O(おまえ)J(ジャマだ)T(立ってろ)はダメ~心理的安全性に配慮した部下指導|マネージャーの方法論1
どんな優秀なリーダーも頭の隅には、「部下育成の悩み」を抱えているのではないかと思います。
「自分は先輩に厳しく指導されて仕事ができるようになったので同じような指導をする」では通用しません。人にもよりますが、今の若手には、年長者の指導に強い負担を感じる人が増えています。
「自分で工夫して考えて仕事をしなさい」と言っても、現場では限られた時間の中で長く試行錯誤させることが難しいのが実情です。さらに、すぐに答えを求める傾向のある若手世代にとっては、自発的に考えること自体が負担になりやすい状況があります。
心理的安全性に配慮した「計算された部下指導」が必要になっているといえます。「計算された部下指導」とはどういったものなのか、20年以上インソースで多くの企業の育成課題を解決してきた舟橋が語ります。
計算された部下指導を実施する~5ステップOJT
「O(おまえ)、J(ジャマだ)、T(立ってろ)」ではダメ
部下育成の基本はいつの時代もOJTが基本です。OJTの目的は、従業員、特に新人や中途採用者に実務能力を習得させ、現場で「考えて」「動ける」自立した人間へと育成することです。しかし、OJTが現場任せで「うちは忙しいので、O(おまえ)、J(ジャマだ)、T(立ってろ)が部下育成の基本」などと笑えない組織があったりします。
計画されたOJTが必要~5ステップでOJTをすすめる
無計画で現場任せのOJTは結局、新人や中途採用者が職場に失望したり、現場で良い扱いを受けなかったりして、メンタル不全や早期退職につながったりします。計算されたOJTを実現するためには、以下の5つのステップで実施するのが良いと考えます。
- ステップ1. 育成計画を立てる~上司や先輩が仕事の見通しを伝える
- ステップ2. 知識付与~OJTより先に座学で仕事の内容を伝える
- ステップ3. OJTの実施~仕事のやり方、意義、やりがいを伝え、教え方も最適化する
- ステップ4. ケーススタディ~経験談の共有で、こんな時どうするかを理解させる
- ステップ5. 面談の実施~部下一人ひとりの話を1週間に15分ぐらいじっくりきく
1、2のステップで若手社員に仕事や今後の指導に対する不安を減らし、3のステップで仕事の具体的な方法と意義を伝え、4のステップで主体的な判断力をつけ、5のステップで伴走する姿勢を示す、という若手に配慮したOJTです。これだけのステップを踏めば、効果的な教育を実現することができます。
ステップ1. 育成計画を立てる~上司や先輩が仕事の見通しを伝える
上司や先輩が育成計画を立てる~目標管理制度とは違う
大企業では社員一人ひとり自ら目標とその達成計画を立てる目標管理制度の導入が一般的です。しかしながら 、新人や中途採用者にとって、配属先の業務は今までやったことがない事ばかりで、仕事の見通しが立ちません。彼ら自身で目標設定するのは難しいのが実情です。
よって、経験豊富な上司や先輩が自身の経験に基づき、「1ヵ月後にはこの程度の業務ができるだろう」と見込まれる業務成果を達成目標として設定することが適切です。
その上で、部下が毎日出社して業務に取り組むことを前提に、育成計画を作成する方が合理的であると考えます。
具体的にステップごとに目標を示す~同僚と一緒に議論しながら作成する
具体的には、新人であれば、1週間後、1ヵ月後、3ヵ月後に具体的にどんな業務ができたら良いのかを記したOJTシートを上司や先輩が作成します。新任係長であれば、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後に何ができれば係長として合格かという内容のOJTシートを課長が作成します(下図:3カ月のOJTシート例)。

急に「こういったシートを作れ」と言われても難しく感じると思いますが、同僚と一緒に議論しながら作成すると案外容易に作成できます。ステップごとに目標を示すことで、部下は無理なく少しずつ成長すれば良いことがわかり、安心感を持つことができます。
このOJTシートがあることで、新人や中途入社者は成長の方向感を知ることができ、その結果、自分がどんな努力をしたら良いかが分かり、しっかり頑張っていこうという気になります。このシートを作成する方法は、新任管理職を育成する場合でも有効だと思います。
次回、「ステップ2. 知識付与」、「ステップ3. OJTの実施」についてお伝えします。
5つのステップで進めるOJT研修~リーダー・管理職の部下指導
(1日間)
本コラムの内容を研修に落とし込みました。本研修は、OJTを5つのステップに分け、自立して現場で考えて動く人材を育成することを目的にしています。研修内では、知識付与する内容、共有する経験談を洗い出し、育成計画をより具体的で現場で使えるものにしていきます。
本研修のゴール
- 座学で伝えたい仕事の知識を洗い出す
- 指導の具体的な方法を知る
- 自分の経験談や失敗談から事前に知らせておきたい内容を決める
- 面談の具体的な実施のポイントを身につける
よくあるニーズ・お悩み
- 今の若手の指導に悩んでいる
- OJTは指導側の負担が大きく困っている
- 若手や中途採用者の離職を減らしたい
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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マネージャーの方法論シリーズ
- O(おまえ)J(ジャマだ)T(立ってろ)はダメ~心理的安全性に配慮した部下指導|マネージャーの方法論1
- 現代のOJTは「座学→実践→フィードバックの繰り返し」が有効|マネージャーの方法論2




