研修を語る
2024/07/18更新
300人企業のための階層別研修~部長編を語る
部長の役割、あるべき姿について考えてみよう
―最初に「300人規模の」というタイトルについてうかがいます。いわゆる中小企業とか、中堅企業と言われる規模の組織にご所属の方向けということでしょうか
そうですね。300という数字については、あくまで目安として捉えていただければと思います。日本には現在約421万社の企業がありますが、その中で大企業と呼ばれるものは0.3%、あとの99.7%が中小企業(※)といわれています。
この中には従業員数が1名という組織も含まれているわけですが、そのうち、300人くらいの従業員数を持つ企業に所属しておいでの部長さまを想定し開発しました。
※参考:中小企業庁 最近の中小企業の景況について
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chushoKigyouZentai9wari.pdf
(最終アクセス:2022/05/27)
―その300人企業の部長さまは、どのような背景や課題感をもって、この研修に参加なさるのでしょうか
大企業では、役職の定義が明確にされていることが一般的ですが、300人企業の場合、役職ごとの定義が曖昧なケースが少なくありません。例えば、部長という肩書を持ちながら、その業務の主体はマネジメントではなくプレイヤーであることも決して珍しくはありません。また、いくつもの部署の部長を兼任していたり、逆に部下が一人もいない部長さんもいたりします。
この研修では、そのような組織の実情を踏まえたうえで、部長がどのような役割を果たすべきか、あるべき姿はどういうものか、マネジメントだけでなく考え方についても実践的に学んでいただきます。
―部長職は全社的なマネジメントの要職ですから、経営者や人事にとっても期待の大きい研修といえるわけですね。次のステージにステップアップしたいと考える企業にとって、部長の役割を明確に意識する意義は大きいと思います
300人企業の部長の多くは「大課長」
―「一般的な部長向け研修は中小企業の自社には合わない」とお感じの方が多いことをきっかけとして、本プログラムが生まれたとのことですが・・・
はい。端的に申し上げますと「本当の意味での部長職」は、300人規模の企業にはほとんどいらっしゃいません。経営トップが実質的な部長業務も担っている会社は多いですし、いわば部長という名の「大課長」である方が少なくありません。大企業のように、部門経営者としての役割を認識していらっしゃる方は稀、というのが実情です。
―確かに、規模がそれほど大きくない企業では、部長はもちろん、社長でも現場に出ていくイメージがありますね。そこが大企業向けの部長研修が300人企業の部長さまにとっては現実的でないとお感じになるところでしょうか
そうですね、この違いは大きいと思います。そこで今回、課長業もプレイヤー業も避けて通ることのできない規模の組織の部長さまに向けて、より実情に即した研修を開発しようと考えたわけです。
―まさに欲しかった内容はこれだ、と思う組織も多いでしょうね。ただ、社歴が長くなり経験も豊富になっている部長クラスの研修は、実施が難しい点も多いのではないかと想像します。インソースでは階層の高い受講者向けに、どのような工夫や気遣いをされているのでしょうか
この300人企業シリーズ全体を通じて、それぞれの階層における理想の姿はお伝えしつつも「さまざまな事情で、それができない実態も理解しています」というスタンスをベースにしています。理想論だけ振りかざすのでは心に響きませんが、実態に合わせて心理的に寄り添うことで「こういう風に変えていきましょう」というメッセージをご理解いただけるはずです。
―そういう心理的な理解を重視する点も、上級階層の方向けの研修の特徴ですね。ちなみに、大企業と300人企業の違いが、研修の中でいくつか取り上げられています。部長昇進へのハードルの高さ、マネジメントとプレイヤー比率など、同じ部長職でもそこまで違うものでしょうか
実際はその会社によって、まちまちな部分はあります。例えば振興のベンチャー企業の中には、部門の数字の大半を部長自らが稼ぎ出している、といったところも珍しくありません。部長といっても、潤沢に部下がいるわけではないので、どうしても「自分が稼がなければいけない」という状況下で働いていらっしゃるケースは、結構多いと思います。
―昔のドラマに出てくる部長は、自分では動かず部下を采配するようなイメージがありました。今は変わってきたのでしょうね
安定しているかわりに成長もしていないような企業だと、数字の取りまとめや会議報告ぐらいしかやることがない、といった部長さまもいなくはないでしょうが、さすがに最近はあまり見かけなくなりました。
逆に、成長著しい企業の場合、ゆったり構えて座っていられる余裕などない、という方のほうが多いのではないでしょうか。ただし、この部長がマルチタスクで忙しい状況というのは、あまり褒められたことではないのです。マルチタスクが避けられないとしても、そのバランスは変えていかなくてはなりません。
第1章の最後にも、「中小企業の部長はナンバーワンプレイヤーであることにこだわりがち」という項目を設けていますが、プレイヤー業務から完全に離れることは難しいとしても、それを手放そうとしないのはやはり問題です。
部長とは、経営者にとって頼れる相談相手
―第2章では「役割と意識」がテーマですね。意味合いの範囲がとても広いのですが、この章ではどんな部分にスポットをあてているのでしょうか
300人企業の部長のあるべき姿を描いてみましょう、というのが章を通じてのテーマです。まず、社長の良きフォロワーとしての位置づけです。仮に部長自身に権限はなくても、社長が意思決定を行う場面に立ち合い、情報提供や助言といった形で関与できる立場ではあるはずです。
また、部長にもなると、もうそれ以上のポストを目指すことは、現実的には難しくなります。会社の中での出世よりも、「会社自体の成長」に意識を向けて取り組むことのほうが、ご自身にとってのステップアップにつながることをお伝えします。
―そうなると、より視点が経営者寄りになってきますね。今の自分の領域をかたくなに守ろうとする部長さんではいけないということですね
部下と同じ土俵で「この顧客は自分が開拓したものだから絶対に渡さない」とか「この事業は自分が立ち上げたものだから勝手には触らせない」などと、業務を握り込んでしまう方もたまに見かけますが、それはちょっと残念ですね。
―第3章は「規模と成長段階に応じたスキルセット」です。こちらには組織規模と部長の役割の変化、成長段階と組織の課題の変化、組織作りと運営において求められるスキルなど、上位管理職に求められるマネジメントや組織運営の要素が多いですね。重要なポイントは何でしょうか
先ほど、部長が意識を向けるべきは「会社を成長させること」だと申し上げましたが、具体的に企業がどのようにして成長していくかを学んでいただく位置づけの章にしています。自分の会社はどの成長段階にあり、そこではどのような役割が求められ、この先にどのように変化していくのか、ということを「グレイナーの5段階企業成長モデル」などで解説しています。
―企業の成長で最も部長にとって難しいフェーズは、どの段階なのでしょうか
企業の数で言えば、第一段階から第二段階に行くところで、多くの脱落企業が出てきますので、まずそこが部長にとっても関門となるでしょう。ただし、どの段階でも今の自分から意識をチェンジさせる必要があるため、それぞれに難しさはあります。
日々の業務の意味を改めて知ることの大切さ
―第3章にはこの他にも、指揮命令系統を組織図として可視化する、ルールの策定とチェック体制の構築、事業の計画と管理など、大企業の上級管理職であれば必須のスキルが並んでいます。300人規模の組織の部長だと、これらに関して理解が十分でないことが多いのでしょうか
企業規模の大小には関係なく、既に組織体制やルールができあがっている中で部長職に就かれた場合、それらの本質的な意義をあまり理解しないままやり方だけ前任者にならって行っているだけの人も実は多いと思われます。
そのため、この研修では改めてルールとは何か、契約策定とは何かということを、一通り初歩から頭に入れていただきます。その結果「あの作業にはこんな目的があるのか、ルール策定にこんな重要な意味があるのか」と自身の業務を振り返ることに、非常に価値があるのではないかと思います。
―無意識に取り組んできた仕事の中に、欠落していた部分が見つかるかもしれませんね。それを埋めていくことで業務改善の一助になれば、会社や部下にとってもメリットは大きいですし、社長に提言すべきことが発見できるかもしれません
はい、そうなっていただくことが理想です。
―その他にも、誰をいつまでにどのレベルに育てるか、内部に存在しない専門人材の調達など、部長クラスでないと携われない、かなり高度なマネジメントや人事についても解説があるようですね
この辺りは、たとえ部長であっても全面的に任されることはあまりないものかもしれません。どちらかというと、経営トップに何を助言すべきか、相談されたときにどう回答するべきかといったシーンで活用いただくことを想定しています。
現代ビジネスのスタンダード、マインドセットを学ぼう
―つづいて第4章ですが、ここから少しプログラムの印象が変わりますね。いわゆる「マインドセット」の内容となり、今のビジネスシーンに特有の考え方が取り上げられています。世代的にも、また企業風土によっても、こうした考え方には親しみを感じるかどうかの差があるように思われますが
確かに、従来の部長職の心構え、といったものと比べると、少し新しめの印象を持たれるかもしれません。ただし、重厚長大型の大企業と比べると、300人企業の部長さまの方が、こうしたマインドチェンジは行いやすいと思います。逆に、新興企業の部長さまであれば、「既にウチではそういう考え方でやっています」という感じかもしれません。
―受講者の中には40代50代の方も多いかと思いますが、旧来のマネジメントの常識と今のトレンドとの狭間で苦悩される方も多いように思われます
はい。でも、一足飛びにマインドチェンジしようなどと考えなくていいと思います。世の中の動きと自社や自身の現状とのギャップを実感いただくだけでも重要な学びとなり、この先に訪れるチャンスに合わせて変えられるようになります。
―この部長編のプログラム全体を通じて、どこが最も受講者に訴えたいところですか
この階層別研修シリーズにおける一番の目的は、それぞれの階層に求められる役割と、業務に必要な行動を改めて理解いただくことです。そしてそれを実際に会社に持ち帰り、業務に反映していただければと思います。
300人規模の企業は、大企業と比べて不利な部分もありますが、大企業では得られないメリットもたくさんあります。そして、そのメリットを生かして活性化していくことでチャンスが生まれます。受講者の皆さんにはこの研修を通じて、前向きな気持ちになっていただけたら幸いです。
―せっかくなら、部長研修だけでなく全階層で研修を受講いただけると、さらに全社のスキルが上がりそうですね
そうですね。せっかく階層を分けておられるのでしたら、各階層の役割や考え方を、しっかりと明確化なさることをおすすめします。係長編、課長編、部長編の3つの研修をご用意しておりますので、ぜひご検討いただきたいと思います。
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