DXに関する費用と判断軸|DXの方法論4
経営判断には「いくらかかる」は重要であり、マネージャーはDXに関する費用についても知っておくべきです。
生成AI導入費用~タダではありません
例えば、2025年9月現在、代表的な生成AIであるChatGPTの法人向けを100名で利用した場合、為替レートの影響もありますが、月額、約368,500円(年契約)〜442,200円(月契約)となります。年額で約400~500万円というところです。CopilotやClaudeもほぼ同額程度となります。この金額が分かれば、社員1名分以上の業務が効率化できるから、生成AIを導入すべきという判断ができます(もちろん、初期の教育費用は別途必要ですが)。
また、代表的なASPで、営業支援ソフトのセールスフォースを導入した場合、価格見積もりなどの機能がついた拡張機能版などの構成なら100名利用で月間約147万円、年額で1千7百万円規模の試算となります。他にも、RPAツールなら年間120万円、マイクロソフトのメールサービスなら、500名用で年間250万円程度の費用がかかります。
PC利用時の電気代、PCの修理代金、クラウド利用料金、システム開発費用が1人あたり月いくら、などという相場は知っておいて損はありません。
システム化・ASP導入の判断軸【その1】~月間処理件数300件
業務のシステム化やASPの導入は、費用対効果を厳密に考えて導入すべきですが、毎回厳密な調査をしている訳ではありません。実施には月間約300件、一日15件ぐらい同じ事務処理が発生していた場合、導入するとしています。
なぜ300件かというと、だいたいどんな事務処理でも、処理の準備から完了するまでの時間を、1件あたり平均すると3~6分程度になります。月間で考えると、15時間から30時間かかっていることになります。1分の作業コストを50円(年収600万円で計算)すると、月間4万5千円~9万円の人件費になります。作業時間が半分になると想定すれば、廉価なASPや小規模なシステム開発なら採算があうと考えます。
また、逆に言えば月間300件より大幅に少ない業務なら、生成AIを活用したり、ExcelなどOAツールを利用するのが費用対効果にあうのです。
システム化・ASP導入の判断軸【その2】~60ヶ月ルール
ASPを導入すべきか、自社開発のシステムを利用すべきかの判断は「60ヶ月ルール」を導入しています。これは開発したソフトウェアの償却期間が5年であることから転じ、60ヶ月で開発の元が取れるなら、外注か自社開発で自社独自ソフトウェアを作ろうという考え方です。
例えば、ASPの利用料金が月額10万円かかる場合、開発費用が600万円未満であれば、自社での開発を検討するというものです。実際のところは開発リソースや緊急性から、そうなっていないことも多いですが、一応、こんな判断軸でも導入可否を考えています。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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