論理的思考で差がつく管理栄養士の提案術~医師も納得するチーム医療の実践法

医療現場では、医師や他職種に対して提案を行う場面が日常的にあります。栄養プランの作成やカンファレンスでの情報提供、カルテ記載など、提案の質が患者ケアの質に直結する場面も少なくありません。
本コラムでは、こうした場面で求められる「論理的思考力」の重要性と、現場で活用するための具体的な方法についてご紹介します。
伝わる提案の作り方~管理栄養士が陥りやすい失敗と根拠を示す技術
オペや回診、診察、外勤など忙しい医師の時間の合間を見つけて栄養プランを提案する際、伝えたいことがまとまらず意図が伝わりきらなかった経験はないでしょうか。また、カルテ記載で「どういった意図でこの内容を記載したの?」と指摘を受けたことはありませんか。
こうした状況の原因は、提案が感覚的で曖昧になっていることが多いです。医師や他職種は限られた時間の中で意思決定を行うため、情報が整理されていない提案は伝わりにくくなります。
ここで重要になるのが論理的思考力です。論理的思考とは、情報を整理し、因果関係や優先順位を明確にしたうえで筋道を立てて伝える力を指します。論理的思考を意識することで、提案の根拠が明確になり、相手の納得感を得やすくなります。
患者の命を支える栄養プラン作成術~提案力でチーム医療を動かす
入院患者の治療プランは医師が立てますが、栄養には未介入でこのままでは低栄養で予後不良、命に危機が及ぶことがあります。その際、数多くの情報から栄養プランを立て、多職種と共有して忙しい医師に提案する難しさにぶつかることかと思います。
論理的思考を用いることで、情報を整理し、課題を明確化し、根拠ある提案を構築することが可能です。医師や他職種に対して提案する際も、感覚的な表現や曖昧な言い回しではなく、因果関係や優先順位を明確に筋道立てて伝えることが重要です。これにより、提案の意図が伝わりやすくなり、チーム医療の質向上につながります。
栄養プラン作成で使える論理的思考のステップ~現場での具体例
栄養プランの作成では、患者の状態や生活背景、検査データなど多くの情報をもとにアセスメントしプランを立てます。これらを論理的に整理することで、より実効性の高いプランを立てることができます。
1.情報の収集と分類
主観的情報と客観的情報に分けて整理します。
- 主観的情報(患者の訴え、家族からの情報など)
例:「おなかが痛い」「痩せてきた」「2週間ご飯を食べていない」 - 客観的情報(身体所見、検査値、観察所見など)
例:「BMI 11kg/m²」「Pi 1.8 mg/dL」「静脈栄養 酢酸リンゲル液(ブドウ糖加)500mL」
2.課題の抽出
情報から、状態をアセスメントし患者様にとっての課題やリスクを明確にします。
- 先週からご飯を食べていないからリフィーディングシンドロームの恐れあり
- 必要栄養量:○○㎏×25kcal=○○kcal/day
- 現在の摂取栄養量:○○kcal
3.提案の構築
課題に対して、どのような対応が必要かを根拠とともにプランを提示します。
- リフィーディングシンドロームの恐れがあるため体重㎏×10kcalの栄養から開始
- 輸液を酢酸リンゲル液(ブドウ糖加)500mlからアミノ酸・糖・電解質・ビタミンB1液 500mlへ変更
- 輸液にリン酸Na補正液0.5mmol/mLの追加
4.伝達方法の工夫
医師や他職種に伝える際は、簡潔かつ論理的な構成で話すようにします。
「○○様の栄養プランについてご相談です。リフィーディングシンドロームの恐れがあるため、少ない栄養から開始し徐々に栄養増量させていただければと思いますがいかがでしょうか。詳しくはカルテに栄養プランを記載いたしましたのでご参照ください。」
多職種を動かす論理的提案~伝達の質を高める思考整理術
カンファレンスでは、複数の職種が集まり、患者の方針を検討します。ここで論理的に情報を提供することで、多職種の理解が深まり提案の採用率も高まり、チーム医療の質向上につながります。
また、カルテ記載においても、論理的な記述は他のスタッフも理解しやすく、情報共有の精度を高めます。
医療現場では、管理栄養士が患者の命に関わる重要な提案を行う機会が多くあります。だからこそ、限られた時間の中で医師や多職種に納得感のある提案を行うには、論理的思考力が不可欠です。
本コラムでは、情報の整理から課題の抽出、根拠ある提案の構築、伝達方法の工夫まで、提案力を高める具体的なステップを紹介しました。情報を整理し、因果関係や根拠を明確にすることで、提案の意図が伝わりやすくなり、論理的にアプローチすることで、チーム医療の質を高め患者ケアの改善につながります。
ロジカルシンキング研修~納得を引き出す論理的な伝え方(2日間)
2日間にわたってロジカルシンキングの基本と活用法を習得する研修です。
1日目はロジカルシンキングの基本概念と使い方を学びます。2日目はビジネスにおいてロジカルな伝え方が必要な場面を想定し、相手の納得を引き出す伝え方を身につけます。
ワークでは、文字情報をわかりやすく図解化する、PREP法を使って1分間で説明するなど、仕事に役立つ技術を磨きます。
本研修のゴール
- 情報を論理的に整理することができる
- 相手が納得できる簡潔な文章を書ける
- わかりやすく順序立てて話せるようになる
よくあるお悩み・ニーズ
- 自分の考えや情報を整理するのが苦手
- 伝えたいことを短い時間で伝えられない
- 相手に納得してもらえる提案書や報告書を作れるようになりたい
セットでおすすめの研修・サービス
分かりやすい説明の仕方研修~言いたいことを簡潔に伝える
分かりやすい話し方には、型があります。分かりやすくなる構造を理解すれば、誰でも「言いたいことを簡潔に、相手に分かりやすく説明する」ことができます。
そのため、本研修ではまず論理的思考を鍛え、話す内容を整理できるようになっていただきます。
また、話の構造を視覚化することにより、「分かりにくい話」と「分かりやすい話」の違いを理解していただきます。学んだスキルをワークで実践しながら、説明力を高めていただけます。
提案書の作り方研修
提案書作成をステップ化し、それぞれのステップに必要な要素を各章を通して学びます。提案とはどんなものかを考えた上で、情報整理の基本となる思考法、実践的な手法を確認していきます。
また最後は、身近な題材を用いて実際に提案書作成を行い、各グループから発表を行います。演習に多くの時間を割いて提案書を作りこんでいくことで、研修で学んだ様々なポイントを実践することができます。
タイムマネジメント研修~仕事を効率的に進めるための時間管理を学ぶ
限られた時間の中で業務効率を高め最大限の成果を上げるための方法を、PDCAサイクルに沿って習得する研修です。
1日のスケジュールを振り返ることで自身のワークスタイルを分析し、現在の課題をご認識いただきます。
そして業務を効率的に遂行するための計画の立て方、優先順位のつけ方、効率の良い仕事の仕方を習得いただきます。




