研修を語る
2022/12/22更新
SDGs導入研修を語る ~社会課題の解決と企業活動を結ぶ
SDGsは環境問題ではなく商機・危機になる
―近年、多くの企業で推進・導入されている「SDGs(エスディージーズ)」ですが、実に様々な研修やセミナーが実施されています。その中でも、この研修は上位階層向けに特化されているそうですね。
弊社のHPには「経営層や部長以上の方」と対象者を記載していますが、SDGsを踏まえた戦略や経営計画に携わる方であれば、これらの階層でない方でも受講いただけます。長期的な視点のプロジェクト推進は、ある程度の権限のある方が担当することが多いと思いますが、最近では、SDGs推進プロジェクトなど比較的若いメンバーで構成されたチームで、SDGsに関する中長期的な計画を担うこともあり、このような方々におすすめのプログラムです。
―具体的にSDGsについてどのようなことが学べるのでしょうか
一般的なSDGsの研修は、環境問題を中心に組み立てられていることが少なくありません。しかしこの研修では、経営の視点からSDGsを捉え、現場の管理職・責任者に何が求められているのか、必要なのかをベースに構成しています。
コストをかけて身を削って取り組むことが多い環境問題対策とは異なり、経営目標のSDGsは「商機」ととらえることもできます。特に近年では、社会全体や競合他社がSDGsに向けて大きく舵を切っていることで、DXやAIと同様に「今すぐに着手しないと置いて行かれる」危機感を持つ経営者も少なくありません。本研修はそのような方々に対して、どのようにSDGsを中長期的な事業計画に組み込んでいけばいいのかをお伝えします。
―ひと昔前はSDGsと言えばエネルギーやインフラ事業などに関わる大企業が取り組むべきもの、というイメージでしたが、もはや全ての産業・業種に広がっていますね
そうですね。大企業にしてもSDGsを推進していく中で「Substainable(持続可能)」という点を重視するようになってきていて、環境問題のみならずダイバーシティ推進や従業員エンゲージメント、健康経営なども注目されています。また人を資本として捉える概念(人的資本、ISO30414)が浸透し始めており、人事や財務に関する非財務情報の開示も求められるようになりました。
「今忙しい」人にも受け入れられる
―この研修を受講する方は、どのようなきっかけでお申込みになるのでしょうか
「SDGsの宣言のようなものは会社として掲げてみたものの、そこから何をどう進めていいか分からない」という方です。経営者レベルで行き詰ってしまうと、さらにその部下はもっと動けない状態になってしまいます。以前までは、SDGsで何をしようとしているかの宣言自体もされていない会社が多かったのですが、今は一歩踏み出してはみたけれどそれ以上進めなくてどうしようかお悩みで受講される方が増えました。
―受講される方は、どのような業界にご所属の方が多いのでしょうか
先にも触れましたが、エネルギー業界やインフラ業界、メーカーなどもともと環境活動に積極的だった企業の担当者からお問い合わせをいただくことが圧倒的に多いです。ただ、本当にご受講いただきたいと私どもが思っているのは、今まで事業自体が環境問題へのインパクトが少なかったために、そういった活動に積極的に携わってこなかった方たちや担当の方です。
SDGsは長期的に持続可能な社会、組織を作っていくための目標ですので、世界各国全ての企業や人々が取り組むべきものです。言い方を変えると全世界一丸となって進めていかないと、地球・社会・人々は救われないというメッセージでもあります。弊社としては、経営に携わっている、あらゆる方々にご受講いただきたいプログラムとして開発を進めてきました。
―こちらの研修を受講した方は、SDGsについてどのような知識を得たり、スキルを修得したりできるのでしょうか。一般的なSDGs研修と異なる独自のポイントがあれば併せて教えてください
このプログラムが他社のSDGs研修やセミナーと一線を画すポイントは「そもそも忙しい経営層や管理職をターゲットにしている」ということです。新しくSDGs活動を進めようと思っても、せいぜい5%程度の労力でしか、取り組みを進めることができないような層の方々です。
多くは新しいことを進めるというよりも、現在の業務にプラスαをしてSDGsを推進する、もしくは現在の業務をSDGsに合わせてアップデートしていくことになります。その中でどのようなことが必要になってくるのかを、具体的に考えられるようになるところをゴールにしています。
―経営に関わる階層の方が対象ですと、業務がSDGsで圧迫されてしまうと困りますよね。忙しい方が無理なくSDGsを導入できるというアプローチは、とても需要が高いのではと感じました
通常、SDGs活動は組織改革につながるために非常に大きな力が必要です。そのため、CSR活動をしっかり部署を作って推進しているような大企業にとっては、新しい未来に向けた夢のある話としてやりがいもある有効なプロジェクトにつながっていきます。
しかしこの研修では、もう少し泥臭い話をします。「他の企業が始めているから急がなければ」「今やっている業務の中に一つでもプラスαできるようにしたい」という現場の事情を鑑みて、その中で何が必要か・できるのかを学ぶことが目的です。
今のままではいられない、未来の自社の姿を考える
―この研修の流れとしては、最初にSDGsについての理解を深め、だんだんと深い話に入っていくようですが、大まかな構成を解説してもらえますか
第一章では、SDGsとはそもそも何か、どうしてそれが大切なのかの理解を深めます。「SDGsは環境問題に限ったことではなく、全世界、全人類が対象になる」ということです。もともと環境問題から広がってきているので、どうしてもSDGsを環境保護や脱炭素に結び付けて考えがちですが、実際にはもっと範囲が広く、そこに商機があることを前向きに認識してもらいます。
―確かに、SDGsというと環境破壊を防止するものというイメージが強いです。しかし実際のスローガンは「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」なんですね。ただ、そう言われても明確にはよくわかりません
「誰ひとり取り残さない」というSDGsのキーワードが分かりやすいかもしれません。昔は環境保護や貧困対策などが中心でしたが、現在はもっと範囲が広がっています。女性活躍やジェンダー平等、パートナーシップや教育など様々なゴールがあり、単なる環境問題に限定されません。それ故、SDGsは全ての企業が真摯に取り組むべき目標なのです。
―SDGsという言葉は知っていても、その本質を理解していない人は多いので、まずは正しい知識を身につけることからですね。続く第二章では分析という言葉が出てきますが、具体的には何を学ぶのでしょうか
第二章は、経営戦略を策定する際のはじめに行う「環境分析」のパートです。外部環境分析、マクロ環境分析に挑戦いただきますが、簡単に言うと一章で学んだSDGsを踏まえて「今後どのような社会になっていくか」「自社はどう変わっていくか」を、適切に想像できるようになることが目的です。
今の業務をSDGsに合わせてアップデートさせる
―その次の第三章は、CSR/CSV/ESG/SDGsやマテリアリティなど、ぐっと経営に踏み込んだ内容の言葉が並んでいます。
第一章でSDGsを理解し、第二章で環境分析をしました。第三章では、これらを受けて「では、具体的に何に着手していこうかか」を考える章です。SDGsは、がむしゃらにことをを進めていけばよいのではなく、自組織の状況を踏まえて、優先的に取り組むべき課題を設定する必要があります。
第二章で考えた自社の強みや弱みも踏まえてSDGsを経営に取り入れ、最終的には優先課題の取り組みを指標として数値化し外部に開示していくことも求められています。これらの流れについて具体的に考え始め、実務で活用するための土台を作ることのがこの章のポイントです。
―ここはかなり経営者にとってシリアスな内容になるわけですね。ここで考えた実現プロセスを、第四章ではどう扱っていくのでしょうか
第四章では、第三章で決めた優先課題を現場に持ち帰って実行に移すために、具体的な事業計画や経営戦略の案を考えます。冒頭で申し上げた、今の業務にプラスαでできるSDGsというのが、最後のワークになる形です。
ここまでの構成を大まかに言うと、自社の環境変化や組織の位置付けを正しく把握し、そこからSDGsの優先課題を設定してもらって、最後に具体的に行うことを考えるという流れですね。そして最後の第五章で振り返りと発表です。
―この研修全体を通して核になる部分はどの辺りでしょうか
やはり、第三章が肝になるかと思います。ここは、優先課題(何に取り組むべきか)を考え、決める部分です。外部に開示するKPIなど経営指標にもつながっていくため、じっくり時間をかけて取り組みます。少し煩雑に感じるかもしれませんが、ここをスムーズに考えてもらうために第一章、二章があります。
現場の管理職に必要な、実践的なSDGs教育
―この研修の、他社にはないインソース独自の特徴がありますか
やはり、忙しい経営層、管理職にターゲットを設定しているというのが特徴だと思います。トップの方々は、ゆっくり環境問題に取り組んでいる時間を捻出できません。日々激務に追われている中で、それでも何か環境問題だけでないSDGsの要素を業務に取り込んで、中長期的な経営にプラスに活かしたいという思いに応えます。
弊社はビジネス研修を扱っている会社ですので、人材教育や改善に主眼を置いています。そのため、一般的なSDGs研修では「新しい取り組みとして何をしようか」になりがちですが、いかにしてSDGsを収益や生き残り戦略に結び付けるかという、現場の管理職が即実践できるように構成しました。
―そこが魅力ですね。受講するからには「勉強になった」だけではなくて、実務に活かせるアイデアを持ち帰りたいので、そこがこの研修の強みということですか
そうですね。例えば企業の部長がこの研修を受講した場合、中朝的な部署の事業計画にSDGsを取り込んで、これからの業務を考えられるようになるのがこの研修のゴールの1つだと考えています。通常であれば事業計画は売り上げや効率を主眼に何をすれば良いかと考えるところですが、ここにSDGsという観点も追加して、これを含めた指標や目標を考えられたら成功です。
―ちなみに、この研修プログラムを開発される際、最も苦心されたことはどんなことでしたか
第一章でお伝えする、SDGsとは何かというところは苦しかったです。どうしてもSDGsは環境問題だという先入観をお持ちの方が多いので、それを払拭して「全員が対象です」「持続可能なあなたの組織をつくるためのものです」という強いメッセージを込めました。
―そこが理解できないと、前に進めないテーマですよね。逆に受講者の方から「ここは難しい」と言われるところはありましたか
難しいと言うと語弊があるかもしれませんが、第三章で組織の優先課題を設定する項目は、想像力が求められるポイントではないでしょうか。経営層の方々であれば、自組織やサプライチェーンを含めた組織の優先課題の設定はしやすいです。しかし管理部門や若手の方だと、自分の仕事が影響している「現場にとってのSDGs」は影響範囲を拡大してやるべきことを考えるのは骨の折れることだと思います。
情報インプットだけでは勿体ない。アウトプットにこそ時間を割く
―研修の最中や終了後、受講者からはどのような感想が聞かれますか
やはり「環境問題だけではないということが分かりました」という声が多いですね。また「SDGsとは何か、その本質を理解できた」という声もうかがいます。それだけでも、今後の実務につながる大きな収穫だと思います。
―そこが理解できないと、間違った方向に進みますよね。講師サイドから、このようにSDGs研修を取り入れたら良いですよ、というメッセージはありますか
SDGsは全世界のすべての組織・人々に関係するものですが、残念ながら日本ではまだそこまで浸透しているとは言えません。SDGsの研修は短時間で情報をインプットして終了という企画を要望いただくことが少なくありません。経営者や経営層の皆さまには、できましたらこの研修を1日間しっかり受講いただき、事業計画や部署の目標にSDGsを取り入れられるようになるアウトプットのところまでを、支援させていただきたいです。
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