経験談をケーススタディ化し、面談で伴走する姿勢を示す|マネージャーの方法論3
今回は、5ステップOJTのステップ4、ステップ5について、20年以上インソースで多くの企業の育成課題を解決してきた舟橋が語ります。
ステップ4.ケーススタディ~経験談の共有で、こんな時どうするかを理解させる
研修資料を充実させたとしても、新人や若手、中途採用者が日々の業務の中で判断に迷う場面は少なくありません。その対応策として、上司・先輩の経験談を共有する場をつくることが有効です。その経験談がケースとなり、ケーススタディができるのです。
マニュアルだけでは仕事はわかりにくい
一般的に業務マニュアルには、仕事の手順が1から10まで書かれていますが、どこが重要なポイントで、どこが特に注意すべきなのかは分かりにくいものです。一方で、上司や先輩の成功や失敗のドラマチックな経験を聞くことは、興味深く、頭に残りやすいものです。
経験談を共有する場を持つ~アメリカ海兵隊でも実施
アメリカ海兵隊の将校養成機関では、半年間で300時間、将官や佐官クラスの大先輩から戦場での経験を聞く機会を設けています。経験談から、判断に困るような事態において、どう判断し、何を優先して行動すべきかを学ぶためです。
私(舟橋)が若手の時代は上司、先輩から仕事帰りの赤ちょうちんで経験談を聞かされ、判断力を磨きました。現代においては、OJTの一環として、業務時間中に上司・先輩の経験談を部下・後輩に伝える場を設定するのが望ましいでしょう。
失敗談の共有は特に重要~失敗を恐れる若者に効果的
長い武勇伝や自慢話は倦厭されてしまいますが、失敗経験の共有は特に有効です。「失敗しても偉くなれるんだ、失敗を恐れずがんばろう」と考える部下が増え、部下の主体性発揮や退職防止につながります。令和の若い世代は極端に失敗を恐れ、失敗したら即転職する事例も散見されるので、意図して失敗談も話していただきたいと思います。
ステップ5.面談の実施~部下一人ひとりの話を1週間に15分くらいじっくり聴く
面談は部下の話を聴く場
OJTの実施で最も重要なのは面談を行うことかもしれません。部下の話を聴くことで、よりその部下に合った指導をすることができるからです。1週間に15分くらい部下一人ひとりと話す時間を取るのが望ましいです。少なくとも1カ月に1回は必ず実施すべきです。
その際、部下の話をできるだけ聴くのが基本です。上司が話過ぎると部下の本音は引き出せません。仕事のフィードバックとは違うと心得ましょう。
何度も面談を実施していれば、部下はだんだん自分のプライベートの悩みなども話してくれるようになります。そうなれば、部下との間に強い信頼感を醸成することができ、より親身な指導ができるようになります。
常識をすりあわせる~上司・先輩と若手では「常識」が異なる
世代の違う上司・先輩と若手では、お互いの常識はまず異なっていると考えて間違いありません。
各世代の傾向(一例)
面談を活用し、自分と部下の常識のすり合わせを行います。常識の違いをお互いにすりあわせ、部下に寄り添うことができれば、部下のモチベーションは向上します。
定期的な面談をぜひ実践してみてください。
仕事力強化には読書会~読書は経験の代わりになる
仕事能力を強化する上で、体系的に知識を身につける事のできる読書の大切さは、生成AI時代においても変わりません。本を通じて得た知識や他者の経験が仕事のバックボーンになるからです。しかし、部下や若い世代に読書の有効さを解いても、なかなかその通りにはやってくれません。読書はタイムパフォーマンスが悪いと考えられているようです。
読書会のススメ~1冊を10人で分割して読めばタイパは悪くない
インソースでは、社内で読書会を定期的に開催しています。年に5冊から10冊ほど、朝礼の場で本の要約を発表します。1冊200ページの本であれば、1章ずつ、あるいは一人20ページ分くらいを割り当て、要約した内容を順次発表する、という流れです。言い換えると、1冊の本を10人で分割して本を読むようなものです。こうすると一人で全ページ読むほどの負担感なく、本が読めてしまいます。
さらに、実際に読むページ数は10分の1であっても、自分の担当でないパートも他のメンバーの発表を通じて少しは頭に入るので、タイパよく本に書かれた内容が頭に入ってくるのです。
経営者や管理職こそ読書が重要
特に経営者や管理職に読書習慣は絶対必要です。読書を通じて得た多様な経験談が経営判断の拠り所となるからです。インソースの管理職や経営者養成研修でも、事前課題として書籍の通読をよく課しています。
読書会は最もローコストな教育施策といえます。ぜひ導入してみてください。
5つのステップで進めるOJT研修~リーダー・管理職の部下指導
本コラムの内容を研修に落とし込みました。本研修は、OJTを5つのステップに分け、自立して現場で考えて動く人材を育成することを目的にしています。研修内では、知識付与する内容、共有する経験談を洗い出し、育成計画をより具体的で現場で使えるものにしていきます。
本研修のゴール
- 座学で伝えたい仕事の知識を洗い出す
- 指導の具体的な方法を知る
- 自分の経験談や失敗談から事前に知らせておきたい内容を決める
- 面談の具体的な実施のポイントを身につける
よくあるニーズ・お悩み
- 今の若手の指導に悩んでいる
- OJTは指導側の負担が大きく困っている
- 若手や中途採用者の離職を減らしたい
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
セットでおすすめの研修・サービス
AIが企業独自のケーススタディを生成し、現場での事故を未然に防ぐプラットフォーム「AI-OJT」
「AI-OJT」は、組織内に蓄積されている事故報告書などの文書をAIが自動で解析し、数分でケーススタディ教材を生成する仕組みを提供します。
これにより、組織ごとの実態に即した教育コンテンツをスピーディーに内製化でき、従業員一人ひとりにとってリアルな学びを実現します。
OJT研修~部下・後輩指導の基本スキルを習得する(2025年版)
OJTの基礎ならこのベストセラー研修がおすすめです。実際の部下・後輩の現状を踏まえた3カ月間の育成計画の策定方法のほか、報告の受け方や指示の仕方、ほめ方・叱り方などの指導方法を学び、ケーススタディで実践力を磨きます。
現代の若手の育て方研修~ヨコの関係強化で成長実感を高める
今の若手にとって、働きやすさとチャレンジのバランスの良い仕事とは何か考えたプログラムです。
現代の若手が抱えるキャリア不安に焦点を当て、心理的安全性を確保したチームづくりや主体性を引き出す指導など、若手が成長できる環境づくりやマネジメントのコツを身につけます。
経験ゼロから育てるOJT研修~伴走型マネジメントで「できる」を広げる(1日間)
本研修では、イマドキの若手世代の傾向や強みを踏まえ、細やかな指導で安心感を与えながら育成する方法を習得します。演習では、留意点や仕事のコツを体得させるためのポイントを育成担当者の実務に沿って整理します。
研修全体を通じてOJTで活用できる育成シートをまとめ、持ち帰ることができます。
(2時間研修)傾聴力向上研修~部下の本音や考えを引き出す
本研修は、部下と信頼関係を築き、成長を支援できる上司になるために、話の聴き方を見直します。
傾聴の基本原則や姿勢、避けるべき聴き方などを学び、ロールプレイングを通して実践スキルを習得します。
【無料セミナー】【最新生成AIデモ実演】事故予防に特化した「AI-OJT」~実践的ケーススタディで予防教育を内製化
インソースの、2025年12月時点で最新の生成AIサービスをご紹介します。
「具体的に何に役立つのか」が分かるように、AIサービスのデモも実施し、画面上で操作や機能を確認できるため、導入の可能性をリアルに体験いただけます。
マネージャーの方法論シリーズ
- O(おまえ)J(ジャマだ)T(立ってろ)はダメ~心理的安全性に配慮した部下指導|マネージャーの方法論1
- 現代のOJTは「座学→実践→フィードバックの繰り返し」が有効|マネージャーの方法論2
- 経験談をケーススタディ化し、面談で伴走する姿勢を示す|マネージャーの方法論3







