事業と人事を強くするソーシャルグッド実践法~企業が取り組むべき本質的アプローチ

企業が社会課題に向き合う姿勢は、もはや外部へのアピールにとどまらず、事業と組織づくりの中心に置くべきテーマとなっています。
しかし、寄付活動や単発のイベント開催にとどまり、本業とのつながりがあまり感じられないケースもあります。読者の皆さまの中にも、具体的に自社でどのように取り組めばよいのか判断しづらいと感じている方が多いのではないでしょうか。
本記事では、ソーシャルグッドの本質とSDGsとの違いを整理し、ソーシャルグッドの代表的な成功事例を紹介します。そのうえで、事業戦略や人事施策へどう統合するかを実践的に解説します。
事業活動に組み込んでこそ価値を生むソーシャルグッドの本質
SDGsとは異なるソーシャルグッドの視点
SDGsは国際的な行動指針であり、すべての企業が共通言語として活用できる枠組みです。一方、ソーシャルグッドは、企業が社会に提供する良い影響そのものを指し、事業の独自性や強みを踏まえた主体的な行動が求められます。重要なのは、事業そのものが社会的価値を生む仕組みであるかどうかです。理念の掲示だけでは成立せず、日々の業務や商品、サービスの中で具体的な価値を生み出す必要があります。
単発施策では広がらない理由
社会課題が複雑化する現在、単発のボランティア活動や寄付では解決に向けた影響は限定的です。企業が持つリソースや事業モデルと結びつくことで、継続的で大きなインパクトを生むことができます。例えば、食品ロスの削減、製品の再資源化、循環型の物流など、日々の事業に統合されることで初めて持続可能な価値が生まれます。
日本のソーシャルグッド事例に見る成功の条件
本業起点で課題解決を続けるエシカルな企業モデル
世界の先進企業では、メイン事業そのものが社会課題を解決する構造を持っています。教育格差、環境負荷、地域コミュニティの活性化など、企業の強みを生かして新しい価値を生み出しています。こうした取り組みは社会にとってのメリットであると同時に、新たな市場をつくる機会にもつながっています。
日本においても、この本業起点のアプローチが広がってきました。食品ロス削減を軸に事業を展開するクラダシはその代表です。販売可能でありながら廃棄される食品を流通させる仕組みを構築し、食品ロス削減と企業の在庫負担軽減を同時に実現しています。社会課題解決と事業成長が両立しており、まさにソーシャルグッドの本質が体現されています。
製品ライフサイクル全体に視野を広げる企業の事例
味の素では、商品開発に伴い長期的に必要となる調理器具の利用を逆手に取り、家庭で不要になったフライパンの回収を実施しています。これは、資源循環を促しつつ、調理体験の向上や環境配慮への意識喚起を同時に進める取り組みであり、企業と消費者が社会課題に共同で向き合う新しい形を示しています。
また、ユニクロは衣料品の回収と再利用を長年継続しており、これは国内で特に認知度の高いソーシャルグッドの取り組みです。着なくなった衣類を回収して難民支援に活用したり、素材の再資源化を進めたりする仕組みを構築しています。単なる回収活動にとどまらず、自社のサプライチェーン全体に持続可能性の視点を統合している点が特徴です。
協働が価値を大きくするエコシステム型の取り組み
国内外の優れた取り組みは、企業単独で完結するのではなく、行政、地域団体、消費者、他企業など多様なプレイヤーと連携しているところに共通点があります。食品ロス削減、資源循環、教育支援など、複数の視点が重なる領域では、協働によって課題解決のスピードも質も高まります。企業が中心となり、共通の目的に向けてエコシステムをつくる姿勢が重要です。
ソーシャルグッドは採用とエンゲージメントを高める重要テーマに
若手求職者の価値観に合致する企業姿勢
Z世代以降の年代の企業選択では、企業と社会との関わり方の評価軸がその存在感を増しています。給与や制度に加え、自分の働きがどのように社会に貢献するかを重視する傾向が明確に表れています。先述のクラダシ、ユニクロ、味の素のように、事業そのものに価値がある企業は、若手から高い支持を得ています。この会社が好きと感じてもらえる基盤は、社会価値への取り組みが日常業務と結びついているかどうかに左右されます。
エンゲージメントを高める日常業務と価値の接続
社員の取り組みが社会貢献につながっていると認識できることで、働く意義や誇りが強まり、組織への信頼も高まります。重要なのは、理念を共有するだけではなく、日々の業務の中で体験できる形に落とし込むことです。事業自体が社会価値を生む企業では、社員が自然と価値創出の担い手となり、組織全体に一体感が生まれます。
人事が担うべきソーシャルグッドの推進役としての役割
事業と育成の接続から始める設計
人事が果たすべき役割は、事業戦略と人材育成を切り離さずに設計することです。社会課題の理解、協働のためのコミュニケーション力、柔軟な発想など、ソーシャルグッドを事業として推進するうえで必要なスキルを育成計画に組み込みます。事業と人事が同じ方向を向くことで、組織全体の動きが一致しやすくなります。
社員が参加できる仕組みづくり
ソーシャルグッドを推進する際の課題の一つは、関わる社員が限定されることです。人事は、全社員が参加しやすい機会を設計する役割を担います。日常業務の中で取り組めるアクションの整理や、外部団体との協働プロジェクトへ参画できる制度づくりなど、関与の入り口を広げる取り組みが求められます。広い層の参加が積み重なることで、企業文化として根付いていきます。
ソーシャルグッドは企業競争力を高める重要な基盤
ソーシャルグッドは、企業の社会的評価を高めるだけでなく、事業成長、採用力、組織力など多方面に価値を広げる取り組みです。ここで挙げた国内企業の素晴らしい例に見たように、事業に組み込むことで継続的な価値創出が可能になります。自社の事業と社会課題をどう結びつけるかを見直すことで、新たな成長機会が生まれます。まずは身近な領域から一歩を踏み出すことが重要です。
【偉人に学ぶ】求められるリーダーの素質~岩崎四代のエピソードから考える
三菱の創業者からの四代(岩崎弥太郎・弥之助・久弥・小弥太)の数々のエピソードからは、基本理念や信条を軸にしながらも、時代や会社の成長とともに柔軟にリーダーシップのスタイルを変え、課題や危機を突破していくことが重要であることを学ぶプログラムです。小弥太の時代では「社会的責任について」に触れます。
<プログラムダイジェスト>
- 岩崎弥太郎:豪胆に、逆境に負けない戦意を持つ
- 岩崎弥之助:理念に基づき発想を転換する
- 岩崎久弥:時勢を読み、俯瞰的視野で推進する
- 岩崎小弥太:理想を持ち、実現させる
よくあるお悩み・ニーズ
- 変化の大きい今の時代を乗り越えるための姿勢を学びたい
- リーダーとしての心構えやふるまい、着眼点を学びたい
本研修のゴール
- エピソードから岩崎四代の考えを知る
- エピソードから自身に取り入れたい考え方、行動を考える
- 改めて事業理念に沿って、これまでの振り返りと今後を考える
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