シニアの戦力化が組織の未来を拓く~「期待」を明確に伝えることの重要性

労働力不足が深刻化する中、企業は即戦力となる人材の確保に苦慮しています。一方で、生成AIの急速な普及や業務のデジタル化が進み、働き方の変化に対応するためのリスキリングが求められる時代となりました。
こうした環境下で、シニア層の「経験知」が再評価され、単なる人手補完ではなく、組織の持続的成長を支える重要な戦力として注目されています。
特に役職定年を迎えた人材が、どのように働きがいを再構築し、ライフステージに応じた働き方を選択しながら、組織に貢献していくかは、多くの企業にとって重要な課題です。組織がシニア層に対してどのような期待を持ち、それを明確に伝えるかが、活躍の鍵を握ります。本コラムでは、役職定年後の働き方と意識転換、そして家族や生活背景を踏まえた働き方の工夫について、個人と組織がそれぞれ準備すべきことを考察します。
役職定年後に生じる変化とライフステージに応じた働き方の課題
役職定年を迎えると、業務の裁量や情報量が減り、これまでの働き方とのギャップに戸惑うことがあります。自分で業務を采配していた立場から、指示を受けて動く立場へと変わることで、働きがいを見失うケースもあります。
年下の元部下が上司になることに意識が変わらないと指摘されることがありますが、実は周囲が「元上司」をプレイヤーとして扱うことに躊躇している場合もあります。情報量の減少、意思決定や判断階層の変化もあり、提案したことの承認までの回数が増えるという、考えてみれば当然の変化にも気づかされます。こうした小さな変化が、ストレスとして積み重なっていく可能性があります。
シニア層の働き方は、家庭の事情や健康状態、介護などの生活面の制約により、フルタイム勤務や長時間労働が難しくなることもあります。こうした背景を踏まえた働き方の設計が、安定した活躍につながります。
働き方やキャリアの選択肢として、転職を選ぶケースもあります。組織はこれを「人材流出」と捉えるのではなく、個人のキャリアを支援する姿勢で向き合うことが重要です。制度や体制の整備に加え、上司や周囲の理解を促進することで、円滑な移行と組織成長につなげることができます。
【個人編】「次のステージ」で輝くための意識転換と基盤づくり
キャリアの棚卸しを行い、自分の強みや経験を再確認することが、再スタートの第一歩になります。過去の実績を振り返ることで、今後の役割や貢献の方向性が見えてきます。
プレイヤーとしての意識転換を図ることも重要です。管理職から一メンバーとして働くことに抵抗を感じるのではなく、チームの一員として支える姿勢が求められます。
健康管理や生活設計を見直し、働き続けるための基盤を整えることも欠かせません。家族との対話を通じて、働き方の希望と制約を共有することが、安心して新しい環境に踏み出す支えになります。
【組織編】シニアの意欲と能力を最大限に引き出す環境整備
役職定年後の役割を明確にし、期待値を共有することが、本人の不安を軽減します。曖昧な立場ではなく、具体的な業務や責任を提示することで、安心して業務に取り組める環境が整います。
役職定年となる直前ではなく、早い段階から意識転換を促す研修や対話の場を設けることで、本人の気づきを促し、周囲との関係性も円滑になります。特に、年下の上司との関係構築には組織的な支援が有効であり、双方の理解を深める機会が必要です。
柔軟な勤務形態(時短、在宅など)の導入や、家庭事情に配慮した相談体制の整備も重要です。ライフキャリアを支援する制度や研修の提供は、シニア層の意欲を引き出す鍵となります。
シニア層の戦力化でお悩みの企業様へ
教育体系の構築や人材育成戦略の設計を支援する「インソースコンサルティング」では、人材活用を前提とした組織づくりを支援しています。制度設計や研修体系の整備など、現場に即したコンサルティングサービスをご提供しています。
シニア層・ベテラン向け研修
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シニア人材の活用促進に関する調査報告
施策立案に向けた、自組織の現状を把握するための調査やアンケート結果の分析は、株式会社インソース総合研究所にお任せください。
シニア人材の活用促進に関する調査報告 <シニア個人(アンケート)編>
「シニア人材の活用促進に関する調査」第一弾のシニア個人編です。シニア個人のマインド面から、シニアの人事・賃金制度等の雇用実態、シニア自身の意識・モチベーション等を調査することで、シニアの問題意識の特定と解決の方向性を明らかにします。
この結果は、次に予定している人事担当者への調査と合わせて、今後のシニアの人材戦略や制度設計に資することを目的としています。
シニア人材の活用促進に関する調査報告<人事担当者(アンケート)編>
「シニア人材の活用促進に関する調査」第二弾の人事担当者編です。これらをあわせて、今後のシニアの人材戦略や制度設計に資することを目的としています。
少子高齢化が進行する中、企業における持続的な成長と人材確保の観点から、シニア人材の活用がますます重要と言われています。2025年4月からは改正高年齢者雇用安定法も施行される中で、継続雇用の延長について企業は、就業確保措置を講じているものと想定されます。しかし一方で、その運用や実態においては課題が多いという意見も聞かれます。


