リーダーが「言うことを聞いてもらえない」と思い悩むときに考えるべきこと~チームを推進させるための「影響力」

部下やメンバーを思うように動かせていないリーダーを見ると、私たちはつい「リーダーシップが足りないのでは」と考えがちです。しかし、実際にはそのリーダーは指示も出し、見本も示しています。
それにもかかわらず、メンバーの行動につながらない、といった状況を見ることが少なくありません。
ポイントは、「何をしているか」ではなく、「それが周囲にどんな影響として届いているか」です。リーダーが発する言葉、沈黙、判断の先送り、配慮の仕方は、いずれも周囲の空気や行動を変えます。つまり、リーダーシップが効いていないと感じるとき、問題は「やっていないこと」ではなく、影響の伝わり方にある可能性があります。
部下が動かないリーダーに共通する3つの「違和感」
この違和感は、数値や評価として表れる前に、現場の空気として現れます。
- 会議は穏やかだが、決断が出ない
- 反対意見はないのに、納得感が見えない
- 業務は回っているが、全体のスピードが上がらない
こうした状態は、「問題が起きている」と断定しづらい一方で、確実に組織の推進力を弱めていきます。しかも、リーダー自身は誠実に振る舞っていることが多く、誰かを責める構図にもなりにくいのです。だからこそ、違和感だけが残ります。
リーダーが影響力を発揮できない理由を理解する
停滞の裏側には、リーダー自身が気づきにくい心理的なためらいがあります。影響力を弱めてしまう要因を理解することで、改善の糸口が見えてきます。
影響力を発揮できないリーダーが抱える4つのためらい
停滞の背景には、リーダー自身の内側にある「影響力へのためらい」があります。自分の言動が相手に強く作用することへの戸惑いが、行動を弱める方向に働きます。
- 強く言えば相手を傷つけるかもしれない
- 決めれば反発が出るかもしれない
- 踏み込めば、意図せず誰かを追い込むかもしれない
- 人を動かした結果の責任が自分に返ってくる
影響力を行使することが、そのまま「重い責任を背負うこと」に見えてしまうと、リーダーは自然と影響を弱める方向に行動します。その結果として選ばれるのが、「決めない」「言い切らない」「様子を見る」という態度です。
影響力と権力の違いを理解すると部下が動き始める理由
影響力を使うことにためらいが生まれる背景には、「影響を与える=権力的に振る舞うこと」という誤解があります。しかし、両者は本来まったく異なる性質を持ちます。
- 権力:制度や立場によって行動を制約する力
- 影響力:相手の納得や解釈に働きかけ、行動の前提を整える力
リーダーが何も決めない場合でも、その姿勢は周囲に伝わります。曖昧さは「本音を出さない方が安全だ」というメッセージになり、決めない姿勢は「決めなくてよい空気」を生みます。
影響力が弱いのではなく、意図しない形で作用していることが多いのです。
歴史上のリーダーに共通する「影響力の源泉」3つ
歴史上のリーダーたちを振り返ると、彼らは必ずしも強権的だったわけではありません。彼らに共通するのは、次のような姿勢です。
- 明確なビジョンがあり、言行が一致している
- 逆境でも折れにくく、自己犠牲をいとわない
- 心に響くメッセージを持っている
偉人たちが発揮してきた影響力に共通しているのは、強さや声の大きさではなく、行動や判断ににじむ「気高さ」です。ここでいう気高さとは、立場を誇示することでも、厳しさを避けることでもありません。自分が何を大切にし、どこを譲らないのかを明確にし、その姿勢を一貫して示すことです。この一貫性が、言葉に重みを与え、影響力の土台になります。
部下が安心して動くリーダーが実践する影響力の3ステップ
影響力は、コミュニケーションを通じて具体化されます。一方的に伝えるのではなく、相手の受け取り方を想像しながら言葉を選び、対話を重ねることで、影響は押しつけではなく納得として伝わります。重要なのは、上手に話すことではなく、相手の理解を前提に組み立てる姿勢です。
- 相手の受け取り方を想像して言葉を選ぶ
伝え方よりも、相手がどう理解するかを重視することで、押しつけではなく納得につながります。 - 判断基準をぶらさず、言行を一致させる
一度の発言では信頼は定着しません。行動の一貫性が確認されるたびに、少しずつ積み上がっていきます。 - 心理的安全性を整え、意見を出しやすくする
安心して意見を出せる環境が整うと、リーダーの言葉は警戒ではなく前向きな影響として受け取られます。
影響力とは、人を黙らせる力ではなく、安心して動ける前提をつくる力です。
まとめ~影響の伝わり方を整えることが組織を前に進める第一歩
影響力は特別な才能ではなく、日々の対話や姿勢の積み重ねで磨かれます。部下が動かない背景には、リーダー自身が気づきにくい「影響の伝わり方」が潜んでいます。
まずは、今日のコミュニケーションから一つずつ見直すことで、組織の推進力は大きく変わります。
リーダーのための影響力発揮研修
「影響力」は、リーダーが人を動かす上で欠かせないスキルであるとともに、いざ、それを行使しようと思うと、多くの人が気後れを感じてしまうものでもあります。
影響力の行使には責任が伴うことを理解しつつ、覚悟を持ったうえで勘所を押さえた使い方ができれば、効果的にリーダーシップを発揮できるようになります。
本研修では、「影響力」のメカニズムを理解いただくとともに、歴史上の偉人たちがどのように影響力を発揮してきたのかを学ぶことで、職場のリーダーとしての影響力の発揮の仕方を実践スキルとして身に付けていただきます。
本研修のゴール
- 影響力を行使する上で求められる品位について理解する
- 効果的に影響力を発揮するための具体的なテクニックが分かる
- 歴史上の偉人たちの影響力の行使の仕方を知ることができる
よくあるニーズ・お悩み
- 自分の言動によって人に影響を与えてしまうことにためらいがある
- 人に影響を与えるとその分責任を負うことになるので息をひそめがち
- 管理職なのに影響力を行使することをできるだけ回避しようとする人が多すぎる
セットでおすすめの研修・サービス
<熱意と覚悟のマインドセット>逆境の中でのリーダーシップ研修
限られた情報の中での決断、孤立無援の環境での信頼構築、批判の渦中での問題解決。
リーダーが直面する困難な状況は、時に理性や手法だけでは乗り越えられないことが少なくありません。こうした場面ほど、リーダーの真価が問われることになります。自分の軸をどう保ち、相手にどう向き合い、状況をどう捉えるか。つまり、困難に対峙する際の「心構え」と「姿勢」が重要になるのです。
本研修では、実在の優れたリーダーたちが逆風の中でいかに思考し、行動したのかを事例を通して学びながら、困難を突破するためのマインドセットを習得し、自分のリーダーシップの発揮に活かしていくための研修です。
(リーダー向け)リスクテイキング推進研修~部下の挑戦を促すチームづくり
リスクテイキングとは、危険かもしれない、失敗するかもしれないと思うような行動を自分の意思であえて取ることです。
リスクは悪いものと思われがちですが、変化の目まぐるしい現代においては、リスクを取るからこそ得られるリターンがあることを認識し、挑戦するしたたかさが求められます。
本研修では、リーダーに求められる意思決定力とマネジメントを学ぶことで、チームのパフォーマンスを底上げすることを目的としています。精神論や個人の資質に頼らないリスクテイキングのあり方を学ぶことで、部下のモチベーションを高め、主体的な挑戦を促すことができます。
リーダーコミュニケーション研修~部下・後輩を動かし、成果へつなげる
本研修では、リーダーに求められるコミュニケーション能力を分類し、それに沿ったケーススタディとロールプレイングを通じて実践的なスキル強化を行っていきます。
現場のリーダーや、管理職の方が日々の業務を進める中で悩みの大きなポイントに絞って学べる点が本研修の特徴です。
具体的には以下のケースを扱います。
- 部下・後輩の意識を変えるリーダーコミュニケーション
- 部下・後輩の業務遂行を支援するリーダーコミュニケーション
- 未知の業務にチャレンジするリーダーコミュニケーション
- 部下・後輩のモチベーションを高めるリーダーコミュニケーション
- 組織の接点としてのリーダーコミュニケーション





