インソース 営業統括部

組織風土の改革とは、社員が動きたくなる環境をつくること~挑戦を恐れる文化から、楽しむ文化へ変えるコツ

経営層や組織改革担当者の方から、「ルールや仕組みを整えても、現場に浸透しない」というお悩みをよく伺います。

背景には、「上にものを言いにくい」「失敗が許されない」といった、組織特有の「風土」による見えない壁が存在します。

本記事では、「組織風土の改革」に焦点を当て、行動変容を引き出すための考え方と実践のポイントを紹介します。

組織を変える鍵は「人」ではなく「風土」にある

「社員の意識が低い」「若手が育たない」「指示待ちが多い」、これらは個々人の資質の問題として語られがちですが、多くの場合、原因は風土にあります。

風土とは、社員の考え方や行動を無意識に方向づける「組織の空気」のようなもので、どれだけルールや仕組みを整えても、風土が変わらなければ行動は変わりません。

例)ルールや施策が浸透しない風土の典型例

  • 意見を言っても「どうせ変わらない」というあきらめがある
  • トップの方針が現場に伝わらない
  • 部署間の情報が閉じ、連携が生まれない
  • ミスが表に出てこない

ルールを定着させるには、風土を変える、つまり組織の行動原理を変えることが不可欠です。

組織風土は「理念」「体制」「制度」の反映である

風土を「雰囲気」や「気持ち」の問題だけと捉える組織は少なくありません。しかし実際には、風土は組織の構造的要素である「理念」「体制」「制度」の3つによって形成されます。

「理念」が、挑戦する風土をつくる

理念は社員が行動の基準を持つための源泉です。明確な理念が浸透していなければ、社員は経験則や上司の顔色で判断するようになります。一方で、「挑戦を称える」「失敗を学びに変える」といった理念が浸透している組織では、自然と挑戦を称える風土 が形成されます。

「体制」が、オープンな風土をつくる

組織の体制は、社内コミュニケーションの流れを左右します。ピラミッド型では上意下達が強まり、現場からの意見が上がりにくくなります。フラットすぎる組織では意思決定が曖昧になり、責任の所在がぼやけます。体制を見直すことで、社員同士の情報共有や連携がスムーズになり、オープンな風土の改善につながります。

「制度」が、協働する風土をつくる

評価や報酬制度は社員の行動を方向づける重要な要素です。個人の成果だけを重視する制度では、協働を避け、他人を出し抜くような風土が生まれます。逆に、成果だけでなく行動や姿勢も評価対象にすることで、 協働する風土が自然に形成されます。

風土を変える第一歩は「心理的安全性」の確保

風土改革の最初のステップは、社員が「本音を言っても大丈夫」と感じられる環境づくりです。心理的安全性の低い組織では、課題やミスが隠され、改善が進みません。心理的安全性の高い組織では、失敗を共有し、互いに学び合う文化が自然と生まれます。

事例)失敗共有会により、心理的安全性を醸成したケース

建設会社A社では、「失敗を隠す」文化を変えるため、月1回の「失敗共有会」を開催。
上司が自ら過去の失敗を話すことで、部下が安心して失敗を共有できる雰囲気をつくることができた。
さらに、共有会以外でもミスや失敗を隠さずに改善に繋げる風土が構築された。

成功企業に共通する4つの行動原則~経営層が変化を動かす条件

風土改革に成功した企業には、共通点があります。

  • 経営層が率先して「変わる姿」を見せる
  • 理念を再定義し、それを行動の軸にする
  • 部署横断で情報共有や議論の場を設ける
  • 管理職に「風土づくりの責任」を持たせる

事例)社長が風土改革の最大の推進力となったケース

従業員50名規模の中小製造業B社は、部署間の連携が弱く、縦割り意識の強い組織だった。そこで、社長は従来の指示型マネジメントを是正するため、自ら改革の先頭に立つことを決意。
社長は、毎朝の全社員ミーティングで理念や会社の方向性を語り、自らの失敗談や挑戦事例も共有。社員は、社長の「言うだけでなく自ら行動する姿勢」を実感し、会社に対する信頼感を高めた。
さらに部署横断チームを設け、若手社員も意思決定に参加する仕組みつくりました。社長自ら進行役として意見を引き出したこともあいまり、部署間の壁が徐々に取り払われ、社員同士の連携と自主性が促進された。
結果、社員満足度は1年で20%向上し、新製品提案数は前年の2倍に増加した。

改革を「文化」に変えるための条件

風土改革は一度の施策で完結するものではありません。社員全員が共創者として関わる仕組みを整えることが重要です。

  • 改革の成果や成功事例を定期的に共有する
  • 各部門でリーダーを設定し、文化づくりを牽引させる
  • 経営層が日常的に理念や行動の方向性を語る

こうした取り組みによって、組織全体の行動原理が徐々に変化し、挑戦を楽しむ文化が根付きます。

まとめ:風土が変われば、人も制度も自然と動き出す

組織風土の改革は、「人を無理に変える」ことではありません。社員が自ら動きたくなる環境をつくることこそが本質です。

経営層や組織改革担当者の方に求められるのは、「なぜ現状は変わらないのか」を理解し、「どうすれば変えられるのか」を主体的に考え、行動することです。挑戦を恐れる文化から、挑戦を楽しむ文化へ。組織の変化の第一歩は、経営層自身の意思表示と行動から始まります。

組織力強化研修~理念・体制・制度・風土の4つで組織を強くする
(1日間)

本研修は組織力の強化を主眼としています。「理念」「組織運営」「人材」「組織風土」という4つの観点から、自社の課題と改善策を見つけることが目的です。

リーダー以上の役職の方を対象に、自社を次のステージに引き上げる何らかのヒントを必ず得ることができます。

組織の課題は1つの要因が引き起こしているのではなく、多くの場合、複数の要因が絡みあって生まれています。そこで本研修では、組織の構成要素でも特に重要な上述の4つに焦点を当てました。

そしていずれの要素も陥りやすい課題から改善策を具体的に理解できるよう、カリキュラムを丁寧に組んでいます。終盤では実際に組織力強化に成功した企業の事例も紹介します。

本研修のゴール

  1. 組織の理念や目標を明確に示せるようになる
  2. 部下の適性を見極め、スキルを最大限引き出せるようになる
  3. 組織の風通しを良くし社員同士のコミュニケーションを活発にする
  4. コンプライアンス違反やハラスメントを未然に防止する

よくあるお悩み・ニーズ

  • 組織としての理念が今いち社員に浸透していない
  • 組織としての目標は立てているが、なかなか達成できない
  • 社員のモチベーションが上がらない。またマネジメント方法もわからない
  • 社員をどう育成していいかわからない

>講師派遣型研修の詳細はこちら

セットでおすすめの研修・サービス

部下とのコミュニケーション実践研修~心理的安全性の高い職場を作る

心理的安全性とは、「メンバー一人ひとりがチームに対して気兼ねなく発言できる、自然体でいられる環境・雰囲気」のことを指します。

心理的安全性が担保された職場では、一人ひとりが主体的に行動し、成果を上げることができます。

しかし実際には、メンバーがミスをすることを恐れ本音を言えず、悩みやストレスを抱えているというお悩みを多くおうかがいします。このような事態を打開する鍵を握っているのは、チームを率いる管理職・リーダーです。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

>動画教材の詳細はこちら

管理職向けエンゲージメント向上研修~心理的安全性、インクルージョン、ビロンギング

本研修は、管理職が職場でエンゲージメントを高め、部下が安心して能力を発揮できる環境をつくることを目的としています。

近年、「心理的安全性」「インクルージョン(包摂性)」「ビロンギング(帰属意識)」の3要素が重要視されています。本研修では、まずこれらの概念とその効果を理解し、自組織の現状を振り返ることで課題を明確化します。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

コーチング研修(実践編)~動機付けとキャリアサポート

本研修は、コーチングのスキルを踏まえ、どのように現場で部下・後輩の育成を実践するかをまとめたノウハウ集です。

部下・後輩の意欲を高めて動機づけをするためには、日々の指導のみならず時に1対1面談を実施するなど、密なコミュニケーションを取ることが重要です。

対象者を意欲高く業務に臨ませる働きかけ、動機づけのための質問や励ましのフィードバックのポイントのほか、キャリアサポートの仕方も解説します。

>公開講座の詳細はこちら

関連記事

関連研修シリーズ