「そういうものだから」が若手を辞めさせる~モチベーションを失わせる魔の言葉

「どうすれば部下のやる気を引き出せるのか」。今も昔も管理職や人事担当者の多くが頭を悩ませる課題ですが、世代間の考え方のズレが、悪気無く部下のモチベーションを下げてしまっていることが少なくありません。
部下から「そもそもこの作業、何のためにやるんですかねぇ」と訊かれた時に、「まあそういうものだから、とりあえずやっておいて」と答えるなど、一見よくあるやり取りの中にも、部下のやる気を削ぐ要素が含まれています。
そんな時に、理解しておくと役立つのが「ジョブ・クラフティング」という考え方です。これは、与えられた仕事をただこなすのではなく、自らの価値観や強みと結び付けて再構築し、自分にとって意味のある仕事へと「つくりかえる」手法です。本記事では、この手法を取り入れることで、世代間ギャップを乗り越え、部下の「やりがい」と「主体性」を引き出す方法を解説します。
部下のモチベーションを阻む壁とは
若手社員が仕事へのやる気を失う背景には「なぜやるのか」が見えないことへの不信感があります。
上の世代は「仕事は理不尽に耐えるもの」という考えを経験から身につけてきました。しかし、合理性を重んじる若手は違います。「なぜこの方法でやるのか」という理由が示されないまま、「そういうものだから」と押し付けられると、不信感を募らせてしまいます。その結果、「この職場では成長できない」と感じ、モチベーションを下げてしまうのです。
さらに、若手世代は仕事を通じて社会や他者にどう貢献しているのか、という仕事の意義に強い関心を持っています。自分の仕事が誰の役に立っているのかが見えないと、「何のためにやっているんだろう」と感じ、やるべき意味を見失ってしまいます。この世代間の価値観のズレこそが、摩擦やモチベーション低下の温床になっているのです。
ジョブ・クラフティング:仕事に「やりがい」を生み出す3つのアプローチ
このような状況を打開する鍵となるのが、ジョブ・クラフティングです。これは、仕事に主体的に関わり、自分自身で意味を見出していくための考え方です。ジョブ・クラフティングには、主に3つのアプローチがあります。
- タスク・クラフティング
自分の役割や仕事内容を工夫し、強みを活かせるように調整することです。たとえば、単純なデータ入力作業でも「この作業を通じてチーム全体の効率を上げられる」と捉え直すことで、前向きに取り組めるようになります。 - リレーションシップ・クラフティング
関わる人との関係性を調整し、協働の質を高めることです。苦手な人との接点を減らし、信頼できる同僚との協業を増やすことで、人間関係のストレスが軽減され、仕事への意欲が高まるようになります。 - コグニティブ・クラフティング
仕事そのものの捉え方や意味を再解釈することです。たとえば、営業活動を単なる「ノルマ達成」ではなく、「顧客の課題を解決するサポート」と捉え直すことで、大きなやりがいにつながるようになります。
これらのアプローチを通じて、部下は「自分の仕事は誰かの役に立っている」「自分の成長とつながっている」と実感できます。上司は、ただ指示を出すのではなく、部下自身がやりがいを「発見する」のをサポートすることが重要です。
管理職ができる実践的なサポート
ジョブ・クラフティングを組織に根付かせるために、管理職がいますぐできる具体的なサポートは以下の通りです。
- 「なぜこの仕事をするのか」を言語化する
仕事の背景や目的を丁寧に説明することで、部下は仕事への納得感を得やすくなります。 - 部下の価値観や強みを把握する
雑談や1対1面談を通じて、「何にやりがいを感じるか」をヒアリングし、タスクの割り振りを工夫しましょう。 - 小さな工夫を認め、後押しする
部下が仕事で自分なりの工夫を試みたら、結果にかかわらずその姿勢を評価し、「自分のアイデアが受け入れられる」という安心感を持たせます。
「やる気出せ」はやる気出さない~部下自身が仕事の意味づけできるように環境を整える
世代間の価値観の違いを嘆くのではなく、違いを理解し、その上で部下が自ら「やりがい」を見つけられる仕組みを提供することが、これからのマネジメントでは不可欠です。
ジョブ・クラフティングは、そのための強力なツールです。上司が一方的に「やる気を出せ」と迫るのではなく、部下自身が主体的に仕事を意味づけできる環境を整えることこそが、モチベーション向上への近道なのです。
部下のやる気の引き出し方研修~ジョブ・クラフティングで「やりがい」を見出す
かつては、「出世」や「報酬」がモチベーションの源泉であり、「競争」はやる気において不可欠な要素だと考えられていたのが、今の若者にとっては、「職場の関係性」や「仕事の社会的意義」といったものの方が重要な要素と捉えているといわれています。
ジョブ・クラフティングとは自分の仕事に対して、自信とやりがい・こだわり、プロとしての責任を持ち、質の高い仕事を行うための意識の持ちようのことです。この考え方をベースに、若手のやる気を引き出す考え方と手法をお伝えします。
よくあるお悩み・ニーズ
- 若手のやる気のなさに悩んでいる
- 若い世代の仕事観に戸惑うことが多い
- ジョブ・クラフティングという考え方に興味がある
本研修の目標
- ジョブ・クラフティングについての基本知識を身につける
- 若手世代の育成のポイントが分かる
- 自分の部下や後輩との具体的な接し方が分かる
セットでおすすめの研修・サービス
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「コミュニケーション編」と「メンタル強化編」に分け、前向きに仕事に取り組むマインドを醸成する研修です。
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