なぜ不動産業界におけるクレームは対応が難しいのか~最前線の担当者が迷わない5つのステップ

不動産会社の現場では、クレーム対応が担当者の大きな負担になりやすい業務の一つです。説明や判断に迷うことが重なり、「どこまで対応すればよいのか」「次に何をすべきか」が見えにくくなることで、不安を抱えたまま対応を続けるケースも少なくありません。
本コラムでは、不動産クレーム対応を個人の感覚や経験に頼らず、建設的な解決へと導くための5つのステップを紹介します。
不動産クレーム対応が現場の不安になりやすい背景
土地分譲、戸建住宅、賃貸管理といった不動産業務では、取引金額が大きいことから顧客への説明事項が多く、高い専門性も問われるため、やり取りが一度で終わらない場面が少なくありません。対応の途中で判断を保留したり、社内確認が必要になったりすることもたびたび生じます。
一方、専門知識をもたないお客さまは、なぜこの確認にこんなに時間がかかるのか、高いお金がかかっているのに手続きが煩雑で不親切、本当にこの担当者を信用できるのかという思いが募りがちです。こうしたことによってクレームが生じやすい傾向があります。
不動産クレーム対応の難しさは、個々人の対応力だけで解決できるものではないという点にあります。次に進むためには、対応をセンスや経験値に任せるのではなく、工程として分解し、それぞれのステップで好ましい行動の目安を持つことが重要です。目の前の不満を早く収めようとするほど、事実確認や判断が後回しになり、結果として対応が長引いてしまう状況から脱却しましょう。
不動産クレーム対応で次に進むための5つのステップ
クレーム対応を立て直すには、現場任せの対応をやめ、ステップとして整理することが欠かせません。実践すべき手順は次のとおりです。
ステップ1:一次対応を「即時判断」から「状況整理」の工程に変える
一次対応では、必ずしもその場で最終的な結論を出すことを目的とせず、まずは何が起きているのかを整理することが重要です。事実と感情を切り分け、今後の対応につなげるための基礎をつくる工程と位置づけます。電話や来店時には、確認事項を決めた順番で聴き取り、その場で判断できない内容は「確認のうえ折り返す」と明確に伝えます。
ここでのポイントは、相手の不満を受け止めつつも、判断には組織への確認が必要であることをきちんと示すことです。判断根拠が十分に整理されないままに回答してしまうと、後から説明の修正や行き違いが生じるリスクが高まります。
具体的な行動例
- 事実確認は「いつ・どこで・何が起きたか」を順に整理する
- 感情的な訴えと要望を分けて聞き取る
- 判断が必要な点は即答せず、確認事項として切り分ける
会話例
- 「本日は状況を整理するためにお話をうかがいます」
- 「上席者の判断が必要な点は、確認後に追ってご連絡いたします」
ステップ2:対応してよい範囲と応じない線を社内でそろえる
クレーム対応が長引く原因の一つが、担当者ごとの判断の違いです。設備不具合、契約条件、近隣トラブルなど、よくあるケースについてどこまで対応するのかを事前に整理しておきます。
対応の線引きが曖昧なままでは、現場の担当者は不安を抱えたまま判断を迫られます。社内で基準をそろえることで、説明に一貫性が生まれ、迷いを減らすことができます。
具体的な行動例
- 「必ず対応する事項」「条件付きで対応する事項」「対応しない事項」を分類する
- 代替案を提示できる範囲を決めておく
- 判断基準を文書で共有する
会話例
- 「この点については、当社として対応できる範囲が決まっています」
- 「ご要望すべてには応じられませんが、○○についてはこちらの方法で検討できます」
ステップ3:二次対応へ切り替えるタイミングを明確にする
一次対応者が「どうしよう」と抱え込み続けると、クレームはこじれやすくなります。一定の条件を満たした場合には、管理職や責任者が対応する仕組みを作っておくことが望まれます。二次対応者は、会社としての対応の謝罪と、ご意見やご要望を受け止めている、理解(ただしそれに応じるかどうかはまだ確定させていない)ことを示したうえで、組織判断や着地点を明確にする役割を担います。対応者が変わることで、感情のもつれが整理される効果も期待できます。
具体的な行動例
- 同じ要望が繰り返されているかを確認する
- 金銭や補償の要求が出た時点で対応者を切り替える
- 一次対応者が精神的な負担を感じたら速やかに共有する
会話例
- 「この件は管理職が責任を持って対応します」
- 「組織としての判断が必要となるため、担当を変更させてください」
ステップ4:感情的・過度な要求は組織対応を前提にする
感情的な訴えが強い場合や、要求内容が契約・社会通念を超える可能性がある場合には、担当者一人で判断しないことが極めて大切です。個人対応を避け、組織としての対応方針を確認することで、相手から無用な約束を取りつけられたり、こちらからの説明がブレてしまったりなどのトラブル拡大を防げます。
具体的な行動例
- 対応内容を必ず複数名で確認する
- 記録を文字や音声に残し、口頭だけで完結させない
- 一人で判断しないことをルール化する
会話例
- 「社内で方針を確認したうえで回答します」
- 「わたくし個人での判断ができかねる内容です」
ステップ5:クレームを記録し、必ず次に反映させる
クレーム対応の中には、終わった瞬間に忘れてしまいたいと思ってしまうものもあるでしょう。しかしそうしてしまうと、以降何度も同じ不安が頭をよぎることになります。発生理由と対応内容を整理し、次の業務に生かすことで、対応件数そのものを減らせます。
記録はいち担当者への評価や責任追及のためではなく、再発防止や説明力の向上、判断基準の共有によって、現場全体を楽にするためのものです。
具体的な行動例
- 発生原因と説明不足のポイントを整理する
- 対応の判断理由を残す
- 同様の事案が起きた場合の対応方針を明確にする
工程を順に踏むことで不安は減り、信頼は積み上がる
5つの工程が現場で周知されると、クレーム対応は特定の担当者の経験や我慢に頼る業務ではなくなります。判断や説明の軸がそろうことで対応に一貫性が生まれ、職場全体が落ち着いて次の行動を選べる状態に近づきます。その積み重ねが、地域のお客さまに安心感を与え、不動産会社としての姿勢を伝えることにもつながります。
こうした土台を築くには、日々の業務のひとつと終わらせず、一次対応や説明の考え方、管理職の判断軸を体系的に整理する機会を持つことも有効です。個人の問題にせず、部署の業務工程として見直し、全員が確実に実行していくことが、信頼され続ける組織となる近道なのです。
クレーム対応研修~不動産業界向け(1日間)
不動産業界に特化したクレーム事例を用いて、受講翌日から実践できる対応スキルを身につける研修です。まずはクレームが発生する要因や、対応の4つの基本手順を理解します。そのうえで現場で習得した知識を落とし込むために、ロールプレイング演習を繰り返します。クレームに組織的に対応する仕組みづくりについても解説し、クレームそのものの削減と、対応者の負担・ストレスの軽減方法も得られます。
本研修のゴール
- お客さまが期待している以上のレベルの対応ができているか(CSを満たしているか)を考える
- 不動産業界の事例に特化したトラブル事例や必要な法律・条例・判例の知識などを知る
- クレームをこれ以上大きくさせない4つの基本手順を理解する
- 基本手順に沿ったクレームのケース別対応方法を実践できるようになる
よくあるお悩み・ニーズ
- 怖くてじっくりお客さまの話を聞くことができず逃げ腰になる
- クレームを受けると緊張してしまい、つい早口になる
- お客さまに事務的な印象を与え、クレームをさらに炎上させてしまう
セットでおすすめの研修・サービス
不動産業界向けアフターサービス強化研修
扱う金額が大きく競合も多いため、「家を売る」のではなく「人生を豊かにするための生活基盤を売る」ソリューション提案の発想が欠かせません。アフターサービス部門においては、決まった点検作業に留まらず、いかによりよい邸宅にしていくかを顧客視点で考えることでビジネスチャンスにつなげられます。
本研修では、サービスの基盤となるマナーとコミュニケーションを総点検したうえで、お客さまと一歩踏み込んだ信頼関係を築くスキルをケーススタディで体得します。
クレーム対応研修~臨機応変なコミュニケーションでリスクを低減する
組織戦略として応対品質向上に取り組む組織が増え、サービスレベルの差が広がることにより、相対的にこの対応が遅れている組織の問題が目につくようになっています。クレーム発生の場面において、顧客の期待水準を下回っている状態でさらに不適切な対応をしてしまうと、当該案件の売上機会の消失のみならず、問題の泥沼化、SNSでのネガティブコメント拡散によるブランド毀損に繋がります。クレーム対応スキルの向上は、リスクマネジメントにおける重要な施策です。
本研修では、クレーム対応の「準備」に焦点を当てて、プレッシャーを感じてしまいがちな厳しい場面でもスムーズにお客さまの意向や要望を汲んだ対応ができるようになることを目指します。
リーダーのためのクレーム対応研修~顧客の信頼を回復するための2次対応スキル
クレーム二次対応の基本手順を理解するとともに、一次対応時に失ってしまったお客さまの信頼を回復させるポイントを学ぶ研修です。相手に納得感を与え、その対応でファンになっていただける対応を目指します。ケーススタディやロールプレイングをふんだんに盛り込んだ実践重視のプログラムです。






