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【2026年は観光業の転換期!】➂ナイトタイムエコノミーへの挑戦~夜の商品設計と収益最大化の実践ポイント

第2回のコラムでは、どのような相手にむけて商品を企画するか、というところにフォーカスしました。

今回のコラムでは、商品をどの時間帯に売るかに注目します。収益を拡大するひとつの視点としてのナイトタイムエコノミーの考え方と、具体的な商品設計について見ていきましょう。

「同じ商品なのに時期や時間によって値段が変わる」が普通のことに

日本でもようやくピークシフトタイム、ダイナミックプライシングという言葉が一般的になってきました。

  • ピークシフト(Peak Shift):
    =電気使用量が最大となる時間帯(昼間・夏場など)の消費電力を、使用量が少ない夜間などに移行させ、電力需要を平準化する取り組み
  • ダイナミックプライシング(動的価格設定):
    =反映需要と供給の状況に合わせて、商品やサービスの価格をリアルタイムかつ臨機応変に変動させる価格戦略。混雑時や人気商品は高く、空席時や閑散期は安く設定することで、収益の最大化や販売効率の向上を目指す仕組み

最も需要が大きい「ピーク」をなだらかにする施策として、季節や曜日で価格を変えるというのは宿泊施設や航空・鉄道事業で、長く取り組んでいらっしゃったことでしょう。飲食店の中には、12:00~13:30のランチタイムのピークを分散させるために、その前後1時間は割引を適用しているところもあります。

人間の活動時間に従順に、日本の観光消費は昼間に集中している

昼間は混雑しているのに、夜になると人通りが減る。これは、多くの日本で暮らす方にはごく自然なことです。ですが日本に遊びに来ている観光客にとっては、飲食店や観光施設の多くが早い時間に営業を終えること=過ごす場所が限られてしまい(消費ができずに)、機会損失を生んでいる可能性があります。

また活動時間が同じであることが、通勤ラッシュに「大きなスーツケースをもって移動せざるを得ない」観光客を生み、オーバーツーリズムの原因の一つになっているともいえます。日中の観光地は常に混雑していて、この時間に提供されるサービスは価格の競争が起こりやすく、またオペレーションも回転重視になりがちです。

安い商品を得るために何時間も待ったのに期待を下回る扱いをされてがっかりの旅行者。一方事業者側も、競合よりも300円安くしたことで利益率が下がるため、少なくともこれまでの1.3倍の量を自分だけでこなさなければならない。一人ひとりのお客さまに丁寧に接している余裕はない。皆さまの運営する店舗でも、こんなことになっていないでしょうか。日本の観光は昼だけで勝負している状態といえます。

夜の消費が取りこぼされている~世界の「夜観光コンテンツ」

ロンドンでは「ナイトタイム・エコノミー戦略」を都市政策として推進し、専任の「ナイトメイヤー」を設置しています。夜の経済は都市のGDPに直結する、という考え方です。このほか海外の主要都市では、夜の時間帯は観光収益を支える重要な軸と認識されています。

  • ソウル
    東大門エリアを中心に深夜まで営業するショッピングや屋台文化が定着し、観光客の消費が夜間にも継続しています。
  • 台北
    夜市が観光コンテンツとして確立され、食と体験が一体となった高い消費機会を生み出しています。
  • ロンドン
    ナイトミュージアムや演劇など文化資源を活用した夜間プログラムが充実しています。

ナイトマーケットや音楽、アートイベント、夜景を活用したコンテンツによって、観光客は夜も消費を続けます。

なぜこれまで観光事業者は夜の商品を作ってこなかったのか?

昼のビジネスモデルで成立していた

これまでの観光ビジネスは、昼間の観光で一定の売上を確保できる構造でした。団体旅行、主要観光地の周遊、日帰り観光など、こうしたモデルでは、夜の時間帯を積極的に活用する必要がなかったといえます。しかし2026年時点では、シリーズ【2026年は観光業の転換期!】➁で述べたように、現在は訪日客の増加とともに観光客のニーズも多様化しています。

労務とコストの問題が壁~人材確保がここでもネックに

夜の営業にも当然ながら人手が必要です。割増賃金以上の時給を設定しても人材を確保しにくいこと、深夜帯の労務管理が難しいこと、また昼間よりも安全面への配慮も必要になります。こうしたことが、夜の事業展開になかなか踏み出せない大きな要因です。

ナイトタイム商品を高価格設定しやすいのはなぜ?

こうしたハードルがあるにもかかわらず、それでも商品企画を検討してみていただきたいのには理由があります。既に需要はあること、夜は滞在時間が長く、体験消費になりやすく高付加価値化がしやすいこと、ラグジュアリー層と相性が良いからです。

既に需要はある~観光客は夜にお金を使う準備ができている

特に欧米やオーストラリアの旅行者は、夜の時間のエンターテインメントを楽しむ文化を持っています。食事だけでなく、体験やイベントにも積極的に支出する傾向があります。つまり、観光客側はすでに夜の消費意欲を持っているにもかかわらず、日本側がそれを受け止めきれていない状況です。もちろん、そうしたナイトタイムエコノミーの先進エリアと同じような交通インフラをすぐには整備できないかもしれませんが、周囲の環境が整うことをただ待っていてはニーズを逃してしまいます。

滞在時間を長くすることができる

夜は観光客にとって「予定が空白になりやすい時間」です。夕食後の時間は明確な予定がないケースが多いです。この時間帯に魅力的なコンテンツが存在すれば、観光客は自然とそこでの滞在時間を延ばし、サービスを追加購入してくれる可能性が高まります。夕食でお腹いっぱいになったので腹ごなしに散歩をする。別腹を満たすべく締めのラーメンや夜パフェに行くなど、まっすぐ宿泊先に帰らずにぶらぶらして、自分にとって特別な日本の夜を満喫したい!と思っている方は少なくありません。

(ある観光客の旅ブログ例)

すき焼きレストランでの食後に、1杯だけのつもりで立ち寄ったホテル近くのバーが思いのほか雰囲気が良かったことを書かずにはいられない。日本のウィスキーをいくつか出してもらったのだが、気づいたら3時間も過ごしていた。

高付加価値をのせられる演出ができる

昼間とは異なる特別感を演出しやすいのも夜の時間の特徴です。例えば同じ食事でも、夜景を眺めながら提供されるディナーは、単なる飲食ではなく体験価値を伴ったサービスへと変わります。エンドユーザーの感情に訴えかけるような演出が成果に結実しやすくなるのです。光と影のコントラスト、ノスタルジックな色調、スローテンポなBGMとクラフトマンシップを感じさせる食器や食材・調度品等が、プレミアム感を高めてくれます。

(ある観光客の旅ブログ例)

私は今回日本のウィスキーを初めて体験したが、スコッチとなぜこんなに香りや飲み口が違うのかを、マスターが拙いながらも丁寧に英語で教えてくれた。日本独自のミズナラの樽、清らかな軟水のことなど、こちらの期待をはるかに超えるレクチャーを聞くことができた。

彼が、興味があるなら蒸留所にも行ってみたら?と提案してくれたので、次回はそれをメインに日本での旅程を組むのも面白そうだと盛り上がった。日本はチップ不要の文化だが、この店では、彼らプロフェッショナルが提供する高いサービスを享受するために、ドリンク代とは別にテーブルチャージが必要だった。それでも私たちが得たものからすれば安いものだ。

少人数・高単価モデル=ラグジュアリー層との相性が良い

夜の商品は、大量集客よりも少人数で高単価を好む方とマッチする傾向があります。少人数制にすることでカスタマイズが可能になり、個々人の感じる体験の質を高めることができ、オプション料金も設定しやすくなります。これはシリーズ【2026年は観光業の転換期!】➀で述べたフェア・プライシングともつながる考え方です。高付加価値な体験を求める旅行者は、混雑を避けた落ち着いた環境や、プライベート感のある空間を重視しています。

夜は人の流れが比較的落ち着き、こうしたニーズに応えやすい時間帯です。また、ラグジュアリー層は食事や文化体験、エンターテインメントなどに対して高い支出意欲を持っており、夜の時間帯はその消費行動と一致します。

(ある観光客の旅ブログ例)

実はこのバー、私たちが宿泊しているホテルのコンシェルジュに「おすすめだから行ってみて」と紹介された、一般の観光客ではなかなか見つけられない路地裏にある。大きな看板もないし、ほんとにここで合ってる?と最初は不安だったが、勇気を出してドアを開けてみて良かった。大人の秘密の隠れ家みたいだ。

手入れの行き届いたつやつやのカウンターや落ち着いた間接照明が印象的であった。バーテンダーと談笑していた品の良い先客のマダムがこちらに気づき、にこやかに会釈をしてくれたので、妻も安心して足を踏み入れることができた。

もう一つの夜効果~疲れを癒しストレスを発散させる消費行動

別の観点をご紹介します。それは夜はエンドユーザーの「財布の紐が勝手に緩くなる」というものです。観光客であるかどうかに関わらず、日中に活動している人の多くは、一日中働いたり判断を続けたりすることで、脳の理性を司る前頭葉が疲労し、欲望を抑える力(自己制御)が弱まります。すると購入・消費の判断が感情優位になるのです。また「一日頑張った自分へのご褒美」として、アルコールや美味しい食事、オンラインショッピングなどでストレスを発散しようとします。

このように心理的・脳科学的な要素によって消費行動が促されます。ましてや本国での仕事や生活から解放され、休暇で日本に訪れているインバウンド客であれば、慣れない日本での観光で脳も体も毎日疲労・毎日がご褒美タイム・自国にはない独特の文化や情緒にうっとりとなるわけです。

「少しくらい高くてもまあしょうがない⋯⋯行っちゃえ!」と、多くの消費者はいつもの節約思考をストップさせ、昼間よりも簡単に購入やオーダーの判断を下します。

小規模事業者でもできる夜の商品設計

ナイトタイムエコノミーというと大規模なイベントや施設整備を想像しがちですが、小規模事業者でも、設備投資なく体験の設計力で稼ぐことが可能です。観光客が求めているのは派手な施設ばかりではなく、そのエリアならではの時間の過ごし方です。

リソースの洗い出し→組み合わせ→提供へ

設計にあたっては、次のようなステップを踏むとよいでしょう。

  • STEP1.自社や地域にある資源の洗い出し
    歴史的な街並み、飲食店、文化施設、地元の人材など、夜でも活用できる要素を整理します。
  • STEP2.要素を組み合わせて「90分~150分ほどで完結する体験」に落とし込む
    夜は適度な時間で満足度の高い体験が好まれる傾向があります。
  • STEP3.少人数制で提供する
    最後に、体験の質と単価の両立を図るための最適人数を割り出します。

例えば、飲食店であれば単なるディナー提供ではなく、地元食材の解説や料理背景のストーリーを組み込むことで体験価値を高めることができます。ガイド事業者であれば、昼間の観光ルートとは異なる「夜の静けさ」を活かした街歩きツアーを設計できます。複数の事業者が連携し、食事と散策、軽い文化体験を組み合わせることで、一事業者では提供できない価値を生み出すことも可能です。

最初から完成度の高い商品を目指す必要はありません。小さく始め、顧客の反応を見ながら改善を重ねます。夜の時間帯はまだ競合が少ない分、試行錯誤がしやすい領域でもあります。

戦略的な設計で高価格でも納得感のある商品に

ナイトタイム商品を企画するにあたり、単に昼間の営業時間と同じ運用を夜に延ばせばよい、という発想ではうまくいきません。これまで述べてきたような夜ならではの価値を確実に設計に埋め込むことを意識します。

  • 静かな雰囲気(低音のスローテンポなBGMなど)
  • ライトアップ、鮮やかなネオン(昼間とは異なる美しさを放つ建築めぐりなど)
  • 非日常感(囲炉裏を囲む食事、星空観測ツアー、夜の国立公園散策など)
  • 限定体験(貸切屋形船での参加者限定ディナーなど)

体験型の要素を必ず含め、組み合わせるなどして単価を高めましょう。

「提供時間をずらす」を模索する

19時~22時のいわゆる夜のゴールデンタイム以外にも、深夜~早朝の時間にもニーズがあるかもしれない、と考えることもできるでしょう。深夜便で空港に到着し、公共交通機関が動き出すまで時間を持て余している方や、やることは特にないけど、今寝てしまうと今夜うまく眠れなくなるとジェットラグ対策を求めている方、あるいは早朝帰国便に乗るギリギリまで日本を楽しみたい方もいらっしゃるでしょう。次のような商品を企画できそうです。

例)深夜発着を有効活用!

  1. ~固まった体をほぐし、初日から元気に活動するためのパワーチャージヨガ
  2. ~朝どれ活魚が寿司になるまでの工程を知る早朝グルメツアー
  3. ~毎日限定5名 下町のTOFUづくりワークショップ
  4. ~銭湯の開店準備をお手伝い ローカルと一番風呂に入ろう
  5. ~最終日はナイトクラブで80'sシティポップに浸る~空港送迎付き

まとめ:2026年はナイトタイムエコノミーで「量から質への転換」を図る絶好のタイミング

ナイトタイムエコノミーは資本力の勝負ではなく、顧客の時間の使い方を設計できるかどうかの勝負です。小規模事業者であっても、視点を変えれば十分に参入できる領域で、むしろ柔軟に動ける強みを活かしやすい分野でもあります。

2026年は次のことが同時に起きる、あるいは起きている、夜の観光が大きく発展するまたとないタイミングです。

  • インバウンドが量的回復から質的競争へ移行
  • 中国依存からの分散が進み、夜観光に明るい欧米・豪州市場が伸長
  • Z世代(コンテンツ重視。SNS映えする体験を夜にも求め、消費よりも重きをおく)が旅行消費の主役へ

いま自分たちが持っている、使っているリソースを「夜の時間帯に仕立て直す」ことを考えてみませんか。

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