若手の早期離職は「静かな孤立」が原因。答えを教えず成長に伴走する、メンターの正しい役割と6つの注意点

若手社員の早期離職は、ある日突然起きる出来事のように見えて、実際には静かに進行していた孤立の結果であることが少なくありません。この「見えにくい離職の予兆」に対して、重要な役割を果たすのがメンターです。
本記事では、若手社員の早期離職や孤立を防ぐメンターの重要な役割とその注意点を解説します。
メンターとはなにか~答えを教える人ではなく、考え続けられる相手
メンターとは、業務を直接教えるOJT担当者でも、評価を下す上司でもありません。メンティが安心して本音を出し、自分の考えを整理できる「よき相談相手」です。
あるメンター面談での、実際のやり取りです。「最近どう?」「⋯⋯特に問題はないです」少し沈黙が流れた後、メンターがこう聞きました。「この話、上司には話しづらいとしたら、それはどんな点だと思う?」すると若手は、少し驚いた表情をしてから、こう答えました。「正直、できていないって思われるのが怖いです。期待されているのが分かるから」この瞬間、面談の空気が変わりました。評価される場では出てこなかった本音が、初めて言葉になったのです。
メンターの役割は、正しい答えを与えることではありません。安心して「迷っていい場所」をつくることです。
なぜ若手は辞めるのか~成長実感と成長予感の欠如
入社3年以内の若手が離職を考える理由として多いのが、「自分が成長しているのか分からない」、「このまま続けて、将来どうなるのか見えない」という感覚です。さらにそこに、「迷惑をかけているのではないか」、「こんなことで相談していいのだろうか」という罪悪感が重なります。結果として、誰にも本音を話せないまま、静かに心が離れていきます。
成長実感を見える形にする~声かけ一つで行動が変わった瞬間
ある若手社員は、「自分は周囲の足を引っ張っている気がする」と話していました。業務自体はこなしているものの、自信が持てず、発言も控えめでした。そのときメンターがかけた言葉は、とてもシンプルでした。
「先週の資料、前より『伝えたいポイント』がはっきりしていたよね。あれ、意識してやった?」。若手は少し驚いたあと、「実は、前に言われたことを思い出して作りました」と答えました。それ以降、その若手は資料作成のたびに意図を説明するようになり、会議でも発言が増えていきました。大きな指導や評価ではありません。成長している「変化」を言葉にして返しただけです。
メンターは、成長を与える存在ではなく、成長に本人が気づく手助けをする存在なのです。
メンターがやりがちな6つの失敗例
失敗1.「良かれと思って」話をまとめてしまう
メンティの話が長くなると、メンターが途中でこう言ってしまうことがあります。「つまり、〇〇が一番困っているんだよね」、論点を整理したつもりでも、メンティ側は「まだ言いたいことがあったのに」、「そこが一番ではない」と感じていることがあります。特に若手は、自分の感情を言葉にする途中段階にあります。メンターが先回りして整理してしまうと、思考や感情の「芽」を摘んでしまうことになりかねません。うなずきや相づちで待つことも、立派な支援です。
失敗2.「自分の若い頃はね」と経験談が長くなる
共感しようとして、自身の若手時代の苦労話を語り始めるケースも多く見られます。「自分も昔は失敗ばかりでさ」「それに比べたら、今は環境も整っているよ」メンターとしての誠意から出た言葉でも、メンティには「比較されている」「自分の悩みが軽く扱われた」と受け取られることがあります。経験談は、相手が求めたときに、短く添える程度が効果的です。
失敗3.沈黙に耐えきれず、質問を重ねてしまう
メンティが黙り込むと、不安になって次々と質問を投げてしまうことがあります。「どう思っているの?」「何が一番大変?」「じゃあ、次はどうする?」、しかしその沈黙は考えている時間かもしれません。言葉を探している最中に質問を重ねられると、メンティは思考を中断させられてしまいます。沈黙は無駄な時間ではなく、対話が深まる前兆でもあります。
失敗4.「それは違う」と正しさを優先してしまう
事実誤認や極端な思い込みに対して、「それは違うよ」、「考えすぎだと思う」とすぐに訂正してしまうこともあります。論理的には正しくても、感情が追いついていない状態では、メンティは「分かってもらえなかった」と感じます。まずは、「そう感じるくらい、追い込まれているんだね」と感情を受け止めることが、結果的に冷静な対話につながります。
失敗5.「頑張っているね」と抽象的にほめてしまう
メンターはメンティを励まそうとして、「よく頑張っているよ」、「大丈夫だよ」と声をかけがちです。しかし抽象的な言葉は、成長実感につながりにくく、かえって「何が評価されているのか分からない」状態を生みます。「先週より、相談のタイミングが早くなったよね」「報告の順番が分かりやすくなった」など、行動レベルでの具体化が重要です。
失敗6.メンター自身が「役に立たなければ」と焦ってしまう
メンターは「何かを与えなければいけない」「時間を無駄にしてはいけない」と感じがちです。その焦りが、助言過多や結論急ぎにつながります。しかしメンティにとって価値があるのは、答えをもらうことではなく、考え続けられる安心感です。「今日は答えが出なくても大丈夫」、この前提をメンター自身が持てているかが問われます。
メンターをつけることで生まれる成果
適切に機能するメンター制度は、次のような成果を生みます。若手社員が、「できていない自分」ではなく「少しずつ前に進んでいる自分」に目を向けられるようになります。結果として、
- 相談の早期化
- 小さな離職予兆の察知
- 職場への心理的な定着
につながっていきます。これはメンティだけでなく、メンター自身にとっても、人を育てる視点・聴く力・関係性を築く力が磨かれるという大きな価値があります。
若手の離職を防ぐために、メンターがやるべきこと
若手の早期離職を防ぐために、メンターがやるべきことは明確です。
- 答えを出さない
- 評価しない
- 急がせない
その代わりに、
- 感じていることを言葉にする手助けをする
- 変化を見つけて伝える
- 「ここにいていい」と感じられる関係をつくる
メンターとは、成長を管理する人ではなく、成長に伴走する人なのです。
メンター研修~メンティのよき相談相手となる
新入社員や後輩のよき相談相手となるべく、メンターとしての役割や心構えを認識し、必要なコミュニケーションスキルを習得していただきます。
<研修のポイント>
- OJT、コーチングとの違いを踏まえ、メンターの役割と心構えを学ぶ
- メンティとの信頼関係を築くために重要なコミュニケーションスキルを学び強化する
- ケーススタディを行い、実践的な場面に適した対応を身につける
<ワークのポイント>
- メンティの相談を受ける際に必須である、話しやすさを感じる「聴く」と、真意を引き出す「訊く」のスキルが身につく
- 信頼関係を築くために重要なフィードバックやほめ方を具体的に練習できる
- 研修の終わりに、ケーススタディを通してメンターとしての適切な対応を考えていただく
本研修のゴール
- メンターの役割と心構えをきちんと理解する
- メンターに求められるコミュニケーションスキルを身につける
よくあるお悩み・ニーズ
- メンターに任命されたが、具体的に何をすればよいのか分からない
- OJT担当者とメンターの役割にはどのような違いがあるのか分からない
- メンティの悩みや不安を寄り添いながらききだす方法を身につけたい
セットでおすすめの研修・サービス
後輩サポート力研修~「頼れる先輩」に求められる3つのスキル
長い社会人人生では、その多くの時間を誰かの先輩として過ごすことになります。後輩指導を特定の育成担当者に任せきりにせず、全ての先輩が主体的に携わるようになれば、チーム全体の成長スピード向上や広い視野の獲得、離職防止など多くの効果が期待できます。
後輩の広い意味での社会人生活をあたたかくサポートする「先輩力」を高めるために、本研修では、①ティーチング(上下関係)②メンタリング(斜めの関係)③モチベート(横並びの関係)の3つのスキル・立ち位置を活用し、臨機応変に使い分けられるようになることを目指します。
(人事担当者向け)メンター制度導入による社員育成を考える研修
人事担当者の方がメンター制度を効果的に運営するための講座です。メンター制度を運営するために知っておかなければならない3つの役割(調整的役割・相談窓口・推進者)を理解していただきます。
加えて、制度の構築・良いマッチング・継続的なコミュニケーションなどを学び、総合演習を通じて、自組織の課題解決にお役立ていただけます。
(半日研修)メンターフォローアップ研修
メンタリングの実践力を高めるフォローアップ研修です。メンターとして対応しづらいメンティの様子や相談内容を想定したケーススタディに取り組み、実践力を磨きます。
最後には、自身の課題に対して今後どう活かすかを整理し、業務への定着を目指します。




