IPO準備で押さえるべき3つの課題~経営状況だけではない、上場前後に必要な組織強化策とは

「上場」は企業にとって、資金調達や知名度向上などの大きなチャンスとなり得る一方、社会からの厳しい視線と責任を同時に背負うことにもなります。
ガバナンスの強化や透明性の確保、リスクマネジメント体制の構築など、上場前後の企業は、多くの課題に直面します。特に上層部の教育と人材育成体制の整備は、企業の持続的成長の鍵となる分野でもあります。
本コラムでは、弊社・株式会社インソースの上場時の事例も踏まえながら、上場前後に取り組むべきポイントを整理しました。
経営状況だけではない、上場審査の項目
上場に至るまでには、主幹事証券会社および取引所による審査があります。
【参考】スタンダード上場審査の内容

(引用)日本取引所グループ 上場審査基準概要(スタンダード市場) https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/01.html (最終アクセス:2025/12/11)
株式会社インソースは、2016年に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、その後2017年に東京証券取引所市場第一部上場市場へ変更しました。なお、2022年には東京証券取引所プライム市場に移行しています。以下は、実際に当時の審査段階で受けた教育に関する審査内容です。
- 人事制度および社員教育の充実度(研修体系図や育成計画の提示)
- 中期経営計画に基づく各種課題への対応(グローバル化、人材不足、ダイバーシティ推進、コンプライアンス強化、評価制度の見直し)
- 役員、従業員向けのコンプライアンス教育の計画および実施状況(関連法令、企業行動指針、反社会的勢力についてなど)
- 内部情報管理やインサイダー取引防止における対応状況、体制
- 他、上場後の教育に関する方針や頻度など
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上場審査の項目は多岐に渡り、経営状況だけでなく人材育成や教育体制も評価対象となります。これらは、企業が上場を果たした後も継続して持つべき観点となります。
上場前後に欠かせない組織強化策~全階層の教育と制度整備
先程の事例も加味したうえで、まず企業が上場を控えている段階では、一般的に以下のような体制づくりが求められます。
【上場前に強化すべき項目】
- 経営幹部と管理職の教育、リーダーシップ強化
- 全社的なリスクマネジメント能力の強化
- 全社的なコンプライアンス意識の徹底
- 内部統制と情報セキュリティの整備
これらを事前に整えることで、上場後に予想される急激な変化にも耐え得る組織基盤を築くことができます。
加えて上場後には、社会的責任を果たしながら組織成長を続けるための仕組みづくりを継続していくことが重要です。
【上場後に強化すべき項目】
- コーポレートガバナンスの強化
- 株主や投資家への情報開示と透明性の確保
- 評価制度を通じた人材の定着と活性化
- 全従業員を対象とした教育体系の整備と成長機会の提供
なかでも特に、「上層部の判断力」と「組織全体の教育制度」の強化は、企業が継続して発展していくために必要不可欠な項目です。
取り組むべき課題①:上層部教育
役員・管理職などの上層部に関しては、経営戦略や財務知識に加え、内部統制についても学ぶ機会を設けることが重要です。同時に、上場企業として急速に変化し続ける近年の環境を捉え、変革を推進していく能力の必要性も高まっています。
トップマネジメント研修~企業経営の原理・原則(2日間)
企業経営の原則から実行フェーズまでを学ぶ2日間研修です。経営層には、売上拡大と利益確保の両方を実現させ、経営サイクルを回していくことが求められます。そこで1日目は、経営状況を把握するための数字の見方や、自社を取り巻く環境をふまえた経営戦略・計画の策定の仕方を学び、実行に落とし込みます。
2日目は経営層に求められる決断力や、経営危機に適切に対処するための判断のポイントを解説します。2日間を通して自社を想定したワークに取り組むため、すぐに現場での実践につなげることができます。
内部統制研修~組織の健全性を保ち、企業価値を向上させる
危機の際には改めて自社の内部統制を見つめ直し、リスクマネジメントの課題の解決が必要となります。本研修は、内部統制の概要や管理者としての役割認識、リスクマネジメントなどを学んでいただく研修です。内部統制の基本的な知識や考え方を身につけていただきます。
取り組むべき課題②:リスクマネジメント・コンプライアンス強化
上層部に限らず全従業員を対象に、事業活動に伴う様々なリスクを適切に管理することも必要不可欠です。リスクの主な分類としては、「従業員に関わるリスク(労働災害・過労死・多様なハラスメントなど)」と「顧客に関わるリスク(個人情報の取り扱い・偽装広告など)」が挙げられます。ポイントは、具体事例を交えた学習機会やワークショップなどを通じて、一人ひとりが現場で活かせるスキルを自分事として養うことです。
コンプライアンス基礎研修~組織のリスクを網羅的に学ぶ
危機の際には改めて自社の内部統制を見つめ直し、リスクマネジメントの課題の解決が必要となります。本研修は、内部統制の概要や管理者としての役割認識、リスクマネジメントなどを学んでいただく研修です。内部統制の基本的な知識や考え方を身につけていただきます。
(半日研修)リスク管理・内部統制研修~基本と現場での効果的な展開
本研修では、「守り」を支えるリスク管理・内部統制について、その基本と現場での展開について学んで頂きます。「悪いことの発生を防止する」というリスク管理・内部統制の基本原理をしっかりと学習し、その上で、この基本原理をそれぞれの会社・現場レベルで如何に上手に活用・展開するのかを学びます。攻めと守りに強い両利きの管理者を目指す方はもちろん、リスク管理部門や監査部門に配属されている方、事故や不祥事の再発防止に従事されている方などに適した講座です。
取り組むべき課題③:評価制度と教育制度の構築
人事評価制度は、従業員のモチベーションを向上させ、組織一丸となって大きな目標を達成していくために大切な役割を担います。まずは客観的で公平な評価基準を定め、個々人の能力や業績を適切に評価し、同時に成長の道筋を示すことがポイントです。加えて、全従業員に長期的に活躍してもらうために、継続して学び続けられる教育体系も整備していきましょう。上場企業として、各階層や部署ごとに必要な知識とスキルを整理し、適切な学習機会を提供する必要があります。
評価を含む人事制度の設計支援サービス
弊社は何においても「お客さまの現状に合わせて作ること」を念頭に置いています。人事制度の設計においてもそれは同様で、例えばお客さまのニーズが「制度を0から作りたいのか、一部の見直しをしたいのか」、「評価シートは自前で作りたいのか、そこまでコンサルが行うのか」、「運用までコンサルタントを入れて制度の定着を図りたいのか、評価シートのWEB化まででいいのか」など、それぞれの組織のお考えに合わせてサービスをご提案、ご提供いたします。
教育研修体系の見直し・構築サービス
研修会社インソースが提供する「教育体系・研修体系見直しサービス」のページです。ハイブリッドワークへの移行をはじめ、人的資本経営を実現するにあたっての人材要件可視化のご支援も、インソースにお任せください。育成体系構築から教育実施まで一気通貫でご提案可能です。
まとめ:上場はゴールではなくスタート
上場は企業にとってのゴールではなく、新たなスタートです。本日のコラムでご紹介した上層部の教育やリスクマネジメント、社内制度の整備は、企業の持続的な成長を支える基盤ともなります。上場前から意識的に取り組み、また上場後も継続的に見直し・改善していくことが、信頼される上場企業への道につながるでしょう。
私たちインソースも上場企業として、全階層を対象とした研修はもちろん、人事評価制度の構築支援や教育体系整備など幅広い分野でのご支援が可能です。上場前の準備と上場後の組織力強化について何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談くださいませ。
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