仕事における経験学習サイクルとは~4つのステップを回し、経験をノウハウに変えて成長する

仕事における経験学習サイクルとは
~4つのステップを回し、経験をノウハウに変えて成長する

環境の変化が著しい時代において、経験したことを自身の中に落とし込みながら走ることが求められています。本記事では、経験値をノウハウに変えて成長していくために欠かせない「経験学習サイクル」についてお伝えします。

1. 成人における学習とは

学習には様々な形がありますが、成人における「学習に影響を与えた要素」のうち、70%がその人の仕事経験によるものだそうです。
(米国ロミンガー社の調査 残り20%は人の観察やアドバイス、10%は能力開発の研修や書籍)

研修会社としては、「研修・書籍」が10%と一番低いのは心苦しいところですが、所要時間を考えれば効率的な学習方法とも言えるのではないかと思います。
(研修は多くて年に1週間もなく、読書も1日1~2時間と考える)

ドラッカーの言葉に、「重要な科目ほど経験を積んだ後のほうが学びやすい」という名言があります。ビジネス上のセオリーは、机上で学ぶだけでなく、自身で経験し、失敗や成功を分析して検証することで学びが深まるからです。

「経験学習サイクル」という言葉をご存じでしょうか?

アメリカの教育学者であるコルブ氏は、経験に基づいた学習プロセスが、4つのステップから成り立つと定義しました。

1:具体的な経験
2:内省的な観察
3:抽象的な概念化
4:積極的な実験

良い経験を積み、しっかりと振り返り、そこから教訓を引き出し実践し、さらにその実践した経験を振り返っていく......これを繰り返すことが学びを深めます。

ビジネスパーソンとしての経験を無駄にしないために、「経験学習サイクル」を回すことが重要です。

2.経験学習サイクルとは

経験学習サイクルとは、「経験から学び成長するためのフレームワーク」のことです。経験学習サイクルは、以下のステップから構成されます。

経験学習サイクル

【Step1】経験:具体的な経験をする
【Step2】内省:行動の振り返り・フィードバック
【Step3】教訓:経験を多面的にとらえ教訓にする
【Step4】実践:行動を修正し、挑戦する

それでは具体的にひとつひとつのステップを見ていきましょう。

【Step1】経験:具体的な経験をする

「経験をする場」を与え、「目指すべき目標」を設定します。設定する目標は本人の適性・バックグラウンド・キャリアによっても異なります。

その人にとって適度に難しく、発達が見込まれる目標を立て、実行することが良い経験の条件です。これを経験学習サイクルの重要な要素の1つ「適切なストレッチ(発達的挑戦)」といいます。

【Step2】内省:行動の振り返り・フィードバック

経験したことを内省し、分析します。ビジネスにおいては「振り返り」と呼ばれるこの作業が、経験学習サイクルに必要な要素「リフレクション」です。「振り返り」において、 "その経験から何かを学び取ろうという意欲"があることが大前提です。

【Step3】 教訓:経験を多面的にとらえ教訓にする

経験した内容について振り返りを行い、「これはうまくいった(これはダメだった)。だから次はこうした方が良いのではないか」という仮説を立て、行動や方針を変更していきます。

「こうやったらうまくいく!」という手応えをコツや秘訣(ノウハウ)として昇華させるのがこの"教訓"のプロセスです。知的好奇心が刺激され「エンジョイメント」が得られます。

【Step4】実践:行動を修正し、挑戦する

教訓を職場で実践するプロセスです。実践してまた新たな経験を得ることで、次の新しいサイクルステップ1「経験」に移行します。

3.経験学習サイクルを自分で回す

経験学習サイクルを自分で回せるようになるためには、リフレクション(振り返り)のクセをつけることが必要です。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉通り、ヒヤリとしたり、失敗した!と思っても、時と共に記憶は薄れていきます。忘れた頃に同じ過ちを繰り返してしまわないよう、記憶が新しいうちにリフクレション(振り返り)を行います。

〇リフレクションの具体的なやり方

まず、目標を立ててから業務にのぞみます。その目標に対し、できていること、改善が必要だと思うことを振り返り、客観的に内省します。簡単にリフレクションを行うフレームワークとして、下記のKPT法があります。

KPT法はそれぞれ、下記の3つの視点で自身の行動(経験)を振り返っていきます。

・できていること・続けるべきこと(Keep)
・課題点(Problem)
・次に試してみたいこと(Try)

日報を書いたり進捗状況を報告する際に、KPTの観点から振り返る習慣づけをおすすめします。

〇リフレクションのポイント

振り返りは、二度と失敗しないぞと反省することが目的ではありません。しっかり振り返りを行うことで、自信を持って次の行動(経験)に挑戦するために振り返ります。

経験と振り返りを深める姿勢としては、下記の観点で行うことが重要です。

・自信を持って行うこと
・好奇心を持って行うこと
・挑戦する姿勢
・批判も受け容れられる度量の広さ、柔軟性
・変化を楽しむ姿勢
・周りの意見に耳を傾ける姿勢

上記の観点を実践できれば、良いリフレクションが行われ、経験から得られる学びが大きくなります。他者より振り返りのフィードバックを受ける際は、厳しい意見でも柔軟に耳を傾けましょう。自分に肯定的なフィードバックだけではなく、批判さえも"自分と違う考えに触れる経験ができラッキー"と、前向きに受け容れる姿勢が必要です。

自分の想定内の経験より、想定を大きくはみ出した、予定調和でないスリリングな体験の方が、得られる気づきや教訓が充実したものとなります。

4.部下・後輩の経験学習サイクルを回す

部下・後輩が経験学習サイクルを回せるようになるまで、上司・先輩が支援することが有効です。自分一人では、経験から教訓を抽出することも手探りになりがちです。上司・先輩が「経験学習サイクル」を一緒に回し、対話を通して教訓を引出し、サイクルを回すことを習慣化してあげることが望ましいでしょう。 サイクルの輪が回り始めれば、主体的に学びを深めていけます。

上司・先輩が「経験学習サイクル」を一緒に回してあげる具体的な方法としては、日報に対するフィードバックや、1対1面談などがあげられます。

〇リフレクション(内省)へのフィードバックをする

フィードバックを行う際、その内容が「ファクト(事実)」に基づいた「具体的」な行動や成果で語られているかが重要となります。

事例:

・ファクト(事実)に基づいているか
NG:ちゃんとフォローしたのか?そんなだから他社に獲られてしまうんだよ

OK:今月はお客さまへのフォローの訪問回数が10回も少ないね。何か訪問できなかった理由があるのかな?

・具体的な内容か
NG:今月も絶好調だね!来月もこの調子で頼むよ

OK:今月も先月に引き続いて新規に5社も獲得して素晴らしいね。来月は別のエリアの新規開拓をお願いしたいが、どのようにアプローチすればこれまでのようにうまくいくかな?

・率直な伝え方をしているか
NG:ミスが少ないのはいいんだけどねぇ......(時間がかかりすぎじゃない?)

OK:ミスなくできている点はさすがだね!だけど、アウトプットのスピードに時間が掛かりすぎているね。作業時間を減らすために何か改善することはあるかな?

〇面談で内省をアウトプットさせる

内省が進むのは、「語るべき他者」や「応答してくれる他者」がいる時と言われています。

1対1面談などで、部下・後輩に「語らせる」ことを心がけましょう。自己のあり方や行動を「誰か」に説明しなければならないことで、無意識かつ暗黙のうちに行っている事柄を、「見える化」(外化)することができます。

内省が見える化(外化)されると、上司・先輩はその内容を共有することができ、コメントや問いかけで応答することができます。

すぐに部下・後輩が語ってくれなくても、辛抱強く待つことが大切です。相手が語り始めたらしっかりと話を聴き、質問や「なぜ?」という問いかけで相手の気づきを支援してあげましょう。

〇アウトプットを促す面談力を磨く

上司や先輩がうまく誘導質問してくれると、自分では気づかなかったことに気づくことがあります。下記のように、「なぜなぜを繰り返し深掘りができているか」「相手がそう思った根拠や経緯をたずねているか」などがポイントとなります。

良くない「質問」の例
・「なんでそんな問題を起こしたの?」
・「考えるまでもなく、○○すればいいんじゃないの?」
・「私は□だと思うけど、君は思わない?」
・「相手が違う人ならそんなことしないでしょ?」

良い「質問」の例
・「何がその問題を引き起こしたのだろう?」
・「その時、本当はどうすればよかったのだろうか?」
・「□と△とだったらどちらの方が可能性は高いだろうか?」
・「例えば相手が違う人だったらどうしただろう?」

〇主体性を奪うフィードバック NG例

ア. 正解を押しつける

「最初からうまくいかないと思ったよ。次からこうしてください」
最初から正解を見せられてしまうと、人はそこで考えることをやめてしまうものです。 フィードバックとは本来、本人からの求めに応じて行うものであり、部下・後輩が行ったことに対して、「どう思うか?」という問いにまず、答えてあげることが大事です。

イ. 直接的なダメ出しをする

「まだまだだね!〇〇を準備しなきゃダメじゃないか!」
経験値が少ない部下・後輩は、様々な視点で物事を見ることが苦手です。至らない部分を指摘する際は、例を出したり、「こういう場合はどうするの?」などと質問をすることで自ら気づくように仕向けましょう。自身で気づかないと学びにつながりません。

ウ. 一度に伝える

初めての経験に直面する部下・後輩にとって、内省は時間がかかるものです。上司や先輩から一度にフィードバックすると、全てを消化しきれず、だんだん受け身の姿勢になってしまいます。
結果、「どうしたらいいですか?」と正解を上司・先輩に求めるようになってしまうのです。教える側は、分かっていることを一度に皆まで言わず、我慢することも大事です。

〇教訓を抽出する聞き手となる

2~3年目の若手は経験の数も増えてきて、経験から導き出す「教訓」が見えてきます。例えば「こうすれば成功の確率が高い/こういう時はうまくいく」といった勝利の方程式を自分で導きたい、うまくいくパターンを概念化したいという好奇心を持ち始めます。

上司・先輩は、アウトプットの良い聞き手になることが求められます。

面談では、部下・後輩に語らせることを目標とします。ただし、「その経験を通してどんな教訓を得たの?」と問いかけたとしても、相手が的を射た答えを返してくれるとは限りません。

教訓は、あれやこれやといろいろなことを話しつつ、自分の中で整理していく中で見えてくるものです。上司・先輩は、その過程を傾聴の姿勢で付き合ってあげましょう。

ひとしきり話をした後、「つまり......」から語り始めた内容に、本人が教訓として得たことの本質が含まれています。

教訓を引き出す質問例
・「つまり、ひと言でいうと?」
・「ポイントをまとめると?」
・「次にまた同じような場面に遭遇したら役に立ちそう?」
・「後輩のために書き残しておくとすればどんなこと?」
・「それを方程式で表現するとすれば、どんなふうに描けるだろうか?」
・「それを図で表現するとすれば、どんなふうに描けるかな?」

上司・先輩からみるとあまり適切ではない「教訓」もありますが、一回実践させて、本人に経験させることが早道です。

あまりうまく行かないことや、失敗から新たな気づきを得る経験を基に、自分でより良い「教訓」にブラッシュアップすることもあります。直接手助けしたい気持ちはやまやまですが、グッと我慢して見守ることが重要です。

〇概念化したものを持論化していくよう導く

「教訓」が導き出せたら、部下・後輩が自分なりの解釈を加え、「持論」を考えられるように導きましょう。部下・後輩の主観に任せた「試論」「仮説」でかまいません。今の立場からの課題、環境に合っていることのほうがむしろ重要です。

導き出した持論を公言する際は、上司・先輩、時にはお客さまといったように、他の人を巻き込んでアウトプットを行うのが効果的です。

自分1人で導き出した持論に対し、時には否定的な意見が出ることがあるかもしれません。しかし、肯定的なフィードバックだけではなく、批判さえも利用して持論を修正していくことが学びを深めます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「ローマは一日してならず」という言葉があるように、一人前のプロフェッショナルになるためには、ある程度の期間が必要となります。経験学習サイクルは、一過性の短期間のものではなく、何回も継続的にサイクルを回し、徐々に気づきや学びを深めていくものです。さらにサイクルを継続していく過程で非連続の成長を見せます。「習うは一生」という言葉を胸に、経験学習サイクルを進化し続けていただければと思います。

また、「経験学習サイクルを効果的に活かした指導法」についてのコラムもございますので、ぜひご参考ください。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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