現代のOJTは「座学→実践→フィードバックの繰り返し」が有効|マネージャーの方法論2
今回は、「5ステップOJT」のステップ2、ステップ3について20年以上インソースで多くの企業の育成課題を解決してきた舟橋が語ります。
ステップ2.知識付与~座学先行の有効性
若い世代はまず座学をやってから現場に出ることを好みます。就職先として教育が充実した企業が選ばれる傾向が強いのもそのためです。現場でいきなり「さぁ、やってみろ」と言われることは、失敗を強く恐れる今の若い世代にとってとても苦痛なのです。逆に失敗しないための準備を惜しみなくやるのも今の若い世代の特徴です。
よって、上司や先輩がOJTの前に新人や中途入社者を集め、自部署の仕事について座学で仕事の内容を知識として付与することは心理的安全性を確保する上でも有効です。
研修資料は「思いつき順」で作成する
資料を作成する際、目次をきっちり作成し、そもそも論から書き進めていくのが妥当だと思うかもしれませんが、上司や先輩が大事だと思う「思いつき順」で資料を作成することをおすすめします。なぜなら、「思いつき順」であるとすぐに資料化できるため、現場ですぐ役に立つ内容から増やしていけるからです。すぐに思いつくということは重要であるいうことでもあります。「思いつき順=重要な順」で作成された資料は新人や中途入社者が現場で働く際、すぐ役立つでしょう。
資料の形式は揃えておく~標準化する
研修資料の形式は最初に決め、揃えておくべきです。思いつき順で、徐々に拡充されていくとすると、形式がばらばらでは将来とても使いにくくなってしまいます。経営者こそ標準化に積極的に関与すべきです。
ステップ3.OJTの実施
~仕事のやり方・意義・やりがいを伝え、教え方も最適化する
パルス方式~座学→実践→フィードバックで教え方を最適化する
いよいよOJTとなりますが、座学をしっかりやったとしても、残念ながらすぐ仕事ができるようにはなりません。
座学→簡単な作業を少し与える→成果をフィードバック→同じ仕事で作業量を増やす→また、フィードバックする→その作業ができるようになる→新しい作業について座学で教える→新しい作業を少し与える・・・
と、座学→実践→フィードバックを短期間に繰り返す「パルス方式」でOJTを進めることが効果的です。
※「パルス(Pulse)」とは脈拍を意味します。ビジネスにおける「パルス方式」は、短期間で繰り返し実施するという意味合いで使われます。
このパルス方式を20年ほど前に、ある企業の新人教育で取り入れました。その結果、本配属後、前年の新人より数倍高い業績を上げる人が続出する大成功を収めました。
フィードバックは「ほめる」場
フィードバックは意図的に部下をほめる機会とし、8割「ほめて」2割「指導する」くらいの内容で進めるのが今の若手世代にふさわしいと思います。
ほめるのが苦手なマネージャーも多いと思いますが、ほめる対象は具体的な行動(例:〇〇を実行した)や事実(例:××ができた)とします。例えば、容姿などをほめるのはセクハラと言われかねないので注意が必要です。
仕事の意義、やりがいを伝える~主体性発揮につながる
指導する際は、仕事のやり方だけでなく、仕事の意義、やりがいなども伝えます。新人や中途採用者が仕事の意義を理解すると「この仕事をうまくやるためには、こういった準備をしなければいけない」や「お客さまに清潔感のある会社と思ってもらうために、受付の資料の乱れを直しておこう」など自ら主体的に考え、行動できるようになります。
OJTの最適化~適任者が教え、心理的負担を減らす
丁寧な指導を求める傾向はありますが、OJTにおいて一対一で熱心に指導されることを「しっかり教えてもらえるのはありがたいが、ちょっと負担だな」と感じる若手が増加しています。密着型の指導を監視のように感じてしまったり、「常に見られている感」をストレスに感じてしまったりするためです。よって、全部ひとりの上司や先輩が指導するのではなく、一部をその分野が得意な別の同僚に任せるなど、教え方の最適化することが心理的安全性の面で有効です。また、OJT担当者の負担軽減にもつながります。
次回、「ステップ4.ケーススタディ」、「ステップ5.面談の実施」についてお伝えします。
5つのステップで進めるOJT研修~リーダー・管理職の部下指導
(1日間)
本コラムの内容を研修に落とし込みました。本研修は、OJTを5つのステップに分け、自立して現場で考えて動く人材を育成することを目的にしています。研修内では、知識付与する内容、共有する経験談を洗い出し、育成計画をより具体的で現場で使えるものにしていきます。
本研修のゴール
- 座学で伝えたい仕事の知識を洗い出す
- 指導の具体的な方法を知る
- 自分の経験談や失敗談から事前に知らせておきたい内容を決める
- 面談の具体的な実施のポイントを身につける
よくあるニーズ・お悩み
- 今の若手の指導に悩んでいる
- OJTは指導側の負担が大きく困っている
- 若手や中途採用者の離職を減らしたい
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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マネージャーの方法論シリーズ
- O(おまえ)J(ジャマだ)T(立ってろ)はダメ~心理的安全性に配慮した部下指導|マネージャーの方法論1
- 現代のOJTは「座学→実践→フィードバックの繰り返し」が有効|マネージャーの方法論2







