株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

マネージャーとしての上手な話し方・説明の仕方|新任マネージャーの方法論6

どちらかと言うと子供の頃からおしゃべりで話し好きでした。なので、社会人になって、SEになり、要件定義書の説明をする際、上司から「おまえの話はさっぱりわからない」と言われた時はちょっとした衝撃を受けました。今から思えば、まあ、そういわれても仕方がないと思いますが。

研修業では、どんなに高い見識を持つ講師を派遣しても、話が下手であれば後で大きなクレームになります。研修においては受講者のみなさんに講師を通じて、準備したテキストの内容が心地よく伝わらないと、まず研修目的が達成できません。今までの経験を踏まえて、分かる、伝わる話し方について書かせていただきます。

重要なキーワードが頭に入ってくるのが分かりやすい話し方

若い時の私は、相手に自分で考えた事を、考えた順番に、全部まるっと、理解してもらおうとしていたようです。なのでダラダラと話が長くなってしまい、また、上司にとっては分かり切っている事が多く、説明不要な事まで説明しており、話全体がぼやけていました。

「話がわかりやすい」とは、聞く相手が、重要なキーワードである名詞や数字、判断とその根拠が頭にすっと入ってくれば、「話がわかりやすい」となるのです。つまり、相手の理解する意欲や能力、話につきあっていただける時間にあわせて話す必要があります。よって、最低限伝えたいことを決めて、説明することが絶対条件です。

1分間に話せる文字数は200字程度

マネージャーになれば経営トップなど偉い人に説明する機会も増えます。偉い人の特徴はたくさんの仕事を抱えている、時間がない、だいたいシニアです。なので、短時間、例えば1分間で確実にこちらの意図を伝え、裁可してもらう必要があります。

話の上手下手の件で、いきなり文字数とは何事かと思われるかもしれませんが、上手に話すには1分間で話せる文字量を、まず把握するのです。私の計測では50字話すには13~5秒程度かかります。よって、1分間で話せる文字量は200字です。新聞各社1面のヘッドラインは100字で書かれています。なので200字(=1分間)ならキーワード十分詰め込めると思います。

1分間トークの練習を!

上手に話す近道は、この1分間で話す練習をする事です。200字の文字を選び、時計を見ながら何度も1分間で話す練習するのです。キーワードを詰め込んで1分間で話すとは、こう言う事と体に覚えさせます。この1分間で話す感覚が分かれば、話す事は苦痛でなくなります。安心してください、これは一生のうち、せいぜい1時間練習すれば体得できます。

資料がある時は文字量の3割話せば良い~7割は紙にしゃべらせる

目で読むスピードは耳で聞く4倍です、会議資料があれば全部説明する必要はありません。書いてある文字を全部読む方がいますが、聞いている方は先に目で読んでいるのでイライラし肝心の内容に集中できません。せいぜい3割程度の文字を読めば、聞く相手の頭の中に内容がすっと入ってきます。これが分かっている方は実に少ないのです。

具体的には、印象付けたいキーワード(名詞、数字)を、全体の3割程度の文字量を目安にマーカーを引いて、助詞などを飛ばしまくって読んでいけば良いのです。もし、資料があり、1分間で説明しなければならない時は200文字分マーカーを引いて、そこだけ読みます。そうすれば1分間で説明できます。話下手の方はぜひ、今すぐ試してください。飛躍的に上手に聞こえます。

分かりやすい話し方のレベルアップ~「間」を覚えよう

インソース講師へは大変優秀な方のご応募が多く、採用倍率は数十倍にもなります。選考基準は、実務のご経験が豊富であることと、受講者の成長に貢献したいという教育に対する愛情をお持ちである点としています。そして、最終試験は応募者による模擬講義です。講師は話のプロとして上手に話せないと仕事になりません。最終試験ではテキストを使った模擬講義で講義スキルをチェックします。

特にチェックするのは、適切な間があるかどうかです。どんなに良い内容を話しても、間断なく話を続けられたら、話は頭に入ってきません。受講者の反応にあわせ、「間」がうまく取れそうな方を採用させていただき、登壇練習の中でレベルアップしていただいております。

マネージャーのみなさんは鏡を見ながら練習してください。話す際、話す表情は明るく、口を開いて声を出し、聞き手とアイコンタクトしながら話す練習をすると良いと思います。また、「間」については、10秒に1回ぐらいもしくは、相手がちょっと疲れてきたかなと思うタイミングで口をつぐむのを意識してください。

トレーナーから話し方を学びたい方はプレゼンテーション研修の受講を!

実際にトレーニングを受けたい方は公開講座もありますので、プレゼンテーション研修のご受講をお勧めします。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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