株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

あるべき業務分担~メンバー9割、リーダー1割|生産性向上の方法論3

日々の業務遂行の中で、「誰がどの仕事を担うべきか」というテーマは、どの職場でも避けては通れない問題です。特にリーダーとメンバーの間でどのように業務を分担するのが望ましいのか。それは、チーム全体の生産性を左右する鍵となります。

リーダーではなくメンバーがやる方が望ましい仕事は9割

まず、メンバーが主導して取り組むべき仕事について考えてみたいと思います。たとえば、当社を例にとると、既存先に対する営業活動やテキスト作成、Web関連業務など、既にルールや手順が確立されている通常業務は、メンバーが率先して担うのが理にかなっています。これらの業務は要所要所をリーダーがチェックすれば良く、経験を通じてスキルを習得しやすく、繰り返すことで精度も上がっていくからです。加えて、あらゆる事務的な業務――お客様へ提出する提案書、受注関連の作業、行政への提出文書、決算関連資料の作成なども、メンバーが担当するのが望ましいと考えます。教育的な面でも、メンバーが手を動かした上でリーダーの指導を受けることは、将来必要になるチームの品質管理を担う力を育てる上で非常に有効です。

最近は、部下の反発や早期退職が気になるからでしょうが、部下の仕事を代わりにやってあげる「やさしい」リーダーが増えています。これは、メンバーが力をつけるのを阻害するばかりか、リーダーが本来すべき役割ができていかないため、チーム全体の生産性は上がらず、憂慮すべきことだと思います。

研修業や社長としてのマネジメント経験を踏まえて申し上げれば、チームの9割の仕事をメンバーができる様に教育して、任せていくのがリーダーの役割だと考えます。

リーダーがやるべき、~リーダーはチームの1割の仕事をする

リーダーはメンバーの仕事に常に関心を持ち関与すること

一方で、リーダーが厳然とすべき仕事が存在します。それはメンバーの仕事に関心を持ち、必要があれば関与することです。メンバーの仕事の成果が品質基準を満たしているかチェックしたり、日常業務の中で手が空いていたり、要領が悪かったり、困っているメンバーやスタッフがいないか探し、仕事を割り振ったり、支援する事です。メンバーが都合よく、リーダーに相談してくれることはまずありません。報告を求めるだけではなく、自ら課題を探し回るぐらいでないといけません。リーダーは管理職のイスにどっかり座り込んでいてはダメなのです。

自ら主導するもしくはメンバーと一緒にやるべき仕事

自ら主導すべき、あるいはメンバーと「一緒に」取り組むべき業務も存在します。たとえば、長期的に影響が大きい、社内外と調整が必要な業務――社外との契約交渉、著作権や特許権などが絡む業務などは最初からリーダーが関与するべきです。社長決裁を要する、金額が大きな案件などもその範疇に入ります。

さらに、営業面で言えば、新規顧客の案件や大型の取引、顧客企業の経営トップとのやりとりといった場面では、相手方がこちらの「本気度」を測っています。リーダー、あるいはそれなりの立場の人物が一度でも打ち合わせに出席することで、信頼が生まれ、商談が大きく前進することも少なくありません。こういった案件はリーダー自ら対処すべきです。

「量が多いが、単純そうな仕事」は最初必ずリーダーが関与する

私が常に注意してチェックしているのが「量が多いが、単純そうな仕事」です。こういった業務はリーダーが注意深く関与すべきです。業績、特に利益面で大きな影響があるからです。

これは実際にあった話ですが、顧客宛にパンフレットを送付する際、1通づつスティックのりで封をしていました。ゴムのリで10通づつまとめてのりをつけて封をすれば封入時間は3分の1ぐらいにはなるのにもかかわらずです。また、A4のパンフレットを定型外郵便で送付していました。これも、三つ折りにして定型郵便で送付すれば20%は安くなります。些末な事の様でも、放置すれば、年に1万通送付する場合、1百万円ぐらいコスト増になってしまいます。

塵も積もれば山という言葉がありますが、見た目には単純に見える仕事こそ、実は高い知的判断力が必要とされます。こうした業務は「メンバーに任せて終わり」ではなく、最初、一緒に取り組みながら、業務を教えていくことが重要です。

経営者は会社の大きなかじ取りをするだけでなく、会社全体でコストコントロールをすることも求められています。リーダーがこういった点に目が行き、適切な指導ができるようになれば、いずれは経営者への道が拓けるというものです。

これだけの事をやらねばならないので、メンバーをしっかり指導・教育して9割任せて、リーダーの仕事は1割に抑えられる様にしていきましょう。DXを活用した仕組み化などはチームの大きな力になると思います。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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