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新入社員が自分でできるレジリエンスを高める5つの方法~OJTでは身につかない離職防止の鍵

従来のOJTは、業務の進め方やマナー、報連相など「仕事のやり方」を中心に構成されており、社会人としての基礎づくりには必要不可欠です。

新入社員の中には、失敗を極端に恐れたり、他人の評価に過敏に反応したりと、内面的な不安を抱えやすい方もいます。

たとえば、営業職の新人が誤字の指摘をきっかけに数日間業務に手がつかなくなったり、IT企業の新人が成果の差に苦しみ休職に追い込まれるケースがあります。製造業では小さなミスを理由に「自分は向いていない」と退職する例や、接客業でクレーム対応の失敗からやる気を失い体調を崩す例も見られます。

OJT担当者の励ましや経験の積み重ねだけでは、克服が難しい「心の壁」です。こうした課題を乗り越えるには、困難にどう向き合うか、失敗を糧に変える「レジリエンス(精神的回復力)」を育むことが不可欠です。放置すればメンタル不調や離職につながり、組織全体の活力低下を招く恐れがあります。

新入社員が自分でできる、レジリエンスを高める5つの方法

現代の新入社員が直面する課題の多くは、スキルや知識よりも「メンタルのしなやかさ」にあります。失敗を過度に恐れたり、他人の評価に振り回されたりするなかで、自信を失い、挑戦を避けてしまう。そんな状況を打開するカギがレジリエンスです。

これは特別な才能ではなく、日々の考え方と行動の積み重ねで育てられる力です。ここでは、新入社員が自分で実践できるレジリエンスを高める5つの方法を紹介します。

1. 「できたことノート」で自己効力感を育てる

失敗や注意ばかりに目を向けていると、自己否定のスパイラルに陥ります。そこで有効なのが、「今日できたこと」を書き出す習慣です。退勤前の3分で、「電話で詰まらなかった」「自分から質問できた」など、小さな成功を3つ記録しましょう。

週末に読み返して成長を実感することで、「自分にもできることがある」という実感=自己効力感が育ちます。落ち込んだときも、ノートが事実に基づいた自信の証拠になります。

2. ミスを「自分攻撃」で終わらせない「ABCメモ法」

心理学のABCDE理論をもとに、失敗を冷静に整理する方法です。

A(出来事):何が起きたか?
B(考え):どう考えたか?
C(結果):どんな気持ち・行動になったか?
D(別の見方):他の考え方はあるか?
E(効果):気持ちはどう変わったか?

紙に書き出すことで、頭の中で堂々巡りしていた不安が整理され、「ミス=終わり」ではなく「改善の材料」と捉えられるようになります。

3. 「小さな挑戦」を週1回、自分に課す

レジリエンスを鍛える最良の方法は、挑戦→失敗→立て直しの繰り返しです。大きな挑戦でなくて構いません。「会議で一度発言してみる」「先輩に声をかける」など、少し勇気がいる行動を週に一度行いましょう。結果がどうであれ、「やった自分」を認めることが大切です。この習慣により、失敗への耐性がつき、行動力と自信が自然に育ちます。

4. 感情の「棚卸し」をする

落ち込んだとき、無理に「前向きに考えよう」とするのは逆効果です。大切なのは、まず感情を「認める」こと。

  • 今の気持ち(例:焦り、不安、怒り)
  • 理由(なぜそう感じたか)
  • 自分への声かけ(「焦るのは当然」「よく頑張ってる」など)

これにより、感情を客観視する力が高まり、冷静に対処できるようになります。結果として落ち込みが長引かず、切り替えが早くなります。

5. 人に「助けを求める」練習をする

レジリエンスは、一人で築くものではありません。周囲に頼る力も、立ち直りの一部です。「ちょっと聞いてもいいですか?」を口ぐせにして、悩みを共有する練習をしましょう。相談時には「アドバイスがほしい」「聞いてもらいたい」など目的を伝えると、相手も応じやすくなります。

相談後の「助かりました」という一言が、信頼関係を深めます。話すことで気持ちが整理され、行動するエネルギーも戻ります。

レジリエンスを高めた企業の成果

企業もまた、この力を重視し始めています。レジリエンスに関する取り組みを行った企業の中には、以下のような離職率やエンゲージメントの改善が見られたケースもあります。

  1. 失敗を抱え込まない風土づくりで離職率が改善
    製造業A社では、入社3年以内の離職率が28%から12%に低下。以前は「失敗=自分のせい」と抱え込む社員が多かったのが、レジリエンス向上の取組後には「改善のチャンス」と考える社員が増えました。新人同士が互いを励ます風土が生まれ、「メンタルの不安」から「成長への挑戦」へと意識が変化しました。
  2. ストレス対処文化の定着で前向きさが向上
    IT企業B社では、入社半年後のアンケートで「仕事に前向きに取り組めている」と答えた社員が62%から84%に上昇。ストレス対処法を共有する文化が根づき、若手同士が自発的に「どう乗り越えるか」を話し合う場を作るようになりました。上司も「落ち込んでも立ち上がるスピードが速くなった」と語ります。
  3. 前向きなフィードバック文化が定着率を押し上げた
    サービス業C社では、レジリエンス向上の取組後に1対1面談の満足度が3.1点から4.4点(5点満点)にアップ。新人がフィードバックを前向きに受け止め、上司も教えやすくなりました。結果として定着率だけでなく、OJT担当者のモチベーションも上がり、現場全体の雰囲気が明るくなったといいます。

まとめ:レジリエンスは企業の競争力を支える根幹

レジリエンスとは、個人にとって「失敗を成長に変える力」であり、組織にとっては「離職防止と生産性向上の鍵」です。つまり、これは単なるメンタル強化ではなく、企業の競争力を支える根幹です。小さな成功を積み重ね、失敗を意味づけし、感情と向き合い、人に助けを求めるその一歩一歩が、新入社員を 折れない人材へと育てていくのです。

(新入社員・新社会人向け)レジリエンス研修~失敗をチャンスに変え、成長する

失敗で心が折れていまい、せっかくの成長のチャンスをつかめず離職したり、メンタルを病んでしまう新人が増えています。

本研修では、失敗も次につながるステップと捉える「レジリエンス(精神的回復力)」を身につけることで、新人の時にぶつかる様々な困難を乗り切るメンタルの作り方を学びます。ワークやABCDE理論を用いた演習により、新入社員が「挑戦する勇気」と「立ち直る力」を実感できる構成です。

本研修のゴール

  1. 失敗を乗り越えるための切り替え力・感情コントロール力を身につける
  2. 自分の強み・弱みを理解し、自尊感情を高められるようになる
  3. 自分の成長を感じ、成長チャンスを増やすための自己効力感を高める
  4. 社会人生活を送るうえで、心の支えとなる良好な人間関係を築くためのポイントを知る

よくあるお悩み・ニーズ

  • ストレスと上手に付き合う方法が知りたい
  • 困難をしなやかにたくましく乗り越える力を身につけたい
  • 失敗してもすぐに立ち直り、次に進めるようになりたい

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セットでおすすめの研修・サービス

仕事の意欲向上研修~ポジティブシンキングを仕事に活用する

主体的に自分自身のキャリアを築きあげるために必要な考え方を身につけていただきます。ポジティブな考え方は「仕事に対するモチベーション向上」だけでなく「周囲との良好なコミュニケーション」にもつながります。本研修は、ポジティブシンキングの手法を身につけていただき、職場のコミュニケーション改善への活用を想定しております。

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(新入社員・新社会人向け)ビジネス基礎研修~社会人に求められる基本ルール・所作を学ぶ(2日間)

社会人として必須のビジネスマナー、職場のルール、仕事の進め方の基本を身につけていただくための最もベーシックな新人研修プログラムです。

冒頭は社会人に求められる「意識」についてしっかりと認識を固めたうえで、基本動作や言葉遣いについて学びます。「チームへの貢献」をキーワードに、なぜ業務の進捗状況を上司や先輩に報告しなくてはならないのかなど新人が陥りがちな傾向を見越して業務への取り組み方をガイドしています。

名刺交換の仕方、電話応対などはペアを組んで繰り返し練習することで定着を図ります。テレワークを行う組織も増えているため、テレワークの場合の身だしなみやルール、仕事の受け方などのポイントも学べる内容となっています。

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