作業時間や業務量を知ることは極めて重要|生産性向上の方法論2
リーダーが適切な業務指示を行うには「この業務にはどれぐらいの人員と時間がかかるのか?」を知らねばなりません。部下は業務指示の内容と与えられた時間の妥当性から「このリーダーの指示に従っておけば大丈夫」かどうか判断するからです。
また、偉大な経営者ほど、業務の細部を把握したがります。作業時間や業務量、部品の材質、歩留まりなどを押さえておけば、製造コストを今より下げられるか、また、今より量産することが可能かどうかの判断材料にします。また、人事評価の手段にしたりもします。
小林一三は自らそばを作りたがった~リーダーは自らやってみること
阪急阪神東宝グループ創始者小林一三氏は宝塚歌劇、駅デパート、郊外住宅地などを日本で最初に展開した独創的な経営者として有名ですが、実は「駅そば」も晩年の小林一三氏が発案しました。「駅そば」第一号店を阪急十三駅に開店した際、そば一杯の調理時間が知りたくて、そばを自ら作りたいと言って周囲を慌てさせたことが伝わっています。
標準作業時間や業務量は3日間業務を記録すれば推定できる
新任リーダーとして着任した際、チームの業務を把握するには以下の方法で実施するのが良いと考えます。「標準作業時間や業務量を推定する方法」はそんなに難しくはありません。部下のメンバーにどの作業にどれだけの時間がかかったか?をいちいちていねいに記録してもらいます。最低3日間(これより長ければより正確)ぐらい記録し、その内容を分析すれば、複雑な作業でも標準作業時間が分かり、現場にどれだけの業務量があるか分かります。
(図 3日間の行動分析)

私はSEだった時代にこのスキルを身につけました。システム開発をする際は、作業内容と作業量を毎日記録するのが今でもルールとなっています。概略設計に何時間、コーディングに何時間、テストに何時間などこれを個人単位、チーム単位で合計して、仕事の進捗管理に使っています。またこの記録から新システムの予算や開発スケジュールの予測も可能になります。
記録の重要性~数えたり、記録する事から予測が可能になる
岡田斗司夫氏が著書『いつまでもデブと思うなよ』(新潮社、2007年)で紹介したダイエット法に、レコーディングダイエットなるものがあります。これは、食べたものや体重を記録し続けることで、食習慣の傾向を把握し、生活改善を実現するダイエット方法です。記録する事で難しいダイエットさえ実現しています。
リーダーになったら、時々3日間で良いので、作業時間や業務量の調査をしてください。その結果を分析すれば、新たな業務改善アイデアがひらめくと思います。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
生産性向上の方法論シリーズ





