使い分けることが求められます。
変化の時代に適応した「自立分散型組織」では、目指すビジョンとルールに従ってメンバーが自律的に活動を行い、それをメンバー同士で相互監視し合います。管理職は、メンバー一人ひとりの能力を最大限に引き出すとともに、チームを機能させるためのしくみ作りを重点的に行い、変化に強く、柔軟な組織を作り上げることが必要です。
3.業務のプロジェクト化~定常業務からの脱却
デジタル化により定常業務の効率化が進み、それに代わって、変化する環境への適応や、新たな事業の開発といったプロジェクト業務に仕事の重心がシフトしています。管理職には、プロジェクト業務の特性を理解し、従来の部門管理とは異なるマネジメント手法を身に付けることが求められます。
管理職は自部門だけでなく、他部門との連携を促進する役割を担っています。部門間の壁を取り払い、組織横断的な視点で最適解を見つける調整力が不可欠です。
4.「先んじること」の重要性~アジャイル思考のマネジメント
変化のスピードが早く、将来の予測が不可能な昨今では、いち早く変化を捉え、人より先んじて手を打つことが肝要です。
管理職には短期間で状況を評価し、必要に応じて方針を柔軟に修正する「アジャイルな計画運営」能力が求められます。これは、短期間での計画と実行、そして評価を繰り返すことで、変化に柔軟に適応する手法を指します。アジャイルな計画運営では、失敗を恐れることなくチャレンジすることができ、早期に他者のフィードバックを得られるため、イノベーションが誘発されやすいというメリットもあります。
5.自由度の高い働き方~従業員エンゲージメントの向上
デジタル技術の進化は、リモートワークやフレックスタイム制などの普及を促しました。クラウドを介した情報共有や進捗管理は利便性が高く、オンラインでのコミュニケーションは対面と遜色のないものです。また、優秀な人材の獲得や、育児・介護などによる休退職を回避するためにも、働き方の自由度がもたらすメリットは大きいといえます。
6.人材の流動化~セルフマネジメント重視の部下育成
デジタル化と働き方の多様化は、終身雇用が当たり前だった時代から、キャリアを自ら選択する時代へと社会を変化させました。転職や兼業が一般的となり、組織における人材の流動化が加速しています。管理職は、メンバーの入れ替わりが頻繁に発生する環境で、チームの結束を維持し、生産性を最大化することが求められます。短期間でメンバーの能力を把握し、強みを活かした役割分担を行うことは、組織の持続的な成長にとって不可欠です。
また、働き方が多様化するなかで、管理職が常に部下を監視することは難しいため、部下の自主性に任せる「セルフマネジメント」を重視した育成が重要です。細かな指示を出すのではなく、目標と期待する成果を明確に伝え、その達成に向けた道筋は部下自身に考えさせるスタイルへと転換する必要があります。そうすることで、部下は自ら課題を発見し、解決策を導き出す力を養うことができます。信頼と権限の委譲を通じて、部下の成長を促すことが、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。
新時代のマネジメントで成果を上げるために
これら6つの変化は相互に関連し合い、管理職に複合的な影響を与えています。単一の変化への対応だけでは不十分で、すべての変化を統合的に捉えた新しいマネジメントアプローチが必要です。重要なのは、これらの変化を「困難」として捉えるのではなく、「機会」として活用することです。フラットで柔軟な組織運営、自主性を重視した人材育成など、新しいマネジメント手法を身につけることで、変化の激しい時代においても持続的な成果を上げることができるのです。
変化の時代の初級管理職研修(2日間)
本研修では、デジタル時代における組織活動の6つの変化を体系的に理解し、それに対応するための新しいマネジメント手法を学びます。
今や「フラットな組織体制」「アジャイルな計画運営」「自主性を重んじた部下育成」といったマネジメント手法が主流となりつつあります。時代の変化に柔軟に対応しながら成果を上げていくための考え方とスキルを習得します。
よくあるお悩み・ニーズ
- デジタル化が急速に進む中、マネジメントにも変化を迫られている
- 従来型の官僚制組織のマネジメントスタイルから、なかなか抜けられない
- 多様化する若い部下たちをうまく指導・育成できるようになりたい
本研修の目標
- デジタル時代におけるマネジメントの本質を理解する
- プロジェクト型の業務における計画の立て方や運営管理の仕方を身に付ける
- 今の時代にマッチした部下マネジメントのあり方が分かる
セットでおすすめの研修・サービス
インクルーシブ・リーダーシップ研修~多様性を包括するマネジメント
組織の多様性が進む中、従来の統率型のリーダーシップとは異なる「インクルーシブ・リーダーシップ(包摂型リーダシップ)」が注目を集めています。
個人を尊重し、個性の違いを活かしながらチームの成果を上げるこのリーダーシップは、変化の激しい今の時代にフィットしたもので、心理的安全性、1on1ミーティング、キャリア自律支援といった、近年のマネジメントワードとも通底したものといえます。本研修を通してインクルーシブ・リーダーシップの本質を正しく理解し、自組織において成果につなげていただくことを目指します。
部下指導アップデート研修~若手部下との距離感をつかむ
これまでのやり方を変えられない、変えたくないと思っている管理職や指導をする方に向けて今の若手の価値観や行動の傾向と指導方法を伝える研修です。
悩みの多い指導者側の気持ちを軽くしつつ、部下へ任せる仕事を変える、コミュニケーションの仕方を変えるなど、ワークを通じてなにを変えるとよいのか、実践的な指導方法を学びます。
管理職向け動画教材セレクション
管理職の方々に身につけていただきたいスキルに沿った動画を、初級管理職(主任・係長)・中級管理職(課長)・上級管理職(部長)、管理職共通、それぞれご紹介いたします。





