反発する部下でも自ら考え動く力を育てるコーチングの極意は「傾聴・質問・承認」

部下に指示を出しても、すぐに言い返したり自分の理屈を主張したりして、思うように動いてくれない。そんな悩みは、多くの管理職やリーダーが経験するものです。
従来の「教え込む」指導、つまりティーチングだけでは、反発する部下のやる気や思考を引き出すのは難しいのが現実です。では、どうすれば部下の主体性を育て、自発的に考え行動してもらえるでしょうか。その鍵となるのがコーチングです。
コーチングでは、上司が一方的に答えを与えるのではなく、部下の思いや考え、価値観を引き出すことに重点を置きます。ここで身につけるべき基本スキルは、傾聴・質問・承認の3つです。これらを使いこなすことで、理屈で反発する部下も自分の言葉で考え直すきっかけを得られます。本記事ではコーチングの極意である傾聴・質問・承認の3つの方法に焦点をあてて紹介します。
コーチングのポイント1.傾聴:部下の「思い」を引き出す聞き方
傾聴は、単に話を聞くことではなく、相手の言葉の裏にある考えや感情を理解する意識的な行動です。部下が反発的であっても、まず受け止める姿勢を示すことが信頼関係の第一歩になります。
実践ポイント
- 相手の話を最後まで聞く
部下の発言を遮らず、意見を最後まで聴くこと。途中で口を挟むと「理解されていない」と感じさせる可能性があります。 - 言葉の裏にある意図を読み取る
「これはやりたくない」という言葉の裏に、失敗への不安や知識不足が隠れていることがあります。声のトーンや表情からも情報をキャッチします。 - 共感の言葉で返す
「その考え、よくわかります」「不安に感じる気持ちは理解できます」と具体的に共感すると、部下は安心して考えを整理できます。
具体例
部下が新しい業務に抵抗して「前のやり方のほうが簡単です」と言った場合、上司は「そう感じるのですね。具体的にどの部分が不便だと思いますか?」と傾聴しつつ質問につなげます。
コーチングのポイント2.質問:部下の思考を自分で整理させる技術
質問は、答えを与えるのではなく、部下自身に考えさせ、主体的な意思決定を促す手法です。適切な質問は、部下の意識を内省に向けさせ、新しい行動を導きます。
実践ポイント
- オープンクエスチョンを使う
「はい/いいえ」で答えられない質問を投げることで、部下は自分の考えを言語化しやすくなります。例:「この方法で改善できるとしたら、どんな手段が考えられますか?」 - 選択肢を広げる質問
「他に方法はあると思いますか?」と聞くことで、部下は複数の解決策を考え、自分で意思決定する練習ができます。 - 未来志向の質問「次回同じ状況になったらどう対応しますか?」と将来の行動に結びつける質問は、学びを定着させます。
具体例
新しい業務に抵抗感を示す部下に対して、「このやり方で課題を解決するなら、どんな手順を踏むとよいと思いますか?」と質問し、部下自身に解決策を考えさせます。
コーチングのポイント3.承認:部下のやる気を高めるフィードバック
承認は、単なる褒め言葉ではなく、部下の行動や考えの価値を具体的に認めることです。部下が自分の考えを尊重されていると感じることで、主体性が高まります。
実践ポイント
- 具体的に認める
「頑張ったね」だけでなく、「この提案で問題点を整理してくれた点が素晴らしい」と行動や成果に言及します。 - 強みや成長に着目
部下の長所や努力の積み重ねを承認することで、自己効力感が高まります。 - 叱る場合も承認の一環
叱る際も、まず良い点を認めてから改善点を伝えると、受け入れやすくなります。例:「ここまで正確にデータをまとめられたのは良かったです。ただ、次回は〇〇も確認するとさらに精度が上がります。」
具体例
提案書の作成を任せた部下に対して、「この分析方法を選んだのは適切でした。次回はこのグラフも加えるとより説得力が増します」とフィードバックすると、部下は主体的に改善策を考えるようになります。
このように傾聴・質問・承認の3つを組み合わせることで、反発的な部下でも自分の言葉で考え、行動に移す力を育てることができます。これにより、上司の指示待ちだけの関係から脱却し、部下自身が課題解決に向かう組織文化を作ることが可能です。
コーチングを日常に取り入れる3つのステップ
- まずは傾聴から始める
部下の話を最後まで聞き背景や感情を理解する。反論や修正は一旦置いておくことが重要です。 - 質問で主体性を促す
部下が自分の意見を考え、選択肢を広げられる問いかけを意識的に行います。 - 承認で行動を強化する
部下の考えや行動の価値を具体的に認め、次の挑戦につなげます。
この3つを組み合わせることで、理屈で反発する部下でも、自分の言葉で考え、行動するようになります。
コーチング導入による4つの変化
コーチングを始めて現場で実際に表れる効果は、「雰囲気が良くなった」といった抽象的な変化ではなく、部下の行動・上司の関わり方・組織の成果という三つのレイヤーで、はっきりと確認できます。ここでは、導入初期から中期にかけて多くの職場で共通して見られる変化を、現場目線で説明します。
効果1:部下の反応の変化
まず最初に表れるのは、部下の反応の変化です。コーチングを意識し、傾聴と質問を増やした上司のもとでは、これまで理屈で言い返していた部下や、黙って指示を待っていた部下が、「自分の考えを話してもいい」と感じ始めます。すると、「それは無理です」「前からこうしていました」という防御的な発言が減り、「自分としてはこう考えています」「こうすればできるかもしれません」と、思考途中の言葉が出てくるようになります。これは、主体性が芽生え始めた明確なサインです。
効果2:部下の行動量と質の変化
次に起こるのが、部下の行動量と質の変化です。コーチングでは答えを与えず、考えさせる関わりを続けるため、部下は「自分で考え、決める」経験を積み重ねます。その結果、指示される前に動く場面が少しずつ増えていきます。たとえば、
- 進捗報告が「問題ありません」だけだった部下が、「今こういう課題があり、こう対応しようと思っています」と整理して話す
- 会議で沈黙していたメンバーが、自分なりの案を一言でも出す
といった変化が見られたり、提案件数や改善アイデアの数が増えたりするケースもあります。
効果3:部下の行動量と質の変化
三つ目の効果は、上司側の負担が軽くなることです。コーチングを始める前は、「何度言っても分からない」「結局自分が考えたほうが早い」と感じ、細かく指示・修正をしていた上司が多くいます。しかし、部下が自分で考えるようになると、上司は「答えを出す人」から「考えを整理する支援者」に役割が変わります。その結果、確認や指示にかかる時間が減り、マネジメントの工数削減という実利的な効果も現れます。
効果4:信頼関係とチームの空気が変わる
さらに中期的には、信頼関係とチームの空気が変わるという効果が出てきます。傾聴と承認を重ねることで、「否定されない」「話を聞いてもらえる」という安心感が生まります。その結果、ミスや懸念点が早めに共有されるようになり、トラブルの芽が小さいうちに潰せるようになります。
まとめ:コーチングで部下が動きやすくなる環境を整える
このように、コーチングを導入する効果とは、「人が変わる」というより、「人が考え、動きやすくなる環境が整う」ことです。その結果として、部下は主体的に動き、上司は抱え込みから解放され、組織全体のスピードと質が底上げされていきます。これは一発逆転の手法ではありませんが、日々の関わりを少し変えるだけで、確実に積み上がっていく変化だと言えるのです。
コーチング研修~部下の主体性を引き出すスキルを習得する
ティーチングの目的が、基本的な知識や技能を教え込むこととするのであれば、コーチングの目的は、それぞれが持っている能力ややる気、強みを引き出すことです。
部下のやる気を引き出すのに欠かせない「傾聴」「質問」「承認」の3つのスキルを身につけることに力点を置いています。座学で学んだ後、ケースごとのロールプレイングを行い、コーチングスキルの定着を図ります。
よくあるお悩み・ニーズ
- メンバーの考えを引き出し、新しい価値を生み出したい
- 部下に自立的に仕事をしてほしい
- OJTやティーチングとは異なる視点で、指導スキルを高めたい
本研修のゴール
- コーチングの3つの手法(傾聴・承認・質問のスキル)を部下育成に活用できるようになる
- コーチングの基本プロセス(GROWモデル)を学び目標達成の行動案を策定できるようになる
セットでおすすめの研修・サービス
ティーチング・コーチング実践研修(2日間)
業務指導やOJTの基本となる「ティーチング」と部下・後輩の主体性発揮を促し育成する「コーチング」、2つの指導スキルを学ぶ研修です。
それぞれケーススタディやロールプレイングなどのワークに取り組み、実践的にスキルを身につけます。2つの違いを踏まえて部下・後輩の指導に活用し、相手にあわせた成長の支援を考えます。
リーダーシップ研修~激動の時代に求められる考え方と強かなマインド
コロナ禍により数年分の変化がたった1年で起こったといわれる激動の時代の最中にあって、リーダーにはこれまでにない「タフさ」が求められています。
この新たな時代における勝ち残りを目指すうえで、これまで組織運営を支えてきた「官僚主義」の負の面をどう克服していくかが課題となります。守りに軸を置いた発想を転換し、組織にイノベーションを起こしていくことのできる「強いリーダー」を目指すための、考え方とスキルを身につけていただくための研修です。
部下の育て方研修~面談とフィードバックで経験学習サイクルを回す
かつての「教え込むスタイル」 から、「部下の力を引き出すスタイル」へと育成指導のスタイルが変わってきている中で、1対1での面談を活用する動きが広まってきています。
しかし、その趣旨を理解しないまま形だけ面談を行っても効果は期待できません。この研修では、「経験学習モデル」の考え方に則り、面談を通じて効果的な部下育成を進める方法について学んでいただきます。





