うまく情報を活用すれば弱くても勝てる|生産性向上の方法論6
ビジネスにおいて私は情報やデータに着目することを何より大切にしています。原材料や資金は使えば減るし、人は働くと疲れます。一方、情報はいくら使っても減りません。むしろ使い倒せば新たな価値を産む特別な存在です。ゼロから事業を立ち上げた際、弱小企業でも、勤勉に情報を活用すれば、大きな成果が出るのではないかと考えました。その考えは当たっていました。
弱者の情報活用は「徹底的に見せる事」
情報活用の成功例を見ると、共通するポイントは以下の3つです。① データを収集し、AIや分析技術で活用すること、② 顧客の行動を深く理解し、パーソナライズすること、③ 需要予測や業務効率化に役立てること。これは間違っていませんが、すぐ成果が出ませんし、大企業の既存ビジネス向けです。ベンチャー企業や新規事業などビジネス弱者は別の情報活用を勧めます。自らの情報を徹底的に「見せる」事です。これなら、簡単にスタートできます。
コンペで落ちた提案書でも別の企業には価値があった~見せれば売上が上がる
インソースの創業当時、もうびっくりするぐらいのコンペに落ちました。お客様と何とかリレーションを取って提案にこぎつけることができても、実績なしの小企業を採用してくださる先はありませんでした。全知全能を賭けて作った研修カリキュラムが勿体ないので、落ちたカリキュラムを自分たちでWebページを作り、どんどんWebにアップしました。そんな事を3ヶ月ほど続けていると、僅か月間100件もなかったWebのヒット数が3千、4千とどんどん増え、お問い合わせがどんどん来るようになりました。成果に気を良くして2万4千ページもWebを作った結果、年間6千件のお問い合わせが来るようになりました。コンペには負けても、Webを通じてカリキュラムを大勢の人に見てもらう事で、必要な企業に届いたのでした。自社情報を見せることはすごく大事です。
Webには3種類ある~会社案内、カタログ、売り場
Webには3種類存在します。とても一般的なのが会社案内代わりのWeb、もう少し売上を意識したものがカタログWeb、販売、弊社のように営業を強く志向しているのが売り場Webです。営業人員を増やさずに売上を上げたいのであれば、自社HPを売り場Web化するのをお勧めします。現在では新規顧客の大半はWeb経由です。
売り場Webとするためには商品やサービスの詳細情報、価格情報、開発者の声、率直な顧客の評価、詳細なQ&Aなど、徹底的に記載する事が重要です。何と言っても、Web上に店員は不在ですから、顧客が読みたいであろう情報を最大限見せるのがポイントです。
売り場Webづくりはアマゾン、上新電機に学ぶ~迷ったら参考にする
Web作りでよく参考にしているのがアマゾンや上新電機のWebです。一見するとカッコよくもなく、平凡な感じがしますが、考え抜かれ、実に精巧に作られています。例えば、アマゾンでも上新でもトップページにたどり着いたら、スクロールしなくても、同時にパソコンで見たら7種類以上の強いメッセージが飛び込んでくる仕掛けになっています。また、スクロールやクリックが圧倒的に少ない操作性で即座に購入したい顧客への対応と、内容を詳しく知りたい顧客にはとことん見てから購入できるもらえることを両立しています。また、毎日の様に手が加えられ、日々進化しています。何か迷ったら、両者のWebを眺めています。
弊社はサービス業ですが、両社を真似て、トップページは7種類のメッセージが届くように改善しました。
WEBを読んでもらうためにメルマガを送付~営業活動でビビッドな情報を収集
Webは作っただけでは読んでもらえないので、Webへのリードとして、年間100万通ものメルマガを顧客に送っています。メルマガで喜ばれるのは顧客の同業他社の課題感やそれに対応した研修事例です。その元ネタは、営業担当者が日々入力している自社開発の営業管理システムplantsの顧客対応記録です。このplantsは大半を文字(テキスト)データで登録する仕掛けとなっており、ありのままの会話やキーワードを蓄積しています。それらを活用して作成したビビッドな内容のメルマガで関心も喚起し、詳しく書かれたWebに誘導して、サービスへのお問い合わせにつなげています。
文字で情報を残せる人材を採用~採用も情報活用を意識
少子化の時代、新卒採用には弊社も苦労しています。お給料も高めで自由にやりたいことができるいい会社だと思うのですが、いわゆる有名大学卒の意欲溢れる外見の人材はなかなか応募がありません。そんな中でも良い人材を採用する必要があるため、他社とは違った採用戦略が必要になります。そこで、営業担当者をはじめ、あらゆる部門で文書作成力が求められることから、「文字で情報を残せる能力」を評価した採用戦略を取っています。
具体的には、面接よりも文書力の評点を重視した採用を実施しています。内気そうだったり、自信なさげに見えても、情報活用を成長戦略の中心に据えている当社では、文書力があれば将来活躍が期待できるため採用しています。実際、新卒採用の人材が弊社の屋台骨を支えてくれています。
関連する研修
コンテンツマーケティング研修~基本を学び、潜在顧客にアプローチする
Webでの情報開示を通じた集客ノウハウをお伝えする研修です。
メールマーケティング基礎研修~顧客の心をつかむ効果的なメールの作り方
Web戦略とは両輪の関係となるメールマーケティングについて学ぶ研修です。
生成AIを味方にするWebマーケティング戦略と記事作成術~年間6,000件の問合せを獲得する、インソース流のWeb開発
生成AIに推奨されるようなWebづくりを学べる研修です。
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
生産性向上の方法論シリーズ





