高卒新入社員の社会人としての一歩に丁寧な学びを。「当たり前の行動」こそ、意味をかみ砕いて伝える

「高卒社員がすぐに辞めてしまう」「主体的に動けず、指示待ちになる」――そんな悩みを抱えていませんか。
高卒新入社員にとって、社会人としての一歩は未知の連続です。高校までは決められたルールやスケジュールに従うことが中心で、自分の裁量で考えて行動する経験はほとんどないため、社会人としての一歩を踏み出す際に大きな学びが必要となります。だからこそ、最初の研修設計や講師の関わり方が、その後の成長スピードを大きく左右します。
今回、実際に高卒新入社員の研修を多く担当する2人の講師に、「指導の際に気をつけているポイント」を伺いました。そこには、社会に出て間もない受講者とどう向き合うかという、現場でしか見えない知恵が詰まっていました。
「自己責任」という感覚のなさを前提に
まず講師Kは、「高卒社員に対しては、社会に出て間もない立場であることを踏まえて向き合うことが重要」と話します。高校までは教師や顧問という明確な指導者がいて、ルールやスケジュールに従うことが求められます。一方で、大学では授業選択や時間管理、進路決定などの過程で自己責任の意識が芽生えるものです。
「つまり、高卒の場合は自由裁量で動く経験が少なく、感覚的に理解できていないことが多い。だからこそ、社会人になるとはどういうことかというマインド面に時間をかける必要があるんです」(講師K)
研修の初日からすぐにビジネスマナーや報連相の練習を始めるのではなく、「なぜその行動が必要なのか」「誰のためにやるのか」といった行動の意味を、言葉一つひとつ丁寧に考えさせる。ディスカッションや発言の機会も焦らず少しずつ慣らしていく。このゆっくりした導入が、後の学びの吸収力を高める鍵になるのです。
「教える→やらせる→個別FB」で行動を固める
続いて講師Mは、「高卒で入社したばかりの社員は、理解しても行動に移すまでに少し時間がかかる傾向がある」と分析します。
「彼らは指導者から教わる形の学びが中心で、主体的に考え自ら行動する経験はまだ少ない場合がほとんど。だから、講師が説明した内容を理解したとしても、それを自分で再現できるかというと別問題なんです」(講師M)
そのため、研修設計では次のような手順を意識しているといいます。
- 教える(理解させる)
まず講師が具体的なやり方や考え方を説明。 - やらせてみる(実践させる)
理解した内容をペアワークやロールプレイで試す。 - 個別FBする(行動を固める)
一人ひとりにフィードバックし、正しい動きを定着させる。
さらに、できるようになった段階で「では、こういう場面ではどうすれば?」とケースを変えて考えさせる。テキストには載っていない、リアルな場面で応用を促すのです。
「同じ内容でも、大卒に比べて体感2倍は時間がかかります。でも、その分自分でできたという感覚が芽生える。高卒社員にとっては、これが大きな自信につながるんです」(講師M)
「当たり前の行動」こそ、意味をかみ砕いて伝える
講師Kは、「当たり前にやっていることの意味を確認しながら進めることが大切」と強調します。たとえば、挨拶ひとつをとっても、「なぜ目を見て挨拶するのか」「声のトーンで印象はどう変わるのか」を一緒に考える。社会人にとっては当然でも、高卒社員にとっては初めて考えるテーマであることが多いのです。
また、意見を述べる・他人の意見を聞く・チームで協力する...これらも経験したことがない場合が少なくありません。ディスカッションの進め方やフィードバックの受け方も、丁寧に説明し、安心して発言できる環境を整えることが重要です。
「相手の立場に立って考える」という切り替えも、一朝一夕には身につきません。K講師は、「大卒よりも1.5倍から2倍の時間をかけて、一つひとつの行動の意味を浸透させる必要がある」と言います。
「遊び」が足りない。だからこそ、楽しさを教える
もう一つ、K講師が印象的に語ったのは、「高卒社員には遊び心が足りない」という指摘です。
「与えられたことを真面目にこなすタイプが多い一方で、もっと自由な発想でやってみるとか、ばれないように手を抜くとか、目の前のことを楽しくしようという工夫が足りないと感じることがあります。悪い意味ではなく、純粋でまっすぐすぎるんです」(講師K)
この「素直さ」は、大きな伸びしろでもあります。だからこそ、研修の中で「工夫する楽しさ」や「考える自由」を体験させることが大切です。たとえば、グループワークで意見を出し合う際に「もっと面白い案を出してみよう」と促したり、成果発表の形式を自由に決めさせたり。「やってみたら楽しかった」という成功体験を積むことで、自ら考えて動く土台ができていくのです。
育成のゴールは、「自分で考え、動ける」状態へ
二人の講師の話から浮かび上がるキーワードは、「自己責任」「行動の意味」「個別フォロー」。いずれも共通するのは、自分で考え、行動できる社会人への第一歩を、いかに丁寧に導くかという点です。
高卒社員の研修は、基礎づくりにじっくり時間をかける必要があります。しかし、その分だけ変化が見えたときの成長スピードは速いです。人事や研修担当者に求められるのは、焦らず、比べず、一人ひとりのペースを尊重する姿勢です。
「経験が少ない」というマイナスを、「これから吸収できる伸びしろ」に変えることが、高卒社員育成の本質ではないでしょうか。
(高校・専門学校卒業の新人向け)ビジネス基礎研修~社会人の基本スキルを実践的に習得する編(3日間)
同じ新入社員でも、高卒の18歳と大卒の22歳とでは、それまでの社会経験の差もあり、「社会人になる」という心構えに違いがあるのは当然です。そこで本研修は、高卒・高専卒・専門学校卒の新入社員に特化して、社会人としての心構えや社会的ルールを学んでいただきます。
すべての項目において演習を取り入れ、「なぜそうなのか」を明確にし、「頭で分かる」ではなく、自分から「できる」ようになっていただきます。「他部署から先輩宛にかかってきた電話の取り次ぎ方」「ミスに気づいた時の報告・連絡・相談の仕方」など現場での具体的行動や立ち振る舞いまで学び、体得していただきます。
到達目標
- 組織や社会とどのように関わっていくべきかを知り、ルールを守ることの重要性を理解する
- 信頼を得るための身だしなみや立ち居振る舞い、言葉遣いを習得する
- 電話応対・名刺交換・来客対応の基本の型を身につけ、実践できるようになる
- 仕事の進め方の基本の型を身につけ、実践できるようになる
よくあるお悩み・ニーズ
- 「社会人らしい恰好」や「コンプライアンスの遵守」の意味がよく分かっていない
- 電話に出るのが新人の仕事と言われても、怖くて対応できない
- 敬語がうまく使えないことでお客さまに不快な思いをさせ、そのことで上司や先輩にも叱られる
セットでおすすめの研修・サービス
(新入社員・新社会人向け)ビジネス文書研修
文書は若手層の苦手意識が高く、また現場での指導に限界があるスキルです。本研修では、学生のレポートとは異なるビジネスシーンでの文書について、「伝えたいことがひと目で分かる」簡潔かつ明瞭な文書作成のノウハウを学びます。また、社内文書と社外文書の基本的な文書構成の違いを理解し、具体的な文例を用いて、用途や構成・作成時のポイントを習得します。
(新入社員・新社会人向け)Microsoft Office研修~ExcelとPowerPoint
大卒入社の新入社員も含め、OAスキルは文書と同じく現場での指導負担が大きい分野です。スマホ時代の新人にとって、PCで操作するExcelとPowerPointは、意外と馴染みがないものです。入社前の内定者や新人のうちにこれらの基本操作を習得していただくことは、新人の即戦力化のためにも重要です。
新入社員研修
インソースでは多数の新人研修をご用意しています。近年の新入社員は、与えられた指示を正確に遂行する力は高い一方、「失敗を避けたい」という思いから、正解を求める傾向があります。「先回り」しての知識付与と、「実践」での応用力強化をテーマに、自ら考え行動し、成果を出せる新人を育成するためのラインナップをご提案します。






