株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

ルール作りはリーダーの仕事|生産性向上の方法論5

職場ではルールには2種類あると考えます。一つはハラスメント防止や情報漏えい防止などのリスク対策としてのルール。社会通念上、絶対に守るべきルールです。リーダーは懸命な努力を持って守ってもらうことが必要です。もう一方は、チームとして積極的に売上アップやコストダウンを狙う業績向上のためのルール。ただ、こちらは各部署、メンバーの仕事のやり方や利害が絡み、現場には非効率なマイルールがはびこっており、リーダーが考える最適化なやり方をルールとして定着させ、チームの生産性を上げるのは難しいものです。

リーダーは鳥の目になり業務を俯瞰してルールをつくる

当社では研修テキストをバックオフィスで集中して印刷しています。テキストは研修実施の7日前の受講者数で何度も冊数を確認し印刷納品していました。一方、研修実施部門では、研修直前にキャンセルが出るため、常にテキストの10%程度を廃棄していました。

バックオフィスではきっちり仕事をしていたに関わらず、実施部門ではロスが発生と両部門で余計な手間が発生していました。両部門に話し合ってもらい、納品期日を7日前から3日前にすることで廃棄ロスを大幅に削減することができました。

ルールを作る際のポイントは、鳥の目になって俯瞰的に業務を見る事です。実際にメンバーの仕事のやり方を聞き出し、仕事の流れを時系列で図式化してみるのです。簡単な図、マンガでかまいません。とにかく、全体が俯瞰できる様に書いてみます。その際、会社全体、お客様まで含め、手間、ロス、不満、余計をできるだけ削減することです。

仕事熱心な人ほど、昔、教えられたやり方をしっかり守り、その結果ロスを産んでいるものです。

ルールを守ってもらうリーダーのテクニック

上記の様な明白にロスを削減できる様な場合は、すぐにメンバーに浸透させることができます。ただ、そこまで明白な結果がすぐ出ない場合や、リスク管理面のルールのうちでも以前から慣例になっているつきあい残業やセクハラ発言などを撲滅するには少々手がかかるものです。

1. 「ルール」をまず若手に覚えさせ、ベテランには時間をかけて徹底する

ルールが守られないのは、ずばり、ルールを覚えられないからです。年齢が若いほどすぐ覚えます。まず、若手からルールを覚えてもらうのです。ベテランや役職の高い人ほど、ルールを覚えられません。人によりますが年齢の影響が大きいと考えてください。なので、年齢の高い人ほど直接的に、何度も伝える努力が必要です。反発心からルールを守らないとの考えもあろうと思いますが、「年齢だ」と考えた方がリーダーは腹が立ちませんので、こちらをお勧めします。

2. 大事な「ルール」はみんなで作る

会議は短い方が良いし、内職ができるのでオンラインならなお良し、と考えがちですが、職場でルールを決める際は、時間をかけた会議を対面で実施するのをお勧めします。人は自分で思いついた事や、共感した事の方が他人に強制された事よりも大切に考えるものです。また、時間をかけたらその分、参加者で合意したい欲要求も生まれてきます。何より、日本人は同調圧力に弱いものです。なので、時間を使った会議で決めるのです。リーダーは会議テクニックを身につける事も重要です(詳細は当社ファシリテーション研修ご参照)

3. 最後まで守らなそうな人は早めに仲間に引き込む

ルールを最後まで守らないのはみなさんの部下の中でも「偉い人」です。偉い人はだいたい年齢が上です。この様な方に快くルールを守ってもらうためには、ルールができたヤバイ理由、このルールが劇的な効果を産む可能性、この「偉い人」にとっての密かなメリットなど、秘密の暴露を通じて仲間に引き込むのです。早めに仲間に引き込むか、若手がルールを守り出したタイミングにするのかは時期をはかる必要がありますが、手間を惜しまずやり抜きましょう。

関連する研修

生産性向上研修~仕事の見える化でムダなく成果につなげる

職場の生産性向上のためのルール化の重要性について言及している研修です。

労務管理研修~管理職として「使用者」の立場で成果とルールの両立を目指す

管理する立場として守らなければならないルールについて学ぶ研修です。

ファシリテーション研修~会議を円滑に進行する4つのスキル

対面での会議を効率的に進行するテクニックをお伝えする研修です。

<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

生産性向上の方法論シリーズ

  1. 仕組み化の勘所は「実数」を数えること|生産性向上の方法論1
  2. 作業時間や業務量を知ることは極めて重要|生産性向上の方法論2
  3. あるべき業務分担~メンバー9割、リーダー1割|生産性向上の方法論3
  4. 部下に指示待ち時間を作らない|生産性向上の方法論4
  5. ルール作りはリーダーの仕事|生産性向上の方法論5
  6. うまく情報を活用すれば弱くても勝てる|生産性向上の方法論6
  7. KPIを活用すれば業績は持続的に向上できる|生産性向上の方法論7

関連研修シリーズ

    • 更新

    【公開講座】課題解決ワークセッション~「学び」ではなく、「実益」を得るためのワークショップを公開講座でも

    • 中期経営計画策定ワークセッション

    • 健康経営アクションプラン策定ワークセッション

    • ブランド戦略策定ワークセッション

    • 教育体系ツールをつくろう!ワークショップ

    • カスハラ対応マニュアル作成ワークセッション

    • 離職防止策策定ワークセッション

    • AI時代のLLMO対策ワークセッション

    • 生成AIとPowerAppsで作る、業務アプリ開発ワークセッション

    • 業務効率を実現するAIエージェント開発ワークセッション

    • システム化に向けたユーザー部門のための要件定義ワークセッション

    • 更新

    コンサルタント養成シリーズ

    • 更新

    DX推進者シリーズ