製品3層モデル、デザイン思考、アンゾフの成長マトリクス~「売れる」製品開発のために知っておくべき3つのこと

どれだけマーケットを理解しても、それだけではヒット商品は生まれません。逆に画期的なアイデアがあってもマーケットを理解していなければ、ヒット商品にはなりえません。
製品開発とは、単にアイデアを形にするだけではなく、市場に受け入れられる商品を生み出すプロセスです。ここでは製品開発に携わる人間が知っておくべき3つの点について考えます。
製品とは何かを理解する「製品3層モデル」
皆さんの周りにはたくさんの「製品」が販売されています。一般的には製品とは手に取れるパッケージであり、デザインであり、品質です。しかしながら、製品は見た目や使用感のみならず、より総合的なものです。
まず製品の価値構造を3層にすることによって整理するマーケティングフレームワーク「製品3層モデル」をベースに考えることで「製品とは何か」を理解することを習慣化していきます。
- 製品のコア:中核となるベネフィット・サービス
- 製品の形態:パッケージ、ブランド、特徴、品質水準、デザイン
- 製品の付随機能:納品・支払い方法、設置、アフターサービス、保証
例えば「自動車」で考えてみましょう。製品のコアは移動であり、輸送です。製品の形態は走行性能・居住性・燃費性能・内装・デザイン・安全装置などです。製品の付随機能は無料点検・納車サービス・整備などです。
顧客のニーズを捉える「デザイン思考」
どんなに市場調査を続けても、Apple社のiPhoneが生まれることはありません。例えば、馬車しか走っていない時代に「次にどんな乗り物が欲しいか」を消費者に尋ねても「自動車」という答えは返ってきません。つまり「今、存在しないものを欲しいとは言えない」=「消費者は自分の真のニーズを言語化できない」ということです。
市場調査だけでは潜在的なニーズに到達できないのとなると、どうすれば良いのでしょうか?
デザイン思考とは
製品開発においてはデザイン思考が有効と言われています。デザイン思考は以下の5つのステップを非直線的に繰り返し、徐々にアイデアを完成へと近づけます。
- 共感(Empathy):ユーザーの現場に行き、ユーザーを観察
- 定義(Define):ユーザーの真のニーズをあぶり出す
- 発想(Ideate):真のニーズを満たすアイデアを検討する
- 試作(Prototype):アイデアを端的に伝えるプロトタイプを作成
- 試行(Test):ユーザーからのフィードバックを得る
最初の「共感」フェーズにおける「観察」が製品開発においては重要です。例えば、アキレス社の大ヒットシューズ「瞬足」は小学校の運動会の観察を続けたことによって、ほとんどの「トラックが左回りである」ことを発見し、転倒しづらい「左右非対称のソール」のアイデアにたどり着きました。
市場を整理し、創出する「アンゾフの成長マトリクス」
製品開発を考える際に、よく使われるフレームワークに「アンゾフの成長マトリクス」があります。これはイゴール・アンゾフ(1918-2022)氏によって提唱されたマトリクスで、事業の成長を「製品」と「市場」の2軸におき、その2軸をさらに「既存」と「新規」に分けて表した企業の成長戦略をシンプルに表現したマトリクスです。
市場浸透戦略 ~既存製品を既存の技術で改良
「既存製品を既存の技術で改良する」象限です。例えば「売れ筋プリンターの印字スピードをさらに上げる」や「高シェアの即乾ドライヤーの消費電力を下げる」などの製品開発がこれにあたります。
新市場開拓戦略 ~既存技術を活かして新市場に向けて製品を開発
「既存技術を活かして新市場に向けて製品を開発する」象限です。「男性にしか売れないと思われていた商品を女性に売る」、「現在、女性専用であるサービスを男性向けにアレンジする」発想です。
新製品開発戦略 ~既存製品を新規技術で革新
「既存製品を新規技術で革新する」象限です。例えば、コンビニのキッチンにフライヤーをおいて揚げたて総菜を提供する。飯釜で炊き立てご飯を提供する」発想です。
多角化戦略 ~新規技術を使って新市場で新製品を開発
「新規技術を使って新市場で新製品を開発する」象限です。Apple社のiPhoneの戦略です。「スマートフォン」という新たな市場を創出しました。
いかがでしょうか?こうして整理してみると、自社製品に置き換えても比較的簡単に発想できると思いませんか?
製品開発は特別なことではなく、基本を押さえると、ハードルはそれほど高くありません。製品開発は、単なるアイデアの実現ではなく、市場に適した商品を生み出すための戦略的なプロセスです。基本を学び、計画的に進めることで、成功の可能性を高めることができるのです。
※iPhoneはApple Inc.の商標です。瞬足はアキレス株式会社の登録商標です
製品開発のためのマーケティング基礎研修
本研修では、製品戦略及び市場戦略の概要について理解し、どのような考え方に沿って製品やサービスを企画・開発・展開していけばよいかを一連のプロセスとして学びます。
本研修の目標
- 製品計画と製品戦略を行う上で必要な事柄を理解できる
- 製品開発戦略と新製品開発の進め方を理解できる
- 製品の改良と新用途開拓・製品多角化を理解できる
- 製品ライフサイクルとイノベーター理論を理解できる
対象者
- 製品開発に関わる中堅~管理職の方
- マーケティング業務に携わるようになってまだ日が浅い方
受講者の声
- 製品開発、新規商材の取り組みに、本日学んだツールを活かしたいと思います。市場・ニーズ・ターゲットに向けた商品の投入と規在商品を育てていきます。
- 研修を通じて、会社のマーケティング戦略と不足している部分が見えてきたので、それを踏まえて新製品開発をしたい。
- 自社製品の開発段階でのプロセスで、売れるか売れないかがある程度わかっておくべきことを今後に活かす。製品改良と新用途開拓の社内提案に役立てていく。
セットでおすすめの研修・サービス
顧客インサイト発掘研修~潜在ニーズを見つけ出す編
顕在化したニーズに対応する商品・サービスは、すでに世の中にたくさんある中で、言葉として表されることのない顧客の本音を見つけ出し、それに応えるモノをいかに早く提供できるかが今問われています。本研修では、そうしたニーズをキャッチし、形にしていくスキルと手段を身につけます。
デザイン思考研修~イノベーション実現のプロセスを学ぶ
デザイン思考は、デザイナーが実践してきた手法を基に考え出されたイノベーション実現のプロセスのことです。多様な顧客ニーズに応える新しい商品・サービスを生み出したり、不連続な成長に資するアイデアを出すための思想、プロセスとして注目されています。
本研修では、デザイン思考の概要と、その5つのプロセス(共感・定義・発想・試作・試行)について学びます。実際にグループでデザイン思考を使ってアイデアを考えていただくワークを実施し、職場での実践につなげていただきます。
新市場開拓のための戦略研修~新たな市場を見つけるフレームワーク
成熟したマーケットにおいて業容を拡大していくためには、新たな市場を開拓していくことが欠かせません。本研修では、様々なフレームワークを使って新市場の開拓の可能性を探り、具体的に貴社の商材に当てはめたワークを通じて、組織戦略の立案に役立てます。