【仕事の任せ方のコツ】部下のスキルが足りないと感じたら~タスクを切り分ける「プロジェクト思考」で解決する

「部下に頼んだ仕事が、思った通りに進まない」「この仕事を任せたいけれど、今の部下のスキルでは難しい」などと感じることはありませんか。
部下にいかに仕事を任せられるかは、チームの生産性を左右する重要な問題です。うまくいかない原因の一つは、任せたい仕事のレベルと部下のスキルが釣り合わないことです。
部下にとって「進め方がわからない仕事」はタスクを切り分けて依頼する
「仕事のレベル」と「部下のスキル」のミスマッチは、タスクを効果的に切り分けることで解決します。うまくタスクを整理し、「部下のスキルですすめられる仕事」を任せることが重要です。
特に部下にとって初めての業務では、仕事の進め方について道筋を示す必要があります。たとえば、「何から始めればいいかわからない」と部下の手が止まってしまうような場合です。タスクを切り分け、段階的に依頼していくことで、部下は迷わず仕事を進められるようになります。
タスクの切り分けは「全体像を描くこと」から始まる
タスクを切り分ける際に最も重要なのは、「全体像を把握する」ことです。目の前の作業だけに注目すると、抜けや重複が生じ、依頼内容が曖昧になりがちです。まずは、次のようなステップで整理してみましょう。
- 目的を明確にする
最終的に何を達成したいのかを言葉にします。たとえば「来期の営業方針を共有する会議資料を作成する」など、ゴールを具体的に定義します。 - 成果物(アウトプット)を特定する
ゴールに対して、どんな成果物が必要かを洗い出します。資料・報告書・プレゼン内容など、形に残るものを明確にします。 - 工程を分解する
成果物を作るためのステップを順に並べ、どの段階で誰が関わるかを整理します。このとき、タスクを粒度のそろった単位に分けておくと、依頼や進捗確認がしやすくなります。
大きなタスクは「プロジェクト」として捉える
大きなタスクを部下に任せるときは、一つの作業ではなく「プロジェクト」として捉えると整理しやすくなります。
部下1人で完結できない仕事や、複数部署が関わる業務を、プロジェクトとして捉える視点が有効です。このような仕事は工程レベルで分解しづらく、任せる先もベテランやリーダー層などが多いため、細かく指示するとむしろお互いの仕事が増えてしまいます。指示が抽象的になるにつれ、部下は、「何をどこまでやればよいのか」「自分の判断で進めてよいのか」がわからず、不安を感じたり、行動をためらったりする傾向があります。
仕事の任せ方においても、プロジェクトマネジメントの手法が参考になります。プロジェクトマネジメントでは、「スコープ(Scope)」という概念が重要です。スコープとは、「どこまでをやるか」「何をやらないか」という範囲を定義することを指します。仕事を依頼する際にスコープを明確にしておくと、認識のズレを防ぎ、成果物の品質を一定に保てます。
たとえば、「アンケートを集計して報告書をまとめる」という依頼では、
- そもそも集計対象は誰なのか、何件か、それらは決まっているのか、これから決めるのか
- アウトプットはグラフ化まで行うのか、それとも文字と表だけでよいのか
- 報告書のフォーマットを誰が作るのか、もしくは過去のものを流用するのか
- 報告書を作ったのち、プレゼンを行うところまでの依頼なのか、報告書を作るのみで良いのか
などをあらかじめ決めておくことが、スコープを定義することにあたります。
依頼の精度を高める3つのポイント
タスクを切り分け、スコープを明確にしたうえで、以下の3点を意識して依頼すると効果的です。
- 目的と背景を共有する
「なぜこのタスクが必要なのか」を伝えることで相手の理解度とモチベーションが高まります。 - 期待する成果と期限を明確にする
「どの水準で・いつまでに」完了すべきかを具体的に伝えると、受け手が動きやすくなります。 - 進捗確認の仕組みを作る
完了時ではなく、途中段階で確認できるポイントを設けておくと、修正がしやすく、全体の効率も上がります。
これらを習慣化すると、依頼の精度が上がるだけでなく、部下やチームメンバーの自律的な行動も促すことができます。
スコープの考え方を日常業務に活かす
スコープの明確化は、特別なプロジェクトや部下への指示だけでなく、日々の業務改善にも役立ちます。たとえば、会議の運営や社内イベントの準備なども、
- どこまで自分が担当するのか
- どの部分を他部署に依頼するのか
を明示することで、無理やムラのない仕事の進め方が可能になります。こうした「プロジェクト思考」を日常に取り入れることで、適切な業務分担が行われます。
タスクを適切に切り分けて依頼する力は、自分一人の業務スキルではなく、チーム全体の生産性を高めるために必要となります。プロジェクトマネジメントの手法やスコープの考え方を参考に、日常の仕事を小さなプロジェクトとして捉えてみましょう。
仕事の任せ方レベルアップ研修~部下の不安を軽減し、権限委譲を進める
仕事の任せ方レベルアップ研修では、部下が仕事を難しく感じるポイントをおさえ、効果的な任せ方を学びます。実践的な演習を通じて、タスクの分解やスコープ設定のポイントを学ぶことができます。
本人が難しいと感じる仕事でも、取り組むことで、その経験が成長につながることは言うまでもありません。上司・リーダーであるみなさんはそのことを踏まえ、部下の不安を受け止めつつ支援していく必要があります。
よくあるお悩み・ニーズ
- 大口案件や新プロジェクトなど、部下が受けづらそうな仕事は依頼しにくい
- 今の部下にとっては難しい仕事でも、今後のために任せていきたい
- 管理職に部下への権限委譲をもっと進めさせたい
本研修の目標
- 難しい仕事を任される部下の心情を理解する
- 部下が取り組んでみようと思える、仕事の任せ方を身につける
- それぞれの部下に適したマネジメントで、部下を自走させられるようになる
セットでおすすめの研修・サービス
仕事の任せ方研修~自分でやった方が早いを克服し、部下の成長を促す
「自分でやった方が早い」という考えを克服し、部下育成につながる仕事の任せ方を学ぶ研修です。
任せるメリットを理解し、仕事選定・人選・意欲を引き出す方法を体系的に習得します。演習で任せる仕事の整理から伝え方まで実践力を高め、職場で即活用できるスキルを身につけます。
生産性向上研修~明確な指示で、部下のパフォーマンスを高める
日本の誇る「かんばん方式」をマネジメントに応用し、組織の生産性向上をはかる研修です。自部署の資源を最大に活かし、限られた時間の中で、部下の仕事をきちんと成果につなげるための施策を学びます。
気合と根性による生産性向上ではなく、「理」に基づいたマネジメントの仕方を学びます。
管理職向け意識調査(人材アセスメントサービス)
課題発見・戦略思考・部下育成などの管理職層に必要なスキルをどの程度意識できているか、自己評価により見える化します。
この調査結果は、管理職を中心とした全社の人材育成体系・人事評価制度の見直しに活用することもできます。


