単なる物流の責任者ではない~組織の価値創造を担うCLO(Chief Logistics Officer)とそのチームをいかに育てるか
コラム前編では、物流改革は企業改革そのものであり、その推進役としてCLOに期待が集まっていることを見てきました。
ではそのCLOは何を基準に意思決定を行うべきなのだろうか。そして企業はどのような人材を育成していくべきなのだろうか。この問いで重要なのは、「価値創造」という視点である。
顧客が高く評価するサービス品質を実現し企業価値を高める
これまで物流改革の議論はサプライチェーンの効率化が中心だった。在庫削減、輸送コストの抑制、効率化のための取り組みはもちろん重要である。ただ、効率化だけを追求していては企業価値は高まらない。
配送頻度を減らせばコストは下がるが、顧客満足度が低下すれば売上に影響が及ぶかもしれない。反対に、物流コストが多少増えたとしても、顧客が高く評価するサービス品質を実現できれば、企業の競争力向上につながる可能性がある。つまり企業が一番最初に考えるべきなのは、「何を削減するか」ではなく、「企業活動のどこで価値を生み出しているのか」なのである。これがバリューチェーンの視点だ。
サプライチェーンがモノや情報の流れを最適化する考え方であるのに対し、バリューチェーンは企業活動のどの部分が顧客価値を生み出しているのかを考える枠組みである。物流もまた単なるコストではない。企業によっては、物流そのものが競争優位の源泉になっている場合もある。短納期対応やきめ細かな顧客対応という価値を支えているのは物流機能である。CLOには物流の効率化だけではなく、バリューチェーン全体を俯瞰する視点が求められる。

変革の本質は、「自組織の価値」を見極めること
変革の本質は効率化そのものではない。自社にとって価値のある活動と、そうでない活動を見極めることにある。業務を捉え直す=コスト削減を連想する人は少なくないが、価値を生み出している活動まで削減してしまっては本末転倒である。
例えば、ある企業にとって顧客への提案活動が競争力の源泉であるならば、その部分には十分な時間やコストを投入すべきだろう。物流についても同じことがいえる。顧客が高く評価している点を見誤ってしまったら、競争優位性は失われてしまう。重要なのは、どの業務が顧客価値を生み出しているのかを把握することだ。価値を生み出している部分には投資し、価値を生み出していない部分は効率化する。この判断こそが経営であり、CLOに求められる役割でもある。
各プロセスを評価しなければ有効な改善はできない
では、自社がどこで価値を生み出しているのかをどのように見極めればよいのだろうか。まずは業務プロセスを細かに洗い出して可視化し、それぞれを評価することから始めよう。「売上が伸びた・利益が増えた・コストが下がった」といった結果を生み出しているプロセスを把握していなければ、再現性のある改善は難しい。以下のような視点でプロセスを分析する。
- どの工程に時間がかかっているのか。それは妥当か
- どの業務が直接的・間接的な顧客価値につながっているのか
- 企業活動に影響を及ぼすリスクがどれだけあり、それらの脆弱性をいかにケアするか
いま各現場で起きている事象の背後、前後にある事象まで理解することで、「何をどの程度、その順番で改善するか」を明確にできる。これには、個人の感覚ではなくデータや評価指標に基づいて客観的に業務を捉えていくことが求められる。

一人で実現するのは難しいならば、CLO機能を持つチームをつくること
こうした分析や評価は一人で行えるものではないという点にも触れておきたい。物流プロセスは、物流部門だけで完結せず、営業、調達、生産、在庫管理、顧客対応など、多くの部門が関わりながら価値を生み出していることはご理解いただけただろう。
だから例えば配送の非効率がひとつ見つかったとしても、その原因は物流現場ではなく、生産計画や受注方法にあるかもしれない。自身のあずかり知らぬところで、別部署の誰かが「1アクションに連動・付随するアクション」を起こしてくれていることもあるのだ。プロセス評価についても特定部門の領域から見るのではなく、部門横断で多角的に取り組む必要がある。
どの業務が顧客価値を生み出していて、どの業務が非効率を生んでいるのか。その共通認識を組織全体で持たなければ、本質的な変革につながらない。
CLOに求められるのは判断力、調整力、決断力
どこに投資するのか、どこをどの程度効率化するのか、どの業務が顧客価値につながっているのか。こうした判断をするには物流だけを見ていては不十分だ。それぞれの部門にはそれぞれの正義がある。営業も製造も調達も、そして何より顧客が何を求めているのかを理解したうえで、全体最適のために各部署に働きかけ、決断しなければならない。
CLOの判断を支えるチームを組成する
実際には物流改革は到底「物流統括管理者」一人だけで実現できるものではない。物流の専門知識を持つ人、データ分析を担う人、業務改革を推進する人、営業や生産との調整役となる人......それぞれの知見を持つメンバーが連携して初めて、全体最適に向けた意思決定が可能になる。国が各組織に訴えているのは「CLO機能を持つチームをつくること」だ。CLOはその中心に立ち、異なる立場や専門性をうまく結びつけながら、企業全体としての最適解を導く。
部門横断で課題を捉えて価値創造の視点で意思決定できる人材を育成する
CLO設置の義務化は、「自社はどこで価値を生み出しているのか」という問いを立てる機会が巡ってきたことに他ならない。企業価値を高めるには、自社のバリューチェーンを理解しなければならない。どの業務が顧客価値を生み出しているのか、どのプロセスが利益に貢献しているのか、どこに経営資源を投入すべきなのか。
営業、生産、調達など異なる部門の視点を理解し、信頼できる社内データを用いて議論しながら全体最適を導く力が求められる。そのためには、特定の専門家を育てるのではなく、部門横断で課題を捉え、価値創造の視点で意思決定できる人材を計画的に増やしていく必要がある。企業の競争力は、変革を推進できる人材やチームを育て、その体制をいかに強固なものにできるかにかかっている。
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到達目標
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