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「声を上げやすい職場」こそが最大の安全対策~心理的安全性とホウ・レン・ソウで重大事故の芽を摘む

「また叱られるかもしれない」
「小さなミスを大事にしたくない」

現場では、ミスやヒヤリハットが起きても、従業員がそれをすぐに報告できない状況が珍しくありません。特に指導・教育担当者や現場責任者にとって、「報告が上がってこない」という悩みは深刻です。ホウ・レン・ソウの滞りは、単なる情報の遅れではなく、重大事故につながるリスクそのものです。

心理的安全性が欠けた職場のリスク

ある工場でのケースを考えてみましょう。新人のAさんは作業中に部品を一つ落としてしまいました。本来であれば責任者に報告し、ラインを止めて確認すべきところでしたが、「報告したら怒られる」と考え、そのまま作業を続けてしまいます。結果、製品に欠陥が混入し、後工程で大きなトラブルにつながりました。

この事例は「ヒヤリハット」を放置したことから生じた典型例です。有名な"ハインリッヒの法則"が示す通り、大事故の背後には多くの小さなミスやヒヤリハットがあります。「言い出しにくい空気」こそが、最も危険なリスク要因なのです。

参考:ハインリッヒの法則とは

事故防止に必要な心理的安全性とは

では、どうすれば現場の従業員が安心して声を上げられるようになるのでしょうか。キーワードとなるのが「心理的安全性」です。心理的安全性とは「この職場では自分の発言や行動によって不当に非難されることがない」という安心感のことを指します。

別の工場のケースを見てみましょう。先のケースと同じように部品を落とした新人のBさんは、すぐに「すみません、部品を落としました」と声を上げました。責任者は「報告ありがとう。止めて確認しよう」と冷静に対応し、その場で問題を解消。Bさんは「報告してよかった」という経験を得て、以後も積極的にホウ・レン・ソウを行うようになりました。

この小さな成功体験の積み重ねが、事故を未然に防ぐ報告の文化を醸成します。

現場でできるコミュニケーション改善のポイント

心理的安全性を高めるために、ライン責任者や人事担当者が実践できるポイントはいくつかあります。まず大切なのは、叱責ではなく対話で向き合う姿勢です。ミスを指摘する際、「なぜそんなことをしたのか」と感情的に責めるのではなく、「どうすれば再発を防げるか一緒に考えよう」と未来志向で話すことが重要です。

次に、小さな報告を歓迎する風土をつくることです。ちょっとした不安や違和感でも「報告してくれて助かるよ、ありがとう」と声をかけることで、従業員は「言っていいんだ」と感じられるようになります。さらに、責任者自身がオープンに話すことも効果的です。「自分も以前はこんなミスをしたことがある」と共有するだけで、部下の心には安心感が広がります。

現場責任者・人事担当者に求められるマネジメント

心理的安全性を守りながらリスクマネジメントを実現するためには、現場と人事の両輪で取り組むことが欠かせません。現場責任者は、日々の現場で「声を拾う仕組み」を意識的につくる必要があります。例えば朝礼や終礼で「気づいたことはある?」と必ず問いかけることは、小さな改善提案やヒヤリハットの共有につながります。

一方、人事担当者は、教育を通じて風通しのよいコミュニケーションスキルを広める役割を担います。単なるマニュアル遵守の指示だけでなく、「なぜ人は報告をためらうのか」という心理的背景に踏み込んだ教育や情報発信が有効です。このように、現場と人事が連携し、「報告しやすい場」を意識的に育てていくことが、組織全体のリスクマネジメントを強固にします。

声を上げやすい職場が事故を防ぐ

事故の芽を摘むのは、最新のシステムや設備投資だけではありません。「声を上げやすい職場」こそが最大の安全対策です。心理的安全性が確保された環境では、小さなミスやヒヤリハットが早期に共有され、重大事故を未然に防ぐことができます。

ライン責任者や人事担当者が率先して心理的安全性を意識したマネジメントを実践することで、ホウ・レン・ソウの質が高まり、組織全体がより安心して働ける場へと進化していくのです。

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