レジリエンスの基本~偏った思考を内省して感情を育てる

レジリエンスの基本~偏った思考を内省して感情を育てる

前回は、レジリエンスの基本と、ABCDE理論についてみてきました。今回は、実際に、偏った思考のタイプを確認していきます。タイプ別のABCDE理論を知ることで、自分の思考パターンや、思考が偏る原因を知ることができます。

例えば、疲れている時や、イライラして思考が偏った場合に、どんな思考に陥りがちかを知り、どのように冷静で適正な思考に修正していくかということです。偏った思考を内省して適正なものに修正する行動を繰り返すことで、適正な思考が定着していきます。思考が偏りそうになることに気づき、修正する力をつけていくことで、「困難にぶつかっても、しなやかに回復し、乗り越える力」であるレジリエンスを育みます。

1.ものの見方の偏りのタイプとその回避策

①拡大解釈

■特徴
良くも悪くも自分が関心の高いことに引き寄せて、自分の都合の良いように、極端な結論を出してしまう

■ABCDE理論

■求められる行動
このタイプは、極端な反応をしてしまうことにより、適切な判断・行動ができません。例えば、上記の例のように、自分の気にしていることに関して、他の人の発言が聞こえたとします。すると、自分に向けられたものでなくても、自分を非難しているように感じてしまいます。また逆に、人の意見を自分に都合良く解釈する、我田引水的な傾向もあります。

こうした偏った思考を修正するために求められる行動としては、なぜそう考えるのか、その原因をもう一度冷静に考えてみることです。相手の言葉に過剰に反応することは、自分がそのことに対して関心が高いということと同義であることを素直に認め、その問題に勇気をもって向き合うことが必要です。

※類似の思考の偏り
・All or Nothing(白黒思考):何でも白黒つけようとする。「灰色」は一切認めない

②個人化

■特徴
自分に関係のないことでも、勝手に自分事としてしまう

■ABCDE理論

■求められる行動
このタイプは、何か良くないことがあると、自分を責めて落ち込んでしまう傾向があります。真面目な人に起こりがちで、問題が起きると、自分のせいだと即断してしまいます。すぐに自分一人で答えを出さず、上司や先輩、同僚などに幅広く意見を聞いて、情報を増やしてから冷静に判断し、発言・行動をするようにします。

※類似の思考の偏り
・感情的決めつけ:自分の感じていること、考えていることを、現実・事実と取り違える
・早とちり:事象に対し、自動的に反応すること。適切なデータなしに間違った仮説を作ってしまう

③外面化

■特徴
先ほどの「②個人化」と全く逆。何か間違いがあるたびに他人のせいにする

■ABCDE理論

■求められる行動
このタイプは、いつも何かに不安を抱えており、怒りっぽい傾向があります。被害者意識が強く、「いつも誰かが余計なことをしてくる、誰か(何か)が邪魔をしてくる」と思ってしまうのが外面化の特徴です。誰か・何かのせいにするのは自分に自信がないことの裏返しです。自分と真正面から向き合い、自分の真の能力や弱点、課題が明らかになることを恐れず、問題の真の原因を突き詰める勇気を持ちましょう。

④視野狭窄(しやきょうさく、視野が狭くなる)

■特徴
一つの良くないことが気にかかり、くよくよ考え現実が見えなくなる。否定的な部分に意識を集中させてしまう傾向がある

■ABCDE理論

■求められる行動
このタイプは、視野が狭くなると、その狭い範囲内で物事を見て、マイナス思考により現実をゆがめて判断します。その結果、気分が落ち込んだり、自分の感じ方だけですべてを悪い方向へ判断してしまう傾向があります。 「③外面化」と同じく、自分の真の能力や弱点、課題が明らかになってしまうという恐怖に負けず、全体的な視点で物事を捉え、真の原因を洗い出し、課題は何かを突き詰める勇気をもつことが必要です。

⑤レッテル貼り(アンコンシャス・バイアス)

■特徴
物事の特性を偏って判断してしまう

■ABCDE理論

■求められる行動
このタイプは、アンコンシャス・バイアスにより、他人に対して、偏った見方から勝手なレッテルを貼ってしまいがちです。早計な結論を出してしまったり、良く調べないで判断してしまう傾向にあります。安易に決めつけず、事象そのものや、その人個人をしっかりと見て判断し、発言したり、行動する必要があります。

※類似の思考の偏り
・一般化のしすぎ:ある特定の事柄をすべてに当てはめようとする/ある特定の事柄ですべてを説明しようとする
・べき思考:勝手に「~すべき」「~すべきでない」と考える。合致しないと自己嫌悪に陥る

2.レジリエンスは一日にしてならず~思考の偏りと繰り返し向き合い、柔軟な思考を育む

様々な思考の偏りを知り、出来事を多面的に捉えることができるようになると、非合理的なBに対する反論がアラートのように浮かぶようになります。PCのミス操作をしたときにピコンと現れる、あのアラートのように。

「ちょっと待って!!その考えは偏ってない?」とアラートが浮かぶようになれば、様々な判断軸で物事を考え、冷静に検証して動くことができるようになります。

ネガティブな思いに囚われ落ち込むことが減り、建設的で生産的な考えに切り替えられるようになると、回復も早まります。これがレジリエンスです。

分析が難しい時は

とはいえ、困難や逆境の場面に対面した時、反射的に反応してしまうのは人間の本能です。そうやって緊急事態を回避することもあるからです。

困難や逆境に直面し思考が停止してしまったら、呼吸法などのメンタルタフネススキルを活用してまず落ち着きましょう。落ち着いたら、起こった出来事をABCDE理論で分析します。

「このような考え方をする自分が悪い」と捉えるのではなく、「自分には、外面化してしまう傾向がある」「自分には、自分に原因があると考えがちな個人化の傾向がある」と、陥りやすい思考の偏りに気づくことがレジリエンスの第一歩です。

ABCDE分析を繰り返していると、長い間に築きあげられた自分のものの見方のクセによって、自分で自分を追い込んでいることに気づきます。 偏った思い込みがいかに体力と気力を消耗させ、問題解決能力を下げるかに気づくと、非合理な考え方を手放せるようになるでしょう。

また、ABCDE分析をする際は、頭の中で考えるだけでなく、先にご紹介した枠組みを利用して、紙に書き出すようにしましょう。 「今回は、偏ったB(ものの見方)ではなくD(異議)まで考えたので上手くいった」「B(ものの見方)の偏りに早い段階で気づけて冷静に対処することができた」など、小さな成功体験を積み重ねることにより、自分の思考の引き出しが増え、どんどん考えが柔軟になっていきます。

様々な視点からの解を考えられるようになると、問題に立ち向かう自信もつき、楽観性が強化され(楽観的で、どのような困難・挑戦でもそれに立ち向かうことができるようになり)、レジリエンスが高まります。

【例】
・すべてを自分中心で考える傾向があった。原因は自分にあり、自分を責めがちだった
→すべて自分が原因というわけでもない、と考えられるようになった
→自分以外の原因に目を配れるようになった

3.新しい思考パターンを増やしていく

さらに、ABCDE分析をすることで、偏った思い込みを手放し、感情的・衝動的な結果を防ぐだけではなく、新しいものの見方を獲得することができます。

ABCDE分析を成功体験の振り返りに使う

人は、トラブルやストレスになるような面倒が起きた時は「なぜ」「どうして」そうなったかを考えますが、反対に、上手くいったときには意外と「なぜ?どうして?」は考えません。ABCDE分析を繰り返すうちに、上手くいった、または、トラブルやストレスを前よりも感じなくなった時こそ「なぜ」「どうして」を考えてみましょう。

上手くいった経験は、自分に相性の良い考え方であるので、問題の内省だけでなく、こうした成功経験を積み重ねて、自分の思考パターンをさらに増やします。

B(ものの見方)がいかに個人的で、偏ったものかに気づくようになると、自分と同じように、他者にも偏ったものの見方や思い込みがあると共感できるようになるでしょう。他者に対する引き出しが増えることは、顧客や部下の話を聴く際にも役立ちます。

4.まとめ

自分で自分を立て直すレジリエンス力が高くなると、たとえ失敗したとしても、それを次への糧として受け容れる、おおらかさ、寛容さ・冷静さが身につきます。失敗を受け入れられるようになった自己に対して、信頼が生れます。

出来事は解釈次第で変わることを体得できると、失敗に対する解釈も変わります。 今まで失敗と思っていたことが、視野を広げるチャンス、前向きなチャレンジであるとポジティブに捉えられるようになり、選択肢が増えていきます。考え方の引き出しが増えることで、経験が深まっていきます。 あいまいで不確実なVUCAの時代において、失敗を経験に変え、体勢を立て直しながら進む姿が求められています。柔軟なものの見方により発揮される、しなやかな精神力を育んでいきましょう。

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