マネージャーが生成AIを活用してまずは感動する|DXの方法論1
現在のマネージャーにとってDXをどう進めるかは共通の課題です。DXを自組織の生産性向上にすばやく活用できれば、大きな成果が得られるのは言うまでもありません。
私は元システムエンジニアでシステムを作る人でした。そして今は企業経営者、その観点でDXに関して私なりの説明と推進方法を語りたいと思います。
DXに関する整理~IT、生成AIのざっくり説明
現在、DXに関するさまざまな言葉がありますが、これをざっくりと整理してみると、以下のようになります。
- DX:データとITを活用して業務を変革すること
- IT:コンピューターシステムのこと、開発にはプログラミング言語が必要
- 生成AI:ITの一形態である人工知能のことで、自然言語で利用できるのが特徴
DXは企業が、ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。なので、経営者が担当すべきデカい話です。
IT化はDXの下位概念で、作業量の多い、定型的な業務をシステム部門や外部ベンダーなど専門家にソフトウェアを開発させ、自動化、省力化するもので、今までの主役です。
生成AIは、ITの一形態で、仕事の進め方を変革する、すごく便利なツールです。ご存知の通り、自ら推論して回答するという機能を持っています。100点満点の精度ではありませんが、個人で利用できる推論ツールというのは画期的だと思います。
生成AIのすごいところ~机に座ってする作業がほとんど効率化できる

超簡単にシステム開発を説明すると、どんなシステムを作るかという要件定義をした後、以下の手順で開発します。括弧内は生成AIを利用した際のシステム開発です。
- パソコンなどの入力画面を設計する(特に不要、プロンプトに適当に入れればよい)
- データベースを設計し、専用言語で開発する(特に不要)
- 入力されたデータを処理するプログラムをプログラミング言語で開発する(処理するプログラムは不要で日本語で指示すればよい)
ご覧の通り、生成AIを活用すれば、システム開発は超簡単になったのです。各部門でちょっと使うシステムなら、SEやプログラマーがいらなくなったのです。
量は多くないが、判断しながら進めなければならない仕事は、生成AIでできる
自社業務でもホワイトカラーが担う大半の業務、特に経営企画、人事、総務、経理、営業などの部門で、机に座り、パソコンを使ってする「量は多くないが、判断しながら進めなければならない仕事」は生成AIで劇的な省力化が可能になりました。ただ、生成AIの活用は簡単だと言っても、Excel同様、複雑な業務をやらせようとすれば、相応に生成AIの使い方を学び習熟しないといけません。
既存のシステムは不要にならない~生成AIは大量処理には向いていない
また、既存のシステム開発が不要になるかと言えば、2025年現時点では、大量の定型業務を処理するなら、やはり従来からのシステムの方が安心であり、効率的です。生成AIは大量処理をハイスピード実施するのは向いていませんし、運用コストは従来からのシステムの方が極めて廉価です。また、大量処理システムに求められる安定性や安全性も、まだまだです。
まず、マネージャーが生成AIを活用し感動する
DXは全社課題の改善、IT活用は大量定型処理の効率化、生成AIは多品種少量の判断業務の効率化向けということは、ご認識いただけたかと思います。では、マネージャーが全社なり、部門のDX化をどうやって進めるかについてですが、まず自身が一番とっつきやすいDXである生成AIを知る事が大事だと思います。
マネージャーのみなさんが凄いところは、ベテランとして「業務を知ってること」です。業務をどうDX化するかの青写真や、業務で必要な資料などを、みなさん自身が生成AIを活用して作成し、「感動すること」がスタートではないかと思います。以下に私を含むインソースの役員が生成AIを実際にどう使ったかを示します。
例1:支社長の激励に活用~50代役員
当社の50代の役員は、営業部門のテコ入れに生成AIを活用していました。具体的には、ある地域の「業績の良い企業30社」を生成AIに選ばせ、そのエリアの取引有無情報を生成AIに伝え、支社指導用の資料をほんの数分で作っていました。従来であれば、営業統括部門に調査を依頼し数日待つ必要がありましたが、あっという間に自分で資料が作れたので、喜んでいました。
例2:会計基準をIFRS(国際財務報告基準)にすれば業績はどうなるか~舟橋個人
インソースは上場企業なので、社長である私は、会計基準について時々考えます。現在の日本基準をIFRSに変えたら、経営数字がどう変化するのか知りたいと思いました。ただ、計算が面倒で、概算でも、すぐには自分では出せません。試しに生成AIに当社の有価証券報告書を読ませると、僅か1分50秒で計算してくれました。このスピードと手軽さは驚きでした。
例3:企業分析に活用
営業をする際、HPを見て企業情報を分析するのは時間がかかります。そんな時は、生成AIを使えばアッと言う間に情報収集が可能です。

驚きをDX推進に活用する
マネージャーが生成AIを利用すれば「これなら事務作業は全部できるのではないか」「Excel活用とは全然違う」などの強い驚きを持つと思います。DX化を推進するには、DXに関心がない部下、DXに否定的な部下を押し切ってでも、強引に進めることです。この驚きを、エネルギーにしてDX化を進めます。
生成AI活用をスタートするのにちょっと不安があれば、ぜひ、インソースの公開講座をご利用ください。懇切丁寧かつ、ゆっくりご指導しています。
マネージャーがデジタル化の大きな青写真を描く~大きな課題解決を夢想する
DX化で重要なのは、経営者やマネージャーが、DXを活用して、業務上の「大きな」課題解決を夢想することです。高い位置から業務を見て「こんなことができるはず」とまず大きく考えることです。方針を定め、DX化の青写真を描くことが重要です。それが定まれば、次はどうやって社内を動かすかです。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
DXの方法論シリーズ
- マネージャーが生成AIを活用してまずは感動する|DXの方法論1
- 経営者としてのDX推進|DXの方法論2
- DX推進に人と金をつける|DXの方法論3
- DXに関する費用と判断軸|DXの方法論4
- DXを推進する具体的な7ステップ|DXの方法論5
- 「生成AI活用基盤」を構築しデータ整備をする|DXの方法論6







