不正の芽を摘む組織へ:潜在リスクの可視化と実効性ある対策の第一歩
近年、品質データの改ざん、顧客情報の不正持ち出し、従業員の不適切行動とその後の組織による隠蔽、保険金の不正請求など、世間を騒がせる不正事案が後を絶ちません。
これらの事案は、特定の個人による行為にとどまらず、組織全体のリスク管理体制や風土が深く関わっていることを示唆しています。不正は、個人の行動変容を促すだけでは解決が難しい複雑な問題であり、組織全体で向き合う必要があります。
不正はなぜ起きるのか:3つの要素に学ぶ
米国犯罪学者の研究では、人が不正に手を染めてしまうメカニズムを3つの要素に分類しています。この考え方を「不正のトライアングル」といいます。これは、自組織の潜在的な不正リスクを把握する上で非常に重要な視点となります。
機会
不正を実行するための「機会」が存在するかどうかです。例えば、不正をチェックする仕組みが不十分であったり、あるいは、特定の人物が「金銭の引き出し」と「預金通帳・キャッシュカード」の両方を単独で管理できる状態にあるなど、ルールや業務手順の不備が機会を生み出すことがあります。組織内の権限が集中しすぎていないか、相互チェック機能が適切に働いているかを確認することは、機会を減らす上で不可欠です。
動機
不正を行う「動機」が存在するかどうかです。金銭的な困窮や、過度な目標達成に対するプレッシャーなどがこれに該当します。組織として、従業員が精神的・経済的に追い詰められるような状況に陥っていないか、無理なノルマが設定されていないかなど、働き方や目標設定が従業員に不健全なプレッシャーを与えていないかを定期的に見直すことが重要です。
正当化
不正行為を自分の中で「正当化」できるかどうかです。例えば、「後でお金を返せば問題ない」「微小な逸脱なので技術的には問題ない」といった考え方です。こうした正当化の意識は、個人の倫理観だけでなく、組織の風土や慣習によって形成されることもあります。組織内で、グレーゾーンの行為に対する共通認識が曖昧でないか、過去の不正が黙認・軽視されてこなかったかなど、組織としての姿勢を振り返ることが求められます。
組織全体で取り組むべき具体的な対策
これらの3要素を踏まえると、不正防止のためには、単にルールを厳格化するだけでなく、従業員一人ひとりの意識や組織風土にも働きかける多角的なアプローチが必要です。
潜在化しているリスクの洗い出し
まずは、自組織にどのようなリスクが潜んでいるのかを正確に把握することから始まります。機会を与える可能性のある業務上の仕組み、従業員が抱える動機、そして不正を正当化しやすい組織風土など、これらを客観的に可視化することが第一歩です。単純なアンケートでは見えにくい潜在的な問題を深く掘り下げて把握する必要があります。
不正防止のための知識と認識のアップデート
不正の種類やその背景に対する見方は、個人の経験や時代背景によって異なります。そのため、組織全体で不正に対する「共通の認識」を持つことが極めて重要です。不祥事に関する知識を学び、アセスメントの結果などを全員で共有することで、見解のずれをなくし、組織全体で目指す方向性を揃えることができます。
実行性の高いリスク対策の検討
「洗い出されたリスク」と「共有された認識」に基づいて、具体的な対策を検討します。その際、机上の空論ではなく、自組織の現状に即した、現場で実行可能な対策を立てることが肝要です。従業員自らが不正防止策を考え、グループで議論する機会を設けることで、当事者意識を高め、対策の実効性を高めることが期待できます。また、良い情報も悪い情報も、積極的に部署やチームに開示・展開する風土を醸成することも、不正の兆候を早期に発見するために不可欠です。
不正リスクアセスメント付き ワークショップ
インソースでは、このような組織的な不正対策を支援するため、「不正リスクアセスメント付きワークショップ」を提供しています。
本サービスは、従業員様の回答を完全匿名化できる独自開発のアセスメントシステムを用いて、組織の不正に関するリスク度合いを数値化し、その内容や背景要因を可視化します。アセスメントで得られた客観的なデータをもとに、全従業員様を対象としたワークショップを実施し、不正防止のための知識を深め、組織全体で実効性の高い対策を議論し、行動変容を促します。
このサービスは、まず全社員の方々にご回答いただく「アセスメント」、続いて実施される「座学+ワークショップ」、そしてアセスメント結果とワークショップの所感を報告する「成果報告」の三段階で構成されています。当サービスを通じて、業務品質と効率の向上、ヒヤリハットやインシデント報告の増加といった、具体的な成果の創出を図ります。その結果、貴社が「出勤したい」「自慢したい」と思えるような、活力ある組織づくりを支援いたします。
サービスの概要と目的
- アセスメントシステムを用いて、組織の不正に関するリスク度合いを数値化
- ワークショップにより共通認識を得て、実行性の高いリスク対策を検討
- 本サービスの実施後に目指す姿~不正リスクの早期発見と組織風土の改善
セットでおすすめの研修・サービス
コンプライアンス研修~不正リスクのマネジメント編(1日間)
コンプライアンスの意義と重要性を理解し、コンプライアンス違反を防止するためのリスク対策を考える研修です。
実際のコンプライアンス違反事例の検討を通して、リスク対策を考えていきます。最終的には、自組織で運用する「マイ・コンプライアンスチェックリスト」を作成し、明日からの実践につなげます。
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