インソース 人事部門支援サービス

たちが悪い!メンバーのやる気を削ぎ、チームを崩壊させる「スライサー上司」

みなさんの周りには、こんな社員・職員はいませんか?

  • 過去の小さな成功体験を何度も大げさに繰り返し語り、自慢が多い
  • 過去の小さな苦労を何度も大げさに繰り返し語り、愚痴が長い
  • 人の努力や成果をあたかも自分がやったかのように取り上げ、上司にアピールする
  • ストレスがかかる交渉の場面などに理由をつけて参加しない
  • みんなで会議で決めたことなのに、自分に都合が合わないと簡単にルールを破る
  • 恥ずかしげもなく「給料分しか働かない」と公言し、仕事を選ぶ

主語はいつも「自分」。いかに自分が心地よく居られるかを最優先し、周りのメンバーの心や時間・お金などを少しずつ、でも確実に削り取っていく人たちのことを「スライサー」と呼ぶそうです。この人の言動、すごく嫌というほどでもないけれど、何かいつもモヤモヤする...そう、あなたが頭に思い浮かべるあの人やあの人のことです。

そういえば近くにいる...損したくない気持ちを隠せない人たち

世界20カ国以上で翻訳され、ベストセラーとなったアダム・グラント著「GIVE & TAKE」※では、人は以下のとおり大きく3つのタイプに分類されるといいます。

ギバー(人に惜しみなく与える人) 約25%
テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人) 約20%
マッチャー(損得のバランスを考える人) 約55%

※出典:『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』 2014/1 三笠書房
アダム グラント (著)、 楠木 建 (監訳)
(最終アクセス:2025/9/24)

最も割合の多いマッチャー~テイカーのあたりに存在するのが、今回注目しているスライサーといえそうです。極端に表現すると、他者からごっそり奪って得をしようと画策するのが真のテイカーだとしたら、スライサーは自分が損をしそうなとき、相手に気づかれないように少しずつ他者のリソースをかすめ取っていく傾向があります。

調和を重視し、本心をまっすぐ・はっきり表すことを「はしたない」と捉える方も多い日本だからでしょうか。周囲との大きな衝突やハレーションを起こさないよう、ずる賢く他者を閉口させるスライサーがそこそこに存在するのかもしれません。

スライサーが役職を持つとどうなる?

一般職の方や比較的若い従業員のふるまいであれば、まだ未熟なだけ、周りのメンバーには影響しないからと放置したり、上席者が口頭で軽く「良くないよ」と諫める程度で済ますこともあるでしょう。これらの特性は、自分に正直でありたい、セルフケアスキルが高く、良い意味での鈍感力が備わっているとも言い換えられます。

個性だからと許されない組織への影響

ただ、もちろん他者を不快にさせて良いというわけではありません。特にメンバーマネジメントを担う管理職がスライサー気質を発揮することは、組織にとって良い状況を招くことはほぼありません。メンバーの成長に心を砕き、彼らの成果を最大化して部署の目標を達成させることが管理職の役割であるため、そこに私心(自分の損得)は必要ないからです。

困った部下はどう動くか?

スライサーは「相手に気づかれないように行動する」と述べましたが、複数回そんなことが続けば周囲ももちろん意図的(ごく自然にそうしている場合も含む)なものであることに気づきます。以前と同じ嫌な思いをしたくないので、できる限り会話を短く終わらせる、目を合わせない、声掛けに反応しない(はぐらかす)、話題を変えるなどの対応で距離をとるようになります。「あなたとのコミュニケーションを望んでいません」を間接的に伝えているのです。

チーム崩壊の足音

それでもなかなか収まらない場合は、「嫌です」「賛同できません」と拒否するメンバーが現れます。協力して成果を上げようとしなくなり、ぎくしゃくした雰囲気が続きます。

人のよいメンバーに業務がますます集中し、トラブルも増えていきます。「以前は何でも言うことを聞いていたのに、最近急に口答えをするようになって...」スライサー本人はこう感じるかもしれませんが、被害者側は何度も是正を望むリクエストを発信していました。その優しさや善意に気づけない(気づこうとしない)のも、またスライサーの特性です。

このあとは2階層上の上司や他部署の管理職などに相談が上がり、人事部門にも話が入ってくるようになり、我慢の限界に達したメンバーたちは異動願や退職願を出す、という流れです。チーム編成を何度やり直してもスライサーの周囲には結局人が残らず、孤立していきます。

人事部門のスライサー対策~管理職にも、全体にも

スライサー上司が率いる係や課のメンバーは徐々に不満を蓄積させ、前向きに仕事に取り組まなくなります。「これが処世術か」とその上司に倣い、面倒な業務を他者に押しつけるようになってしまったり、あるいはこんなズルい人が自分の上司なんて、と組織の評価制度を疑うようになるかもしれません。

管理職には360度評価を導入。自己評価との乖離が大きい部分に着目させる

まずは管理職に向け、自身の上司だけでなく部下や同僚からも期中の行動を評価してもらう仕組みを導入することをおすすめします。自己評価と他者評価を比較し、管理職本人が気づいていなかった強みや改善点を知り、自ら行動変容を起こせるように導きます。この結果をふまえた再教育、個別コーチングで変容を観察するなどの施策を打ちましょう。

<検討したい評価内容>

  • メンバーの親切心や能力、時間を奪い、部署の生産性を低下させていないか
  • 部下のエンゲージメントを低下させる発言をしていないか
  • 個人の能力、部署全体のバランスを考慮せずに業務采配をしていないか

現状の管理職の状況を知ることにも使えますが、次期管理職に相応しい候補者を選出するためのツールとしても役立ちます。自組織が管理職に求める姿を細かに評価項目にあらわすことが重要です。また、運用にあたっては、上司を評価することになるメンバーを守ること、煩雑さをできる限り軽減することなどに、心を砕く必要があります。

【おすすめのサービス】

人事評価制度において活用されることが多い360度評価(多面評価)を、人材育成に昇華させたアセスメントサービスです。評価を受ける被評価者は、自己評価と他者評価を比較することで、自分では気づいていなかった強みや改善点を知り、自ら行動変容を起こせます。

>360度評価アセスメント

誠実さや素直さ、モラルのある行動をほめたたえる組織文化を育む

P.F.ドラッカーも「仕事上の真摯さ」と「人間としての真摯さ」を兼ね備えていなければ、組織は破壊されると述べています。仕事の成果もあげ、メンバーからも信頼される人材になることを、人事部や経営者からの強いメッセージとして折に触れ発信することが大切です。良い人が良いチームをつくり組織が構成されることにより、ステークホルダー全員の幸せにつながります。

【おすすめの研修①】

インテグリティをキーワードに、自組織で浸透させるためにはどうすればよいかを考える研修です。本研修ではインテグリティを、誠実さや正直さなどを複合的に兼ね備え、周囲の環境にとらわれることなく正しい行動がとれることと定めています。

>(リーダー向け)インテグリティを考える研修(半日間)

>(役員・管理職向け)インテグリティを考える研修(半日間)

【おすすめの研修②】

たとえ悪気はなくても、無配慮は関係性を傷つけ、組織の生産性やエンゲージメントを下げるリスクになりかねません。そこで本研修は、無自覚に起こりがちな「インシビリティ(無礼さ)」に着目し、心理的安全性の高い職場づくりを目指します。チェックリストを通じて日頃の言動を見直し、周囲を活性化するとともに良好な関係を築くための行動変容を促します。

>コミュニケーション向上研修~インシビリティに注意し、配慮と共感力を高める(半日間)

セットでおすすめの研修・サービス

Leaf 人事評価システム~360度評価も難なくWEB化!

評価者の選定や連絡、集めた評価シートの管理や集計など、運用に大変な手間がかかる360度評価もWeb化できます。

人事サポートシステム「Leaf」で、現場社員の負荷も部門長と人事評価担当者の負荷も軽減します!

>Leaf 人事評価システムの事例はこちら

【人格の陶冶シリーズ】仕事における「謙虚・勤勉・感謝」の意味を考える(1日間)

昨今の「効率よく結果を得ること」をよしとする風潮の中で、ややもすると時代遅れの考え方と捉えられがちな「謙虚」「勤勉」「感謝」の重要性をテーマに掲げ、議論し合うプログラムです。ディベート形式でのワークスタイルを取ることで、敢えて対立した立場から議論を重ね、その本質に迫ることを狙っています。

>講師派遣型研修の詳細はこちら

【全力解説】偉人に学ぶ仕事の向き合い方(渋沢栄一編)~志を立て、先の見えない時代を突破する

仕事に対するモチベーションが下がっているとお悩みの方に向けた研修です。

働くうえで大切にしたいことを学んでいただきます。渋沢栄一は、全体の利益を考え正しいことを普段から実践することを大切にしており、その考え方は100年経った今でも勉強になるものばかりです。渋沢栄一の言葉を借りれば、「知恵が運命を作る」ものです。

>公開講座の詳細はこちら

>講師派遣型研修の詳細はこちら

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