新しくマネージャーに着任した時はどうすればいいか|新任マネージャーの方法論1
私には人を魅了する様な華がありません。地味で目立たないタイプです。そんな私が26才の時、システムの開発チームをまとめる役割を得ました。メンバーの大半は年上で、経験は私が最も浅い状況でしたが、試行錯誤しながらも、なんとかチームマネジメントをやりました。以来、35年間様々なチームで新任マネージャーをやってきた経験を踏まえ、「再現可能なチームマネジメント」について書いていきます。
まずは、以下の5つを実行します。
- 自らのミッションや目標を確認する~1ヶ月後、自分で目標を立てる
- 縦のラインに挨拶する~多面的に情報収集し業務遂行の指針にする
- 引継ぎを受ける~リスク情報と年間業務とやり残した事は聞く
- 部下対応~面談を実施し部下の想いを知る
- 定期ミーティングを設定する~チームコントロールの第一歩
1.自らのミッションや目標を確認する~1ヶ月後、自分で目標を立てる
まずは、着任先の上司からチームの目標なりミッションを確認します。その際、当面の目標、半年後、1年後の目標など具体的に指示を受けます。ただ、具体的でない、あいまいな目標や、現実的でない高すぎる目標しか指示されないことが多くありました。
ちょっと困ってしまいますが、上司も新任マネージャーの力量が、はっきり分からないので無理ないと思ってください。そんな場合、1ヶ月ぐらい担当業務をやり、チームの状況を把握した後、上司と対話し、目標やミッションを具体的にするぐらいで良いです。
2.縦のラインに挨拶する~多面的に情報収集し業務遂行の指針にする
直属の上司への報連相を密に実施して、チームの状態や業務の状況を報告し、指示を受けるだけでなく、最初の1ヶ月の間に縦のライン、上司の上司である部長や担当役員、場合によっては社長にまで新任の挨拶に行き、自分の担当業務に関する考えやアドバイスを聞く事をお勧めします。さまざまな人から話を聞けば、業務を立体的に捉えることができ、目標や達成プロセスの精度が上がります。
3.引継ぎを受ける~リスク情報と年間業務とやり残した事は聞く
引き継ぎを行う際は、だいたい以下の点をヒアリングします。
- チームの業務や役割分担~だれがどんな業務を行っているか
- チームの年間業務~どのタイミングでどんな業務を実施しているか
- リスク情報~過去にあった大きな事故、トラブル
- 前任者のやり残した事
チームの年間業務~繁閑把握とイレギュラー把握をする
ほとんどの組織で年間の繁閑があり、閑散期に繁忙期の備えをするのがマネジメントの基本です。が、新任では繁閑が分かりません。閑散期をのんびり過ごしては、繁忙期にトラブルになってしまいます。また、通常とは違った取り扱いをしないと乗り切れない業務が控えていたりします。インソースで言えば、4月の新人研修は絶対にミスの許されない、気が気ではないイベントで、全社通常とは異なるオペレーションになります。
リスク情報~過去事故情報は頭に入れ、着任後対策する
事故というのは、どんなに事後対策を実施しても、同様のものが2度、3度起きるものです。過去にやらかした事故・トラブルを再発させるのは、新任マネージャーとして絶対に避けるべきです。引継ぎ時に過去の事故内容をしっかりヒアリングし、事故報告などが残っていれば、読みこんでおきましょう。チームメンバーの日常に乗っかっている、危なっかしいマネージャーが時々いますが、絶対に再度トラブります。着任後、自らが深く考え、業務の点検や事故を起こさない仕組み化を徹底しましょう。
ちなみにインソースでは事故・トラブルが発生した場合には、粘り強く仕組み化・システム化する事を繰り返してきました。今ではそれが競争力の源泉となっています。
前任者のやり残した事を聞く
前任者が何年も実務をやった上で考えた貴重な意見なので、心平らかに真剣に聞きましょう。チーム運営のヒントが必ずあります。しかし、私の経験で言えば役に立つ話は半分程度でした。理由は前任者視点からの課題であり、会社視点からの課題と違っていたり、着任後に知ったチームメンバーの状況と異なっていたからです。着任してから前任者のやり残した課題について再考するのが良いと思います。
4.部下対応~面談を実施し部下の想いを知る
部下と1対1で必ず面談を実施します。面談のポイントは、前任者や上司からの注意事項などをゼロクリアして、とにかく話を聞く事です。
私は面談で話を聞く際は、自分はどうありたいかとか、要望とか希望を聞いています。「期待にすぐ応えられるかどうか分からないが、できることはすぐやる」と伝えています。
また、この様なご時世ですからプライベートな話を無理やり聞き出す事は厳禁ですが、業務上で何らかの配慮をするため、家族構成、プライベートの問題・課題、経済状況など話してくれる範囲で、まず聞く様にしています。
部下の小さな悩みはすぐ解決してあげる~親切心を示す
人には必ず何か悩みがあります。特に若手や職位の低い部下は、自分では解決できない小さな事に、日々悩んでいるものです。例えば、書庫の整理を若手だけで対応するルールになっており、若手だけ残業が発生して困ってる様な事です。こんな時は一度、自らも書庫整理を手伝い、その疲れをテコに全員で書庫整理をするルールに変更します。
こういった小さな事の解決に、すぐ動けば、メンバーの信頼感は、どんどん醸成されていきます。
週に一度は部下と1対1で面談する
経験から申し上げると、部下が退職する際、よく考えてみると、3ヶ月から半年ぐらい1対1で話してなかったなと気づいて後悔するものです。話を週に一度は聞く様にすると、まず人は離職しません。後悔先に立たずです。
面談研修を実施する中で悟ったのは、面談とは「がまんして自らの要望などは話さない」技術です。指導したいのを、がまんして部下の話を聞いてあげましょう。
頻繁な面談を通じて、プライベートな話は、だんだんしてくれるものです。面談は回数命です。
5.定期ミーティングを設定する~チームコントロールの第一歩
新任マネージャーがチームをコントロールする事は、とても難しいもので私も苦労してきました。前任者と異なった方針や指示を出そうものなら、あからさまに反対しなくても、今までと仕事のやり方を変えず、指示はなんとなく無視される、なんて事はよくありました。
チームコントロールの第一歩は、全員参加のミーティングを定期的に開催することです。粘り強く。できれば対面で「みんな一緒に同じ空気を吸って、同じ話を共有する」のです。毎日の朝礼と週次のチームミーティングを、全員参加で実施するのが私の方法です。
自ら準備し自ら話す~大事な事は10回ぐらい言わないと伝わらない
ミーティングで部下から報告を受けるだけのマネージャーがいますが、これはもったいないです。マネージャーが新しいビジョンを示したり、業務改善の方法、リスク対策で徹底したい事などを伝える場とすべきです。私はインソースを創業して以来23年間、毎週月曜朝、1時間の全社朝礼の場で、これら知って欲しい事をA4用紙1枚ぐらいにまとめて話しています。
週末に2時間ほど資料作成に手を取られますが、チームコントロールの最も重要な仕事として手をぬかず実施しています。部下の報告を受けるだけでは外部環境の変化にはついていけませんし、業務改善などできません。
部下の遅刻はエンパワーのチャンス~合理的根拠を持って指導できる
新しいマネージャーに従う気がない人が定期ミーティングに遅れてきた場合は、幼稚園児でも分かる様な合理的な理由で、強く指導できる良い機会になります。
「なぜ決まった時間のルールを守れないのか」「優秀なあなたがこれでは困る」と指導すれば、不承不承ながらも従ってくれるようになります。
新任マネージャーには3ヶ月の猶予がある
新任マネージャーが最初からうまくやれることは、まずありません。初期に業績が上がらないとしても、3ヶ月ぐらいは、前任者の業績であり問題だと、会社や上司は分っています。私もそうですが「3ヶ月ぐらいの猶予は与え、ちょっと観察しよう」と考えるものです。ただし、着任から3ヶ月を過ぎれば、業績不振もトラブルもマネージャーの管理責任を問われます。この3ヶ月をどう過ごすのかがカギです。
関連する研修
新任管理職研修~自信を持ってマネジメントを始める編(2日間)
新任管理職としてやるべきことを一通り学ぶことができ、3ヶ月後に大きな成果を発揮するための研修です。
段取り研修~管理職としての基本的マネジメントスキルを理解する
成果をあげる管理職に必要な3つのマネジメントスキル「①部下指導・育成力、②業務管理力(推進・改善) 、③リスク管理力」を習得するための研修です。
管理職向け研修~マネージャーとしての課題を整理する
現在管理職の方が、自身に求められる役割をあらためて整理でき、組織・業務・人の3つのマネジメントを学べる研修です。
1対1面談研修~部下のキャリア開発支援編
1対1面談のフレームワークを具体的に学べる研修です。
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
新任マネージャーの方法論シリーズ





