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管理職が伝えるべき「早く間違える・失敗することのメリット」~正解は一つ思考からの脱却と成長加速

「新人が仕事を抱え込んで報告が遅れる」「指示を守ろうとするあまり、柔軟に動けない」。こうした悩みは多くの職場で共通しています。その背景には、近年の若手が「間違えること」を極端に恐れる心理があります。

本記事では、社会人経験の浅い人がなぜ間違いを恐れるのかを教育・心理・組織文化の観点から紐解き、「早く間違えさせる・失敗させる」ことの重要性と、人事・指導者が取るべき具体的アプローチを解説します。小さなミスやアクシデントを責める文化から、学びを称える文化へ。育成力の高い組織づくりに役立つ視点をお伝えします。

新人が間違いを恐れる3つの理由

新人が失敗を避けるのは、単なる性格の問題ではありません。教育を通じて形成された価値観や、職場での人間関係・評価制度などが複雑に影響しています。主な理由は次の2点です。

1.「正解は一つ」と教えられてきた教育と、評価・期待への過剰な意識

多くの新人は、学生時代までの教育環境で「正解は一つ」「間違えたら減点される」という価値観を植えつけられています。受験やテスト中心の教育では、失敗は避けるべきものとして扱われてきました。そのため、社会に出て「正解が一つではない」「状況によって答えは変わる」という現実に直面すると、強い不安を覚えます。

さらに、職場では評価されることや期待を裏切らないことへの意識が重なります。一度のミスが上司や先輩の信頼を損ねるのではないかと考え、慎重になりすぎるのです。上司が激励の気持ちで放った「頼んだよ」の一言が、「失敗してはいけない」という無言のプレッシャーにすり替わってしまうこともあります。結果として、行動しないことで、失敗を回避する新人が生まれ、挑戦機会を自ら手放してしまうのです。

2.ホウ・レン・ソウに対する心理的ハードル~無用な遠慮で負のループが生まれる

「トラブルを報告したら怒られるのでは」「忙しそうで声をかけづらい。自分の困りごとに先輩たちの時間を使ってもらうなんて」と思い込み、締切間際まで業務を抱え込む若手も少なくありません。ホウ・レン・ソウが遅れると、上司側の本人に対する信頼も低下し、指導のトーンが厳しくなる──この悪循環が、若手が上司に助けを求めるハードルをさらに高くします。

根底には、「完璧にしてから報告すべき」「中途半端な状態を見せてはいけない」という誤解があります。これは前述の「減点主義的な教育」とも深く結びついています。社会人教育においては、「途中経過を共有することが自身の成果につながり、組織のリスクマネジメントの実現に貢献する行為」という認識を、新人に再学習させる必要があります。

間違いは育成の素材~早く間違えさせることの意義

新人教育において、最も効率的な学びは早期の失敗体験から生まれます。

早い段階で失敗するほど成長速度は上がる

人は成功体験よりも、失敗体験からの学習効果のほうが高いことが知られています。特に入社1年目の段階で小さなミスを繰り返すことは、後の大きな失敗を防ぐ重要な予防線となります。一方で、失敗経験を先延ばしにすると、責任の重い業務で初めてミスをすることになり、本人の心理的ダメージも大きくなります。

大人たちが先回りしてトラブルを回避させることは、本人の成長機会を奪うというわけです。「小さく」「早い段階で」失敗させる、というところが成長曲線を描くポイントであるとインソースは考えます。

相手の期待値をうまく使うために必要な「戦略的なホウ・レン・ソウ」を促す

納品や締切のギリギリまで精度を高めようと一人で試行錯誤する行為は、業務依頼者の期待値を高めてしまいます。期待値が上がることそのものは悪くないのですが、問題は、時間をかけて作り上げた成果物が依頼者の想定したものと異なった場合は、「がっかり感」が増してしまうことです。期限が近いと周囲のメンバーがそのリカバリやフォローをする余裕もありません。

若手が先輩や上司に無駄な労力を使わせたくない、と思うのであればとにかく早く「この進め方でよいか」「方向性に誤りはないか」を確認してもらう機会を得ることが重要です。先輩方は間違った方向に進んでいることがわかれば速やかに指摘し、「この状況での最適解は前回とは異なるよ」「こんな方法もおすすめ」などと正しいやり方や応用のためのヒントを与えてくれます。

指導者の役割は「失敗の安全地帯」をつくること

指導者が行うべきは、「間違えてもいい、何度でもやり直せる」と新人や若手が感じられる環境を整えることです。たとえば、

  • 最初の1カ月はチェックを密に行う
  • 軽微なミスを責めずに、改善方法を一緒に考える
  • トラブルを共有するミーティングを責任追及の場ではなく学びの場に変える

こうした工夫が、失敗を前向きにとらえる職場文化を育てます。

抱え込みを防ぐマネジメント~心理的距離を縮めるコミュニケーション

新人が抱え込む背景には、上司との心理的距離があります。早期発見とフォローのためには、話せる関係を意図的に作ることが欠かせません。

定期的な対話で不安を可視化する:5分間面談のススメ

各業務の進捗報告に加えて、「いま不安に思っていること」「困っていること」を話せる5分面談を週1回でも実施すると効果的です。問題が小さいうちに共有できるため、トラブル防止だけでなく信頼関係の構築にもつながります。

「確認は歓迎」というメッセージを明確に

新人の多くは、こんな些末なことを聞いたら迷惑かもしれない、と遠慮しています。そこでチームや部門の管理職や人事部門サイドから、「確認は歓迎」「わからないまま進めるほうが問題」と言葉にして伝えることが重要です。行動基準を明文化することで、心理的安全性が高まります。

人事部門が担うべき役割―指導者の教育と育成文化の仕組み化

指導者に教える力を育てる教育を~待つのではなく、気づかせる

人事部の重要な役割は、現場の指導者に対して「育て方」を学ばせることです。たとえば、以下のような観点を研修で取り入れると効果的です。

  • 失敗を恐れずに挑戦させるOJT技法
  • 待つよりも何度も気づかせる指導への転換
  • 指導者同士が悩みや成功事例を共有できる仕組みの整備

指導者自身が「失敗を成長とみなす」意識を持つことで、組織全体に学習文化が広がります。

育成文化を制度として定着させる

失敗を許容する文化は、意識醸成だけでは根づきません。人事部は制度設計の観点からも後押しが必要です。

  • 報連相や改善提案を評価項目に組み込む
  • ミス事例の共有会を社内行事として定期化する
  • 新人と上司の1対1面談を制度化する

これらを仕組みとして整えることで、属人的な指導に頼らず組織としての育成力を発揮できます。

早く間違えさせることで新人も組織も成長する

新人教育のゴールは、失敗をなくすことではありません。失敗から学び、次に活かせる人材を育てることです。正解は一つという思い込みから脱却し、間違いを学びに変える職場をつくることで、新人の行動量と成長スピードは確実に向上します。

OJTの受け方研修~教わり上手になるための5つのポイント

OJTでは、教わる側もただ受け身で話をきいているだけではいけません。メモの取り方を工夫し、質問を通してわからないことを明確にするなど、限られた時間のなかで指導効果を最大限に高めることが大切です。

本研修では、メモの取り方や質問の仕方などの実務的な部分だけでなく、謙虚さ・素直さといった基本的な姿勢についても学びます。ワークでは、上司・先輩からフィードバックを受けるロールプレイングで、教わる側の心構えを体得します。

本研修のポイント

  • 上司・先輩への質問を阻むものを知る:忙しそうで遠慮してしまう、よく知らないので緊張する
  • 初歩的な質問ができるのは新人の今だけであることを理解する
  • ネガティブな指摘でも前向きに受け取るための心構えがわかる

よくあるお悩み・ニーズ

  • メモを上手く取れるようになってほしい
  • 上司や先輩からの指摘に対する受け止め方を学んでほしい
  • 新人の反応が薄く、教えていて不安になる

本研修の目標

  • 指導する側の立場や状況に配慮し、教わる側の心構えを再認識する
  • 上司・先輩からの信頼を高める反応の示し方を習得する
  • 受けたフィードバックを前向きに捉え、業務に活かせるようになる

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