「デキる社員に仕事が集まりすぎる」を変えるには~優しい人が損をしない組織づくりと、上司・人事が講じるべき策
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どの職場にも、「あの人に任せておけば安心」と言われるデキる社員がいます。
責任感が強く、仲間を思いやる姿勢でチームを支えている存在です。しかし、その優しさに甘えすぎているということはないでしょうか。
「うまく仕事を進められない社員を助けてくれるから」「間違いなくものごとを進めてくれて頼りやすいから」といった理由で、業務が一部の社員に集中すると、過労やメンタル不調を招き、組織全体のパフォーマンスも低下します。
本記事では、「デキる人ほど損をする」構造をどう変えればよいのか、上司と人事部の視点から解決策を考えます。
なぜ優秀な社員に仕事が集中するのか~職場の構造的な問題
「優しい人ほど疲弊する」~助け合いが不公平を生む瞬間
他者に手を差し伸べられる人ほど仕事を抱え込みやすい傾向があります。特に、「自分がやった方が早い」「困っている同僚を放っておけない」と考える社員は、気づけば周囲の業務まで背負ってしまいます。いわゆるギバー気質のメンバーです。
一方で、デキない社員の中には、助けてもらうことを前提に動く人も存在します。こちらはテイカー、日本ではスライサー気質のメンバーです。自分が担当する業務であるにもかかわらず着手を後回しにして、周囲が気づいてくれるのを待つような態度が「甘え」や「依存」を助長させ、チーム全体の不均衡を招きます。その結果、次のような悪循環が生まれます。
- デキる社員に仕事が集まり、残業時間とミスが増えることも
- デキない社員がさらに仕事をしなくなり、成長機会をどんどん失う
- チームの総合力が下がる
- デキる社員の不満が蓄積し、離職やメンタル不調が発生する
「優しい人ほど損をする」状況、誠実な人が損をする職場を放置すれば、組織そのものを蝕みます。
上司の采配が偏りを助長することもある
このような不均衡を放置してしまう最大の原因は、上司の采配と評価の偏りです。「Aさんに任せた方が早い」「Bさんに任せると手戻りが多くなり、自分のフォローが増えて非効率」などと単純な判断を下すと、Aさんのようなデキる社員にばかり負担がかかります。気がついたら自分ばかりが苦しいのに、上司も見て見ぬふりをしている、長時間労働が続いて眠れなくなり、チームの誰も信用できないと心を閉ざすこともままあります。
もしここでAさんの努力を正当に評価しなければ、上司はマネジメント力の欠如を自ら証明しているようなものです。チーム全体の成果は、リーダーがどれだけ公正に業務を配分し、全員の能力を引き出せるかにかかっています。一部の人に依存する組織運営は、長期的には上司自身の評価や信頼をも損なうリスクがあります。
不公平を生まないために、上司が取るべき3つの行動
そもそもですが、よくデキるメンバーというかけがえのないリソースを、デキないメンバーの業務の補填に用いるというのは、非常にもったいないことです。「チームの更なる売上アップのための施策」「新しい事業への挑戦」など、イノベーティブな活動に導くことを常に意識します。
① 業務の属人化を可視化する
まず、「誰がどの仕事をどれだけ抱えているか」を見える化することが第一歩です。業務棚卸しやタスクマップを使い、作業量と責任範囲を整理します。属人化の実態が把握できれば、「○○さんしかできない業務」を他のメンバーが担うことができるよう、勉強会の実施や担当業務をローテーションさせます。
実はこんなこともやってくれていたのか...とチームメンバーは驚くことになるかもしれません。控えめで気が利くメンバーの細やかな気遣いや精度の高さは、他者が同じことを実践したときに分かります。裏をかえせば上司がこのプロセスを怠ると、優秀な社員ほど疲弊し、組織のリスクが静かに膨らんでいくことを意味します。
② 「支援行動」も正当に評価する
成果だけを評価軸に定めていると、他者を支えた社員の努力が報われません。上司は、「数字に現れない貢献」を見逃さない視点を持つ必要があります。具体的には、次のような行動を評価対象に含めます。
- 同僚のスキル習得を支援している
- トラブル時に冷静にフォローしている
- チーム全体の効率化に貢献している
「支援力」を評価に組み込むことは、単なる温情ではなく、組織の持続力を高めるマネジメント判断です。周囲を助けてくれるメンバーの頑張りを目に見える形でフィードバックし、チーム力の向上に取り組んでくれたことを認めることが重要です。
③ 頼られすぎを防ぐルールを明文化する
いくら温厚篤実な社員であっても、際限なくフォローする状況は決して好ましいものではありません。これを防ぐには、「どこまで助けるか」のラインをチームで定め、合意することが大切です。
例えば、「業務の質問はまず上司に」「作業の依頼は担当者を経由して」など、助け方のルールを明確にすることで、過剰な依存を防げます。自己中心的な先輩メンバーの中には、立場的に断れない優秀な後輩に「これ、いつもみたいにやっといてよ」と自分の仕事を丸投げし、成果を横取りする場合もあります。そのような要領だけよい社員に甘えた行動をさせない、決して許さないチームであることをはっきりと認識づけましょう。
デキない社員には「助けてもらう前に、自分で何を試したか」を報告させる運用も効果的です。こうしたルールを設けることで上司が責任を持って負荷をコントロールしていることが明確化されます。
人事部が果たすべき役割~評価と配置で支える
公正公平な評価制度で「努力が見える」仕組みをつくる
人事部では、社員の成長のすべてを上司に任せるのではなく、支援行動を正式に評価項目に組み込む制度設計を検討する必要があります。360度評価や同僚フィードバックを導入し、他者を支えた行動を客観的に見える化します。数値成果だけでなく、「チーム全体を支え、他部署との連携を円滑にする力」なども評価対象にすることで、真の貢献が報われる仕組みになります。
適正配置で「頼られすぎ・頼りすぎ問題」を防ぎ、次世代リーダーを生みやすい環境に
特定の社員に業務が集中している場合、配置そのものを見直す必要があります。スキルや経験のバランスを踏まえてチームを再構成し、負担の均等化と成長機会の公平化を図ります。また、人事部はこのような「デキる人」の心身の健康を守り、キャリアの選択肢を提示し、将来的に組織を牽引するリーダーとしての成長を支援することが重要です。
優しい人が報われる職場は、上司と人事の腕にかかっている
「デキる社員に仕事が集まる」という現象は、上司のマネジメント力不足と組織運営の仕組みが生み出した結果です。上司が部署の業務を適切に見える化し、人事部が支援行動を評価項目に組み込み定着させることで、優しい人が損をしない文化が育まれます。
真に強い組織とは、デキる人もデキない人も疲弊せず、全員が適切に成長できる職場です。その実現には、上席者と人事、現場のチームメンバー全員の意識改革が欠かせません。
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