研修を語る
2022/12/22更新
組織マネジメント研修を語る ~目標達成のためのKPIの設定と管理
「KPI」に特化した初の研修
―一言でいえば、どのような研修内容になるのでしょうか
メインタイトルを「組織マネジメント研修」としていますが、内容自体はKPIに特化したものとなっています。組織の中で定めた目標を達成するためには、KPIという指標をどのように設定すればいいのか。研修を通して学んでいただきます。
どちらかといえばニッチなテーマの研修ですが、組織マネジメントにおいてとても重要なテーマであると考えています。KPIの設定を通じて、組織マネジメントの要諦をお伝えするのが研修の目的です。
―KPIについて、インソースの研修で取り上げるのは初めてなのでしょうか
営業向けの研修やそれ以外の研修でも、KPIの概念や設定の仕方についてお伝えしてきましたが、KPIを中心に据えたのは、この研修が初めてです。KPIに特化した研修を打ち出すことで、KPIについて深く知りたいと考える方に響くのではと考え、テキストを作成しました。
実際に公開講座で研修がスタートしたのは、2020年11月です。
「KPI」は「ノルマ」にあらず
―KPIという言葉について、実際には「よく分からない」と感じている方も、いらっしゃるかと思います。KPIという指標の重要性について教えていただけますか
その方が属している業界などによって、バラツキのある言葉ではないかと思います。例えば、日々、数字の成果を追いかけている営業職の方にとっては、KPIという言葉自体を社内で常用しているかは別としても、この概念なしには自分の行動は説明できないというレベルの基本要素だと思います。
昔だったら「ノルマ」と表現されていた言葉でもありますね。「ノルマ」から、もう少し定義を明確にして、置き換えて使われるようになったのがKPIなのだと思います。
―「KPI」イコール「ノルマ」ということなのですか
それは少し違います。ノルマの置き換えで使われているがために、KPIが本来意味しているものを理解しないままに、使われてしまっている面があります。
組織のリーダー、組織をマネジメントする立場にある皆さんは、KPIの意義を理解した上で、適切な設定をし、それに向けて部下を動かしていく必要がありますね。
―KPIという言葉は、いつごろから使われるようになったのでしょうか
KPIという言葉が浸透し、マスメディアなどでも語られるようになってきたのは、ここ10年ぐらいではないでしょうか。テレビのバラエティ番組で、「やたら専門用語を使いたがる人」を揶揄して芸人さんが「KPI」という言葉を繰り返し口にしているのを見たことがありますが、そういう意味ではまだ浸透してはいないのかもしれません。
「数字を任されている管理職」に効く研修
―KPIに特化した研修を計画するに当たり、具体的なきっかけはあるのでしょうか
この研修のテキストのベースになっているのは、あるお客様向けに実施した研修の内容です。こちらの会社から、中期経営計画の数字を達成するために必要な活動について、研修を企画してほしいという要望があったのです。
そこで打ち出している数字を達成するために、きちんと目標をたて、それに対する実効性のある計画をたてることが必要だと、マネージャー層に理解していただくのが目的でした。その際に、KPIについての踏み込んだ議論をし、それがベースとなって現在の研修につながっています。
―研修がターゲットとしているのは、どんな層ですか
管理職の方々を想定しています。係長クラスの中堅リーダーの場合もあれば、部長級の場合もありますが、「数字を達成することがミッション」という方々です。
個々の数字の達成は、一般社員にも求められますが、それだけではなく、「事業」や「部門」といった何かしらのくくりの中で、数字を任されている立場の方にとって、有益な研修だと考えます。「これを実現するためには、誰にどんな活動を、どのくらいさせなければいけないのか」をロジカルに考えなければならない立場の方々です。
また、「経営企画」などのポジションにいる方にも、ぜひ受講していただきたい内容です。会社の数字を組み立てる作業を専門的に行っている経営企画の方々にとっても、KPI設定のロジックを深く知ることは重要でしょう。
―研修のターゲットとなる業界などはありますか
営業活動を通して数字をつくっていく業種の会社にとっては、なじみのある内容だと思います。数字を達成するのが使命で、株主からも求められているという民間企業です。
実際に購入されるお客様も、そういった民間企業の方々で、数値目標を追いかけて毎月、毎年やっているという方が大半です。
「KSF」を理解してこその「KPI」
―研修内容についても少しお伺いしたいと思います。KPIを適切に設定していく上で、もっとも重要なのはどんな点ですか
「KSF」という概念がとても重要です。KSFとは、Key Success Factorの略で、日本語では「重要成功要因」と訳されます。目標を達成する上で、重要なカギとなる要素を意味します。そのKSFがあってのKPIだということを、理解していただくのが研修のもっとも重要な部分です。
一般によく見受けられるのが、会社の売上の数字や利益数字をそのままKPIに設定するパターンです。例えば、最終的に組織として達成したいと思っている数字が「年商1千万円」だったとしたら、その数字を「営業1課で500万円」「営業2課で500万円」と分解してKPIとして設定するようなケースです。
しかしKPIは、数字を分解する話ではないのです。年商1千万円を実現するため、何の活動をどのくらいしなければならないかということを、KSFを踏まえて、きちんと組み立てる。そして、それぞれの活動に対する数値目標を設定することこそが、KPIなのです。そこを理解することが、この研修の肝なのです。
適切なKPI設定へ「方程式」を学ぶ
―ほかに研修でポイントとなる点はありますか
KPIを適切に設定するために、「方程式」の考え方を学んでいただきます。適切なKPI設定であれば、KPIと組織の目標の関係を、方程式で表すことができます。KPIは、数式で表せるぐらいのロジックをもって、組み立てる必要があることをご理解いただくのが趣旨です。
広い範囲で数値目標を考えるとき、さまざまな事業部門があって、それぞれが活動していると思いますが、全社的な視点で、整合性をとることも必要です。部門の中では完結した数字で、ロジックが通っていても、最終的な全社の数字を考慮しなければ、全社の目標達成はおぼつかないものになってしまいます。
―KPIには、「ロジック」や「整合性」の視点が必要だということですね
全社的な整合性とともに、時間軸上の整合性も重要になります。企業では、3年後、5年後の経営計画を立てて動くことが多いのですが、目標達成のためには、1年目、2年目、3年目と、それぞれの年に何をするべきか、時間軸上の中で想定をすることが必要です。
全社的な整合性と時間軸上の整合性をきちんととった形で、自分の事業部門の数字、目標をつくらなければ意味がないということを、研修ではお伝えしています。
KPI設定はあくまでもロジカルに。KSFの指標化で体験
―研修では、具体的にどんな演習やワークが行われるのでしょうか
研修の肝となるのが、KSFを指標化するワークです。受講者の皆さんそれぞれの会社の目標を題材に、まずはKSFを特定し、特定したKSFに基づくKPIを設定する作業を体験していただく内容になっています。
具体的な作業としては、まず、それぞれの会社の目標達成を阻む問題などについて分析します。そして問題を解決するために必要な要素をロジックツリーの形で整理し、目標達成のカギとなるKSFを洗い出すのです。さらに最後に、洗い出したKSFに基づき、KPIを設定します。
ロジックツリーを書くことによって、否が応でもロジカルに考えることができます。ロジカルに考えることによって、KPIが見えてくるということが体験できます。
―これまでに受講された方々の感想などを教えてください
「うちはここまで練りこんで、KPIを作っていなかった」と気づかれる方も多いようです。KSFについても、「聞いたことはあったけれど、いまいちピンとこなかった。研修を通して大事さが分かりました」という声が多く聞かれます。
まずは何をどのくらいどうすれば、この目標を達成できるのかということをロジカルに組み立てる。それを踏まえた活動指標としてKPIを設定する。そういう手順を踏まなければ意味がないということを理解できた、という感想も多くいただいています。
―最後になりますが、研修の効果について一言お願いします
KPIの本質を理解することは、組織マネジメントの上でとても重要です。KSFを踏まえたKPIの設定ができるようになれば、その延長線上に会社経営もできるようになるのではないか、と考えています。