上司がメンバーのキャリアのモヤモヤを解消する対話術~Will・Can・Mustで納得感ある面談を実現

「この仕事、向いているのかよく分からないんです」
「やりたいことって言われても、正直ピンとこなくて......」
「評価はしてもらっているけれど、何のために頑張っているのかわからない」
こんな声をメンバーから聞くことはないでしょうか。
キャリア面談や1対1ミーティングで「あなたはどうなりたいですか?」と問いかけても、うまく言葉にできずに沈黙が流れる。あるいは、目標管理シートにはそれらしい言葉が並んでいても、本人の表情には納得感がない。
そんなとき感じるのは、「この人は本当はどこにモヤモヤを抱えているのだろう?」という違和感かもしれません。この記事では、キャリアのモヤモヤを整理し、内発的動機と会社からの期待をすり合わせるための対話のフレーム「Will・Can・Must」を解説します。
メンバーが「キャリアのモヤモヤ」を抱えやすい背景
キャリアの悩みは、必ずしも「やりたいことがない」だけが原因ではありません。例えば次のような状況です。
- 目の前の業務に追われ、自分のキャリアを考える余白がない
- 評価や目標はあるが、「何のためにこの数字を追うのか」が本人の言葉になっていない
- 上司や会社からの期待(Must)が強く、本人のWillが後回しになっている
- 本人の「できること(Can)」が上司にも本人にも掴みきれていない
こうした状態が続くと、「自分の強みが分からない」「会社の方向性とキャリアの接点が見えない」と感じてしまいます。人事や上司に求められるのは、この構造を「やる気の問題」とせず、見えない要素を一緒に整理することです。そのとき役立つのが「Will・Can・Must」というフレームです。
Will・Can・Mustを対話の地図として使う
「Will・Can・Must」は次の3つで構成されます。
- Will:本人が大事にしたい価値観、ありたい姿、やってみたいこと
- Can:これまで培ってきたスキル・経験・強み、伸ばせそうな力
- Must:会社・組織から期待されている役割、ミッション、目標値
これら3つの重なり方が、その人のキャリアの「納得感」を左右します。「あなたのWillは?」と単発で尋ねるのではなく、3つを行き来しながら輪郭を描くように対話することが大切です。
実際の対話での使い方
1.Must(期待)を一緒に「見える化」する
Mustは「上から与えられるもの」と捉えられがちですが、人事はその期待を言語化し、本人に届く形に翻訳できます。以下のような問を駆使しながら、本人の理解と実際の期待がズレていないか確認し、整理していきましょう。
問いの例:
- 「今のポジションに対して、会社や上司が期待していることはどんな点だと思いますか?」
- 「評価面談などで繰り返しフィードバックされるキーワードはありますか?」
2.Can(強み)を「本人の当たり前」から掘り起こす
多くの人は、自分の強みに無自覚なことが多いものです。まずは、それを見つけるための問いを投げかけます。
問いの例:
- 「周りから『助かった』『ありがとう』と言われる場面はどんなときですか?」
- 「普通にやっているだけで評価される仕事はありますか?」
- 「苦にならずに続けられる役割は何ですか?」
これらの問いで引き出した内容に言葉を添え、「情報整理が得意ですね」「感情に配慮できる強みがありますね」とCanに名前をつけていきます。
3.Will(価値観)を「出来事」からたぐり寄せる
「やりたいこと」で詰まる人も、「うれしかったこと」「しんどかったこと」なら語れます。そこで、価値観の手がかりとなる出来事を振り返る問いを投げかけます。
問いの例:
- 「これまでで印象に残る『やってよかった仕事』は何ですか?」
- 「どんなところが特にうれしかったですか?」
- 「反対に、しんどかった仕事は?その理由は?」
これらの問いで出てきた感情のキーワードから、「人の成長に関わりたい」「自分のアイデアを形にしたい」などWillの種を拾いましょう。
Will・Can・Mustの「重なり」を一緒に描く
3つの円を描いて、重なりを可視化してみましょう。
- 今のMustの中でCanが活きている部分はどこか
- MustとWillがすでに重なっている点はどこか
- Willが反映されていないMustはどこか
ギャップを指摘するだけでなく、重なりを言語化することが重要です。「このプロジェクトは、あなたのCanとMustが重なる領域ですね」と伝えることで、自己理解が深まります。
モヤモヤが残るとき、一緒に考えられること
- Must側を調整できないか(部署・役割・プロジェクトの工夫)
- Canを広げる機会を提供できないか(研修やストレッチな業務へのアサイン)
- Willの解像度を上げる時間をとる(数回に分けた対話を続ける)
「あなたはどうしたい?」で終わらせず、伴走しながら地図を描き続ける姿勢が大切です。
上司自身もWill・Can・Mustを使うべき理由
メンバーの支援を通して「自分のWill・Can・Mustは?」と考える瞬間があるかもしれません。その問いを無視せず、自分のキャリアにも適用してみましょう。キャリアを丁寧に扱う姿は、周囲にとっても安心材料になります。
Will・Can・Mustは、メンバーのためだけでなく、自分自身のキャリアのコンパスでもあります。
リフレクション研修~Will・Can・Mustでキャリアを考える(半日間)
入社から数年が経過し様々な経験を重ねるうちに、自分の業務や役割に対しての目的や意義に疑問を抱いたり、今後のキャリアについて不安に感じる方が少なくありません。
そこでセルフコーチングを行い、自分自身へ問いかけ、自らの内面に気づき、自分の言葉で整理することが必要です。
本研修ではPoints of you®というセルフコーチングツールの手法を使用し、自身のキャリアビジョンと、達成へのステップを言語化していきます。Points of you®を用いて「Will=やりたいこと」「Can=できること」「Must=するべきこと」を受講者同士で対話し、自分自身の考え方にくわえて他者からの視点を得ていただきます。明日から具体的にどう行動すべきか自分の言葉で整理することで、自身のモチベーション維持を図ります。
本研修のゴール
- 自分の仕事をWill・Can・Mustのフレームで振り返る
- 業務の目的や意義を整理する
- 今後のキャリアを考える材料が自分の中にある状態
よくあるお悩み・ニーズ
- 数年間の業務経験で慣れてきた結果、モチベーションが低下している
- 自分の業務や役割に対しての目的や意義、理由に疑問を感じる
- 今後の成長やキャリア設計を考える上で、具体的に何から取り組めばいいのか分からない
セットでおすすめの研修・サービス
ワークライフインテグレーション研修(1日間)
ワークライフインテグレーションとは、仕事は人生の一部と捉え、その他のさまざまな要素を統合し充実度を高めるという考え方です。研修ではまず、これまで身につけたスキルを棚卸し、自分や組織が大切にしている価値観を洗い出して共通点を探します。
各世代ごとに変わってくる生活・マネーについて解説した後で、今後30年のライフプランを具体的に考えます。最後には、人生で重視したい要素と10年後までに実行することを明確にし、ワークライフインテグレーションの実現を目指します。
自己理解研修~行動特性検査giraffeの活用(半日間)
自分のことは、自分がよく知っていると思ったり、自分は○○だからと決めつけたりしがちですが、実は自己理解を深めることで、変えられることはたくさんあります。自分を客観視できると、より深い理解にたどり着くことが可能です。
本研修は、客観的な指標として「行動特性検査giraffe(ジラフ)」を用い、自己理解を深めます。自身がとっている行動の理由を知ることで、今後の行動変容を促します。
部下コミュニケーション向上研修~1対1面談を通した部下育成支援
職場を構成する社員の年齢層や雇用形態が多様化したことにより、社員個人の事情や制約に合わせたマネジメント・指導が求められてきています。
そのようなマネジメント・指導を実現させるためには、定期的な1対1面談を通して、社員1人1人と時間をかけて話し合うことが重要です。
本研修では、1対1面談の意義、進め方を理解した上で、面談で取り上げるべき内容(自部署の目標や方向性、部下の働き方、体調、人間関係の悩み)を習得します。






