営業部長の仕事は「育てる仕組み」を作ること
私が営業部長としてある組織に着任した時、最初に直面した課題は「どうすれば強い営業チームを作れるか」でした。
業績は安定していましたが、個人の力に依存しており、組織としての一体感が不足していると感じました。
私が営業部長として実行した3つのこと
1.メンバーの強みと課題を把握する
私はまずメンバー全員と個別に面談し、彼らの強みと課題を把握することから始めました。そして、共通の目標を明確にし、チーム全体で共有する文化を作ることに注力しました。例えば、単なる売上目標ではなく、「お客さまから感謝される提案を〇件以上する」 といった定性的な目標も設定しました。
2.ナレッジ共有の徹底
次に、ナレッジの共有を徹底しました。優れた営業手法や成功事例は、特定の個人に留めるのではなく、チーム全体で活用できる仕組みを整えました。週に一度、全員で学び合う場を設け、成功や失敗の事例をオープンに共有することで、互いに刺激を与え合う環境を作りました。
3.プロセス評価の仕組みを導入
営業の現場では、モチベーションの維持が重要です。そこで、単なる結果評価ではなく、プロセスも評価する仕組みを導入しました。たとえば、契約に至らなくても「新しい市場開拓にチャレンジした」「顧客の本質的な課題を深掘りできた」といった行動を積極的に評価しました。
結果として、チーム内での情報共有と支え合う文化が生まれ、一人ひとりが安心して挑戦できる環境が整いました。以前は個人プレーが目立っていた組織でしたが、日を追うごとにチーム全体で目標に向かって進む一体感のある組織に変わりました。
営業部長が抱える課題
強い営業チームを作るのは、特定のリーダーの力ではなく、メンバー全員の力の積み重ねです。営業部長としての私の役割は、その環境を整え、一人ひとりの力を最大限に引き出すことだと改めて実感しました。
営業部長という立場では、日々の業務の中で多くの課題に直面するのも事実です。「強い営業チームを作るには」「部下が思うように育たない」「営業戦略をどう策定するか」などの悩みを抱えながら、どうすればチームを成功へ導けるのかを模索している方も多いのではないでしょうか。
課題解決のために~部下を知る
部下は一人ひとり違った、長所、短所、性格などを持っています。そのため、それぞれに合った育成の方法やアプローチなどの個別カスタマイズが求められます。また、部下のことを知らずして、適材適所の資源配分は実現できません。部下を知るためには、個別面談によるヒアリングや普段の業務での観察を通じて、スキルや個々の情報を手に入れる努力をすることが大切です。
部下の能力・スキルを3つの観点で整理する
ビジネスにおけるスキルは3つ(コンセプチュアルスキル・ヒューマンスキル・テクニカルスキル)に分けられます。マネジメントレベルが上がっていくにつれて、テクニカルスキルの比率は下がり、コンセプチュアルスキルの比率が高まっていきます。
部下のスキルをこれらの3つのスキルで整理すると、把握しやすくなります。
部下の3つのスキル
- コンセプチュアルスキル:複雑な状況を把握・分析し、知識や経験、情報などを体系的に組み合わせ、概念化することにより、物事の本質を把握するスキル
- ヒューマンスキル:他者と円滑なコミュニケーションが取れ、関係構築ができるスキル
- テクニカルスキル:業務遂行に必要な専門知識・業務処理のスキル
営業プロセスと能力要件を可視化する
営業には決まったプロセスがあります。まず、それぞれのプロセスに「これができれば一人前」という基準を作ります。例えば、どんな営業でも顧客への「ヒアリング」という重要なプロセスがあります。これについて能力要件をあげていきます。
営業プロセスと能力要件を可視化する
営業 プロセス |
能力要件 | 具体的な内容 |
---|---|---|
ヒアリング | ヒアリング項目 | 顧客にヒアリングすべき項目を把握しているか |
仮説設定 | 顧客の課題・ニーズの仮説を立てられているか | |
課題・ニーズ把握 | 顧客の課題・ニーズを把握できているか | |
競合情報 | 競合の情報を引き出して、把握できているか | |
マーケット情報 | マーケット情報を引き出して、把握できているか | |
購買方針 | 顧客の購買方針をヒアリングできているか | |
支払条件 | 顧客の支払条件をヒアリングできているか | |
KBF(Key Buying Factor) | 顧客が何を最も重視しているのか掌握できているか |
育成計画を立てる
この能力要件に一人ひとりの部下の能力がマッピングできれば、部下に必要な能力が明確になり、どの能力を伸ばす必要があるかがはっきりします。これをベースに育成目標と育成手段を検討し、個別の育成計画を立てます。大変時間がかかりますが、営業部長として優先順位が高い職務です。
育成計画というのは、立てた育成目標に対して「誰がどのように指導するか」を決めることです。営業という仕事の性格上すべて、OJT(部下・後輩指導、On The Job Trainingの略)となりますので、自身が手取り足取りの指導をする必要はありません。
営業部長研修~営業人材育成編
本研修は営業人材育成に特化しています。自分自身も先輩や上司から営業技術をまねて・盗んで、成長したはずです。営業技術はマニュアルや研修だけでは習得しづらいとも感じているはずです。営業部長の仕事は自部門における「育てる仕組み」を作ることと「育てる風土」の醸成です。これができる営業部長は強いです。 優秀な営業が個々で活躍していても、組織として力を発揮できなければ、持続的な成長は難しいものです。
営業部門のマネージャーとして求められるのは、売れる営業パーソンを育て、チーム全体の底上げを図ること。そのためには、単なる「指導者」ではなく、「育成者」としての視点が不可欠です。 人材育成に関する営業部長特有の課題を解決するために、体系的な知識と実践的なスキルを学ぶことができるのが本研修です。営業部長としての大きな成果を目指すなら、ぜひこの研修を活用し、チームと組織の強化に取り組んでみてはいかがでしょうか?
よくあるお悩み・ニーズ
- 新人を早期に一人前の営業にしたい
- 部下の育成状況を見える化し、底上げを図りたい
- 部下との適切な関与の仕方を学びたい
本研修の目標
- 一定の基準をもとに、営業としての体系的な育成を進められる
- チームと個別の目標をもとに育成計画を立て、PDCAを回せるようになる
- 効果的な関与の仕方を理解し、適切に部下を支援できる
セットでおすすめの研修・サービス
営業部長研修~営業戦略立案編(2日間)
本研修は、営業戦略を考えるうえで重要な要素を学び、さまざまな分析を踏まえ自社の戦略を検討する内容です。営業戦略とは、勝てる仕組みを作ることです。
研修では、実効性の高い戦略に欠かせない環境分析やマーケティング思考でターゲットを分析し、誰がどの顧客にアプローチするのかまでを考えます。
営業部長研修~現場マネジメント編
部下を現場でマネジメントするための考え方、実行すべきことを学ぶ研修です。営業施策を進めるうえでのPDCAの回し方を確認し、先々の見込みをたてながら個別案件を攻略するために日々の行動をどのように管理すればよいかを学びます。