上司が知っておきたい部下育成術~内省(リフレクション)を促す1対1面談で経験を学びに変える具体的なステップ

多くの企業で「部下の育成」がうまくいかず、悩む上司が増えています。教える側も教わる側も価値観や働き方が変わり、従来の教え込むスタイルでは成果が出にくくなっているのです。
本記事では、面談で「部下を内省(リフレクション)により、自分の行動・思考・感情を振り返させて、学びに変える方法」を中心に解説します。
上司が知っておくべき内省の4つの効果~経験を学びに変える理由
1.内省は経験を学びに変える唯一の手段となる
人は日々多くの業務や判断を行いますが、経験するだけでは成長が限定的になります。例えば、部下が新しい提案書を作成しても、提出しただけでは学びにつながりません。
<内省の役割>
- 経験したことを振り返り、成功・失敗の原因を整理する
- 自分の判断や行動パターンを理解する
- 次回に活かす具体策を言語化する
このプロセスにより、同じ失敗を繰り返さず、より良い成果につながる行動へと変化します。
2.内省が主体性を育てる
多くの若手社員や中堅は、「指示されたことをこなす」ことに慣れてしまう傾向があります。その状態では、上司が教えたこと以外は行動できず、提案力や創造力が伸びにくいのが現実です。
<内省の効果>
- 部下が自ら「次に何をすべきか」を考えるようになる
- 行動前に仮説を立て、行動後に検証する習慣がつく
- 自分の強み・弱み、業務上の課題が明確になり、キャリア形成につながる
例えば、毎週の面談で「今回の提案でうまくいった点と改善点」を話すことで、部下は自分で課題を見つけ改善策を考える力を高められます。
3.内省は心理的安全性の高い組織づくりに役立つ
内省は単なる個人の学習プロセスではなく、組織の信頼関係にも影響します。
- 上司が部下に内省の機会を提供し、意見を受け止めることで「自分の考えが尊重される」と感じられる
- 部下は失敗や課題も報告しやすくなり、早期の問題解決につながる
- チーム全体が学びを共有しやすくなる
【実務例】部下がプロジェクトでミスをした際、上司は「何が原因だったと考えますか」と聞くことで、内省を促すことができます。
4.内省は長期的なキャリア形成を支える
目の前の業務をこなすだけでなく、自分自身の成長や将来の方向性を考えることは、キャリア形成に不可欠です。
- 内省を習慣化することで、自己理解が積み重なり、キャリアの軸が明確になる
- 経験から得た学びを言語化できるため、昇進や新しい業務への適応もスムーズになる
【実務例】面談で「今回の業務を通じて、自分の強みと改善点は何でしたか」と問いかけることで、部下は自分の成長を自覚し、次のステップに意欲的に取り組むようになります。
1対1面談で成果を出す3つの実践ポイント
1対1面談は、進捗管理ではなく「学びを生み出す場」として活用することが重要です。ここでは、部下の内省を促し、行動につなげるための3つのポイントを紹介します。
1.経験を言語化させる質問を使う
面談の中心は「部下が経験を整理し、自分の判断・行動を振り返ること」です。ここでポイントとなるのは具体的な質問で「事実」と「判断理由」を引き出します。
事実を確認する質問
- 「今回の案件で、どのステップが一番大変でしたか」
- 「その時点でどんな状況でしたか」
→具体的な行動を言語化させる
選択肢を整理させる質問
- 「その時、どんな選択肢がありましたか」
- 「どの選択肢を選びましたか。なぜですか」
→意思決定プロセスに気づかせる
結果と学びを引き出す質問
- 「結果はどうなりましたか」
- 「次に同じ状況なら何を変えますか」
→体験を「学び」に変換させる
【実務例(短いやり取り)】
上司:「今回のプレゼンで一番困ったことは何でしたか」
部下:「お客様から予想外の質問がありました」
上司:「その時、どう対応しましたか」
部下:「即答できず、後で回答を送ることにしました」
上司:「次に同じ場面になったら、どのように準備しますか」
部下:「質問パターンを想定して準備しておくと思います」
この一連のやり取りで→経験→振り返り→次の行動が自然に生まれる流れになります。
2.上司は「答えを与えない支援者」になる
上司が知識や正解を教えるのではなく、部下の内省を促すことが重要です。
実践ポイント
- 傾聴する:部下が話している間は遮らず、相槌や要約で理解を示す
- 問いかけで思考を促す:「どうすれば改善できますか」「他の視点ではどう見えますか」
- 答えを押し付けない:判断を強制せず、部下が自ら考えるよう支援する
- 感情も受け止める:失敗や不安も事実として認め、心理的安全性を確保する
- 小さな成功を褒める:内省を行動につなげるモチベーションを与える
【実務例】
部下:「うまくいかず悔しいです」
上司:「そう感じたのですね。その原因は何だと思いますか」
→正解を言わずに考えさせ、部下が自分で解決策を見つけるプロセスを支援します。
3.フィードバックは「事実→影響→次の行動」で伝える
改善行動を明確にするためには、構造化されたフィードバックが有効です。
- 事実(Fact):客観的に起こったこと
例:資料提出の期限が1日遅れました - 影響(Impact):行動が周囲に与えた結果
例:他部署の確認作業が遅れました - 次の行動(Next action):改善策や次回の行動
例:提出前にリマインダーを設定しましょう
ポイント
- 一度に多くを指摘せず、優先度の高い内容から伝える
- 個人ではなく行動に焦点を当てる
- 上司の体験談や成功例を共有すると説得力が増す
【実務例】
上司:資料提出が1日遅れました(事実)。そのため、他部署の確認が遅れました(影響)。次回は提出前にリマインダーを設定してみましょう(次の行動)。
まとめ~1対1面談を「学びの場」に変えることで部下は自走し始める
1対1面談は、単なる進捗確認ではなく、部下が経験を学びに変えるための大切な場として活用できます。上司の問いかけや関わり方が変わるだけで、部下は自ら考えて行動する姿勢を身につけていきます。
内省を促し、判断理由を言語化させ、小さな試行を積み重ねることで、チームには再発防止や主体性、改善を続ける文化が育ちます。
今日からの面談で、部下の経験に丁寧に耳を傾け、次の行動につながる問いかけを意識してみてください。小さな変化の積み重ねが、組織全体の成長につながります。
部下の育て方研修~面談とフィードバックで経験学習サイクルを回す
かつての「教え込むスタイル」から、「部下の力を引き出すスタイル」へと育成指導のスタイルが変わってきている中で、1対1での面談を活用する動きが広まってきています。
しかし、その趣旨を理解しないまま形だけ面談を行っても効果は期待できません。
この研修では、「経験学習モデル」の考え方に則り、面談を通じて効果的な部下育成を進める方法について学んでいただきます。
本研修のゴール
- 経験学習のポイントが理解できる
- 1対1面談での具体的な質問やフィードバックの仕方が分かるようになる
- 部下の主体的な育成を促すための自部署の育成方針が立てられる
よくあるお悩み・ニーズ
- 教える相手も教える内容も昔とは異なる今、どのように部下を育てればいいのかわからない
- 1対1面談をしくみとして取り入れているがどのように行えばよいか分からない
- 最近「経験学習」という言葉をよく耳にするようになったが、具体的にどのようなものか知りたい
セットでおすすめの研修・サービス
部下とのコミュニケーション実践研修~多様化する部下への関わり方
本研修では、部下との円滑なコミュニケーションの取り方を学んでいただきます。
部下に対する関心を強く持ち、積極的に関与することがコミュニケーションを機能させる最大のポイントであることを理解いただき、上司としてどのように対応すべきかを実践的に学んでいただきます。
管理職向け研修~部下の言語力と認知力に応じた指導編
本研修は、部下の「認知力」と「言語力」に着目し、一人ひとりにあわせた指導・育成方法を身につけていただく研修です。
まず、部下が指示・指導した通りに行動できない背景にある「認知力」と「言語力」について、具体的な事例を用いて解説します。そして、部下の「認知力」をふまえ具体的かつ細かく指示・指導をするためのポイントや、「言語力」を高めるためにどのように働きかけるかをワークを通じて学びます。
部下一人ひとりを活躍させるための部下指導の心構えを身につけ、職場での部下指導・育成につなげていただきます。
ナラティブ・コミュニケーション研修~双方向の物語で部下の内省と動機付けを促す
「本来望ましい姿」と、「現実の姿」の間にはギャップ、つまり問題があるものです。
ナラティブ・アプローチとは、相手が抱える悩みや不満などを「主観を尊重した物語(ナラティブ)」として語ってもらい、対話によって問題の原因を自覚し肚落ちさせることで、主体的に解決へ向かわせ「目指す姿」を実現するための支援活動です。
人材の多様化が進む今、それぞれの価値観を理解し、個に合わせて対応することが求められているため、注目を集めているコミュニケーション手法です。理屈や正論だけではうまく動いてもらえないとお悩みのリーダーのみなさんに、相手の気持ちに寄りすとめながら行動変容を促す手法を身につけていただけます。






