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批判ばかりで動かない社員への対応法~口先先行型を実行型へ導く人事のアプローチ

実務力が極めて低い口先先行型の社員~リスクとなる可能性も

会議などの場面ではもっともらしい意見を述べる一方、自らは動かず成果に直結する役割を果たさない社員が一定数存在します。本人は理屈で武装しているため、一見頼もしく映ることもありますが、実際には何の責任も引き受けず、周囲にモヤモヤとした不満や摩擦を生じさせるやっかいなリスク人材です。

本コラムでは、そのような人物が組織に与える悪影響を整理し、人事部門が取るべき解決策などを解説します。

現場で起きている事例~業務が滞る原因に口先先行型社員の存在がある?

  • 会議が進まない
    定例会議で一人の社員が効率化の持論を毎回持ち出す。しかし具体的な施策がなく議題が進展せず、他メンバーから「机上の空論で理想ばかりを語るのは時間の無駄」との声が上がった。
  • 若手が定着しない
    中堅社員が後輩の業務の進め方を批判する一方で、具体的な支援や指導は一切行わない。結果、若手が「どうしたらいいのか分からず、毎日出勤するのが苦痛」と複数名が離職を届け出た。
  • プロジェクトの遅延
    IT開発の設計段階で大量の指摘をする社員がいた。しかし自身はコーディングに関わろうとせず、作業負担が他者に集中し、納期が遅れる原因となった。
  • 取引先に不快感や不安を抱かせる
    優良顧客から「取引をやめたい」とお申し出があった。理由は「御社の担当は毎回こちらからのお願いをはぐらかし、約束したことを実行してくれない。そんな社員を雇っている組織を信頼できない」とのことだった。

行動しない社員を見分けるチェックリスト

以下に挙げる特徴が見られる場合、注意が必要です。

  • 会議では多弁だが、作業を引き受ける姿勢が見られない
  • 言葉は巧みだが、その内容が抽象的で実現性に欠ける
  • 「こうすべき」という発言は多いが、自分はその通りに手を動かさない
  • 書類作成や数値処理などの基本業務に弱い
  • 他者を評価したりものごとを批判することに熱心だが、具体的な代替案などを提示しない
  • 成果責任を問われる局面を避けがちで、失敗したり目標が未達に終わったことを他者や環境のせいにする

なぜ批評家へと変貌を遂げるのか~本人の個性と環境

そもそもなぜ、こういった社員が生まれてしまうのでしょうか。

  1. 承認欲求の強さ
    周囲から「できる人」と思われたい気持ちが強く、行動より言葉で自分を大きく見せようとする
  2. 自信のなさや不安の裏返し
    実力不足を悟られたくない心理から、印象的で大きな言葉を投げかけてしまう
  3. 習慣化されたコミュニケーションスタイル
    過去に「実績ではなくもっともらしい考えをアピールして成功した体験」が積み重なり、癖になっている
  4. 責任回避の傾向
    「前向きなことを言っておけばとりあえず場は収まる」という発想で、本気でやりきる意思が最初からないか、弱い
  5. 評価制度や職場文化の影響
    短期的な成果やアピール力が評価される環境で、成果を確認されることがないため根拠のない発言をしても咎められない

当事者の個性・そういう性格だからと諦めるまえに、その特性を悪い方向に助長させてしまう環境が組織内にないか、疑ってみることも重要です。次に人事部門が取り組むべきことについて考えてみましょう。

人事部門が取るべき6つの対応策~個人・上司・風土・評価制度へのアプローチ

  1. ビジネス実務の基礎力を底上げする教育
    知識だけに偏りがちなメンバーには、実務の基礎を固める教育が効果的です。例えば数値管理、文書作成、顧客対応の基本など、本人が苦手としている分野を学ぶ研修を受講させます。また、学んだノウハウを現場で何度もアウトプットさせることで、発言と成果のギャップを縮めます。
  2. 不安を抱える社員へのフォロー
    実力不足や不安を隠すために口先だけになるメンバーには、上司がスキルアップや学習の機会を与えることが効果的です。「できない自分を隠す」から「できる自分に育つ」へと意識を切り替えられるような導線を作るために、直属の上司と連携を取る必要があります。
  3. 小さな実行を促すための発信
    大きな目標だけを語らせるのではなく、「今週はまずこれをやってみよう」と小さな行動に落とし込むことが必要です。そのためには、各部署の管理監督職に向け、組織が望む人材指導方針を周知することが重要です。現場での小さな成果体験を積ませることで、言葉より実行という習慣を育みます。
  4. 行動管理を明確化するため文化意識の醸成
    口頭での宣言を記録し、進捗を定期的に確認する仕組みを導入するのも有効です。タスク管理ツールや進捗会議を活用し、「発言を必ず見える化する」文化を根づかせることで、実行力が問われるようになります。
  5. 発言ではなく行動を評価する仕組みづくり
    「言ったもの勝ち」の環境を放置すると、口先先行型人材がどんどん増えてしまいます。発言内容よりも実際の行動、成果へのプロセスを評価軸に組み込み、言葉と実行が結びつくよう評価制度を設計し、適切に運用します。
  6. 承認欲求を健全に満たす
    「認められたい」という欲求そのものは悪いものではありません。成果を上げたときにしっかり承認する一方で、「宣言しただけ」では評価しない姿勢であることを、組織全体に繰り返し語りかけることが重要です。

環境整備や正しい仕組みづくりで口先先行型人材をなくす

口先先行型の社員をそのままにすると、業務の停滞、社内外のステークホルダーからの信頼低下、周囲のメンバーの離職など組織に大きな損失をもたらします。しかし、基礎教育、行動重視の仕組み、小さな成功体験といった複数の手法を組み合わせれば、建設的に動く人材へ変えることができる道筋が見えてきます。「個人への批判を抑え込むこと」ではなく「行動に結びつける環境や仕組みを作ること」に焦点をあてましょう。

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