業務改善研修を語る

業務改善研修を語る


業務改善は社員全員が主体的にやっていくべきこと


業務の改善点を社長が指摘して、それを社員たちに行わせることは簡単です。しかし「業務改善」は、社員全員が「意欲」を持って、自ら組織を動かし、少しずつやっていくべきものなのです。「社員一人ひとりが小さな流れを作り、それを大きな流れにしていく」。最初は「一個人の考え」であったものを、「組織の総意」へ変えることができれば、組織は良くなっていきます。


社長や管理職の方がアドバイスすることで、社員のみなさんが自分たちで気づきながら「業務改善」を行っていくためには、どのようにすればいいのでしょうか。


(「商工にっぽん」2007年9月号掲載 弊社取締役:大島の原稿を再編集したものです)


現場の"常識"と外部の常識を考える


私は大学卒業後、銀行に勤めていました。最初は支店の窓口でお金を数えるのが仕事でした。その当時は、まだお札を手で数えていました。ご覧になったことがあるかもしれませんが、お札を扇状に広げて数えるあの方法です。カッコイイのですが、覚えるのに時間がかかりますし、数えるだけなら、機械のほうが断然ハイスピードです。ただ、銀行内には手で数えるほうが「正確」かつ「早い」という"常識"がありました。ですから、新人は夜遅くまで数える練習をしていたものです。


当然ながら現在では、ほとんどの金融機関で、機械でお札を数えることが主流になっています。確実性を増すため、機械で2回数えることで、「正確で早い」を実現しています。銀行以外の常識では、機械のほうが「正確で早い」ことは当たり前ですが、現場で「常識」だと考えていることが、それ以外の場所では非常識ということが往々にしてあります。「外部の常識」と「現場の常識」を日々、照らし合わせることが業務改善の大きなヒントになります。


連続処理は「機械化」のチャンス


また、もう一つここで得られるヒントは、「プチ機械化のすすめ」です。当たり前に行っている現場の業務を、前述の例のように一部を機械化したことで、劇的に効率が向上することがあります。当たり前ですが、同じ仕事や処理を連続して行うことには、人間よりも、機械の方が圧倒的に向いています。人間が行う作業時間を10分の1にまで短縮することも可能です。ただ、システム化には、社内・職場の抵抗がつきものです。先ほどの「手でお札を数えたほうが正確で早い」という話と同じく、現場のベテラン社員が長年やってきた仕事などは、機械化への抵抗が激しく、業務改善の対象とならないことがあります。


"分業"の不経済もある


"分業"は「単純」「大量」の作業を効率化するためには有効です。しかし、良いことづくめではありません。実は"分業"が引き起こす不経済は随所に見られます。実際、"分業"は、工程が短い業務や複雑な業務には不向きです。それは作業分担する際に伝達・調整に多くの時間を割かないと正しく分業できないからです。さらに、責任の所在が不明確になり、分業者の仕事に対する責任感も希薄化します。実際に仕事をしている現場社員自身も、「昔から決まっているので分業しているが、自分で全部やるほうが早い。人に仕事を回すのは嫌」とか、「どうせ、またこちらに戻ってくる」と考えている場合があり、"分業"の見直しも業務改善の大きなポイントとなります。

まれな業務は"集約"すべき


(1)まれな業務を集約化する

"集約"といえば、一般に、大量の業務を集約することが多いですが、1ヵ月に1、2日しか行わない"まれな"仕事を集約することでも業務効率がアップします。また、各部署で同じような仕事があれば、それを集約して一定の仕事量を確保し、その仕事を専門の部署が特化して行うことでも業務が効率化します。社内全体でそのような仕事がないか、洗い出しを行ってみるのも良いかもしれません。


(2)集約化で新規事業!

業務を集約化すると、事務コストや人件費が下がります。また"集約"を行うと、コスト削減が図れると同時に、自社の新規事業や新ビジネスになることがあります。たまにしかやらない仕事は、同業他社をみても同じ状況です。それを専門化し、大量にこなすことで、アウトソーシングビジネスを新規事業化することも可能です。


日常業務と注意すべき業務


(1)日常業務は現場に権限委譲する

仕事は、標準化して定型化していくと、「日常業務」になります。日常の業務については、チェックも含めて現場委譲し、管理職に判断を仰がないことで、時間と手間を少なくします。


(2)特に注意すべき業務は管理職や経営幹部が厳密に取り扱う

ただ、そこに載ってこない業務については、特に注意する必要があります。例えば、リスク管理や人事管理などの業務については、必ず複雑な手順を踏むようにしておけば、トラブルやリスクが減ります。そうしないと万が一トラブルがあった場合、10倍、100倍のコストがかかってしまう恐れがあります。


マニュアル作りのポイント


(1)マニュアルはできるだけ少なく

マニュアルを作る場合は、なるべく量を少なく、すぐに全体を見られるものが好ましいでしょう。作る側は分量を多く作ったほうが満足しますが、ボリュームが多いと他の人に読まれませんし、重要なこともぼやけてしまいます。一度作ったものを3分の1ぐらいまでギュッと凝縮すると、良いマニュアルができると思います。マニュアルを凝縮させたほうが良い理由には、内容を削る過程で、重要なことがより明確になるということもあります。


(2)マニュアルは2種類用意

一番良いのは、概要がパッと分かる入り口的な「エッセンス・マニュアル」と、困った時に詳しく調べられる「辞書的なマニュアル」の2種類のマニュアルが揃っていることです。また、マニュアルは、「通常業務」「特殊業務」で区分されています。「通常業務」のマニュアルは、新入社員にとってはありがたいものですが、だんだん仕事をするうちにいらなくなってしまいます。ですので、基本的にマニュアルは、「特殊業務」のものさえあれば十分です。


(3)マニュアル"レス"のすすめ

「通常業務」のマニュアルについては、仕事が正常に行われるために、ミスをしやすい箇所や重要な部分について、チェックリスト型のマニュアルがあれば良いでしょう。また、稟議書や報告書といった文書に、注意すべき項目を盛り込むと、マニュアルがいらなくなります。さらに、業務の中で複雑になっている部分を、なるべく普段の自然な動きで進められるようなフローにすれば、マニュアルは必要なくなります。マニュアルがなくても業務が進められるようにすることも、「業務改善」のひとつです。


現場の問題をどう見つけるか


(1)人のせいにしない!


業務改善の最大の阻害要因は、「○○さんが不注意だからダメ」「○○さんは仕事ができないからダメ」など、トラブルの原因を特定の人物のせいにすることです。そうすると、すべての思考が停止してしまい、業務改善を行う理由・必要性を考える、"なぜ"という問いを阻むことになります。


(2)2つの法則を活用

業務改善の問題を見つけるためには、次の2つの「法則」に基づいて考えると、とても有効です。


① ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)

労働災害の事例を統計分析した結果をもとにした法則。1つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の事故寸前の「ヒヤリとしたり、ハッとしたりする危険な状態」があるというもの。労働災害の事例から導き出された比率であるが、リスクの洗い出しにも利用可能です。


② パレートの法則(20:80の法則)

重要な20%が全体の方向を決定しているという法則。多数の問題がある中で、そのうちの重要な20%を 解決すれば、おおよその問題は解決する、というものです。



私の経験で、この2つの法則を用いて問題解決を行った例を紹介します。銀行員時代に、私はネットバンキングを立ち上げました。その初めの頃、まだ利用者数が少ないにも関わらず、サービスや操作、機能について、かなりの数のお問い合わせを受けました。私は、このままの状態でお客さまが増えると、サポートの人数を膨大に用意しなければならなくなると感じました。それに対処するためには、まだ問題がそれほど大きくないときに、重大なリスクの発生を回避する方法を考えなければならないと思いました。


そこで、私は、「サービスの種類を増やす」とか「多機能にする」など、他の多くの意見がある中で、「操作をシンプルにして、それに関する問い合わせを減らすこと」が一番大事なのではないか、という考えに至りました。この考えは当たっていたようで、実際に当時のネットバンキングの中で「使いやすさナンバーワンサイト」にも選ばれ、利用者獲得にも多大な効果がありました。


このように、何か問題が発生した時点で、今後起こり得る同じ要因の重大な問題の発生を回避するため、問題が軽微なうちに原因をつきつめることが重要です(ハインリッヒの法則)。また、問題の原因をつきつめる際には、瑣末(さまつ)なこと(80%)はまずは置いておき、本質的な部分(20%)を絞り込むことが大切です(パレートの法則)。



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