中堅層から増える、仕事へのフルコミットを避けようとする姿勢。Quiet Quittingを防ぐには

米国のZ世代で大きなムーブメントとなった「静かな退職(クワイエット・クイッティング/quiet quitting)」は、定められた仕事はこなす一方で、それ以上の役割を果たすことや努力を意図的に避ける働き方です。
近年の働き方改革やワークライフバランス重視の流れとも相まって「心身の健康を守るための選択」として肯定的に語られることもあれば「主体性を欠いた働き方」として懸念されることもあります。
実は日本においては、若手以上にミドル層にこの考え方を実践している方が多い傾向があるといいます。ここでは、中堅~現場リーダークラスの従業員の一部が仕事に消極性になる要因と、その対策を考えてみます。
ベテランになってきたからこそ「なるべく楽をしたくなる」
仕事の全体像を理解しているからこそ、力を抜ける
中堅社員は、業務の流れや組織の仕組みを熟知しています。仕事の要点を把握しているため、「ここまではやるべき」「ここから先は力をかけなくても大丈夫」といった線引きが判断できるようになります。この力が、必要最低限で仕事を切り上げるズルい働き方、おいしいところだけを自分にあてがって面倒を他者に押し付けることを可能にしてしまいます。
成果ほどの評価がもらえないことへの不満が積み重なっている
若手の頃から長時間労働や突発的な業務を乗り越えてきた中堅層は、豊富な経験をもつ反面、心身の疲労をため込んでいる場合があります。そこに成果に見合った評価や報酬が得られにくいと何度も感じることで、「無理をしても報われない」という心理が働き、努力を避けるようになります。
立場の板挟みで消耗し、苦しい場面を何度も経験した記憶がある
中堅層は上司と部下の両方に挟まれやすい立場です。上からの指示を現場に落とし込む役割を担いながら、部下の育成やフォローも求められます。その負荷が積み重なり、「自分の守備範囲以外に関わるほどつらい思いをする」という意識につながることがあります。
中堅メンバーの積極性を高めるには
現場で最も成果を出すことのできる中堅層の静かな退職を放置すると、組織全体の士気がどんどん下がってしまいかねません。身近な先輩に影響されやすい若手の中には、「自分もこんな風になるのなら早く組織を離れよう」「自分も同じように省エネで過ごそう」と思うメンバーも現れます。人事部門、あるいは所属部署・係の長には、以下のように中堅層のマインドを再セットする働きかけが望まれます。
業務の目的を再共有する
日々の業務が「何のために行われているのか」を改めて共有することで、仕事への意義を感じやすくなります。朝礼や週次ミーティングを開催し、全体に向けて組織が重要視していることや所属部署に求めていることを繰り返し語ります。中堅層は部下に何かを教える場面が多いことから、自らが業務の目的を理解し、それもあわせて伝える指導をするように促しましょう。いかにこの業務が大事な意味を持っているのかを自分の言葉で説く習慣がつくことで、自身の意識もそこに自然に向かうようになります。
公平な評価とフィードバック
「頑張っても報われない」という気持ちを解消するには、努力や成果を正しく評価し、丁寧にフィードバックをすることが欠かせません。評価が納得感のあるものであれば、中堅層も積極的に組織に貢献しようという姿勢を取り戻しやすくなります。上席者も周囲も、小さくても良い行動をしているメンバーを称賛し、そうでない行為が見られた際には相手が誰であってもきちんと指摘する。公平に、公正に、成果や努力を適切に認める環境をつくります。
権限移譲とキャリア支援
中堅層にとって「まだここで成長できる、やりがいがある」という感覚を持てるかどうかは極めて重要です。新しい業務への挑戦や権限移譲を通じて、キャリアを広げられる道筋を整えることが、中長期にわたって組織に優秀な人材が定着させるポイントです。この先どんなことにトライしたいと思っているのかを、1対1面談などで丁寧にヒアリングしましょう。
部下モチベーション向上研修~風通し・見通しをよくするコミュニケーション
中堅層の意欲低下を防ぎ、チームを前向きに動かすには、日常的なコミュニケーションの質を高めることが欠かせません。
本研修では、部下・後輩のモチベーションについて「モチベーション低下の要因」「コミュニケーション」「環境づくり」に注目し、モチベーションを向上させる手法を習得します。
よくあるお悩み・ニーズ
- 部下との距離を縮めるよう努力しているが、なかなかうまくいかない
- 後輩が悩んでいるときに相談にしやすいような環境づくりをしたい
- 指導で活用する傾聴・質問・承認スキルを強化したい
本研修の目標
- メンバーが安心して働けるための環境づくりや動機付けができる
- 意欲が高まる指導力を身につける
- 良好な関係を構築したうえで、モチベーションを上げられる仕事の任せ方ができる
セットでおすすめの研修・サービス
エンゲージメント診断
組織内での仕事、つまり成果を上げるうえでの満足度・働きやすさを、当人がどれくらい感じているかを測定します。自分を含めた身の回りの環境を、組織・仕事・チーム・上司・(業務)負荷・制度の6項目に分けて数値化し、関係性や状態を可視化します。
通常、組織診断やエンゲージメント診断では、「本人の主観による満足度」で測定するのが一般的です。しかしインソースのアセスメントは、貴組織内での仕事、つまり成果を上げるうえでの満足度・働きやすさを、当人がどれくらい感じているかを測ります。従業員と組織の満足度を定量的に調査することで、どの対象にどのような施策を講じればよいのかを考える際の基礎情報として活用することができます。
人格の陶冶研修シリーズ
「正直さや誠実さ、見返りを求めない姿勢」は美徳ではあるものの、激しい競争社会ではそうした考え方が時に自身に不利益をもたらすこともあり、どう行動するのが正解なのかを見失うこともあります。意見交換・ワークショップ形式で意識を高め、自分なりの正解を見出していただきます。


