株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

会議はムダ?答えはNO、やり方次第ではマネージャー最大の武器に|コミュニケーションの方法論2

同シリーズでは、インソース社長である私の「コミュニケーションの目的=情報の流通量を最大化すること」という考え方に基づく、実践を紹介しています。

情報は使っても減らない資源です。弱い組織でも情報の活用次第で勝機が生まれると考え、情報を一人に留めない工夫を徹底してきました。今回のテーマは会議です。

会議は悪者じゃない~内容とやり方次第

マネージャーの仕事は、極論でいえば、チームメンバーに仕事をうまく割り振る事だと思います。私は、会議を「自ら課題を明らかにし、メンバーにその重大さを認識してもらい、状況に応じて皆に新たな仕事を担ってもらう場」として活用してきました。こういった会議は有効です。

悪い会議とは、マネージャーが自らの情報収集のために開く様な会議です。大事なのはその後、何をすべきか決める事なのに。

会議こそマネージャーが、多数のメンバーと同時にコミュニケーションを取れ、仕事を進める事に使えるツールだと思います。

①会議はマネージャー主導で実施すべき

マネージャーの仕事は、目標をどんな方法で達成するかを自ら考え、具体的に示す事です。そして、メンバーの役割を決めて、メンバーが仕事に取り組む様に仕向けます。よって、会議もマネージャー主導で計画し、開催すべきものです。

私は業績不振につながる「ヤバイ事」があれば、定例会議を待たず、即座に適切なメンバーを集め会議を開催する様にしています。メンバーにはいい迷惑ですが、課題への対処は、早ければ早いほど良い結果が出ます。

もちろん、会議の前に情報収集が終わっているもので、会議は決定や指示の場であるべきです。

②施策のスピードアップを実現~会議は課題を洗い出す場

上司が部下の支援をすれば、部下は信頼してくれます。とは言っても、マネージャーが部下の代わりにコピーを取る様な簡単な仕事を代行しても、時間の無駄です。

部下の若手にはできない事、例えば、調査不足、顧客や他部署との折衝不足・調整不足、部下の業務知識不足で気づかない事を洗い出す会議なら、どんどんやるべきです。

多様な視点で部下の課題を見つけ、指示を出す

具体的には、多様な視点の提供で課題を発見します。顧客の視点、利益の視点、コスト・効率の視点、社会常識の視点、内部統制の視点(購買時、複数見積を取っているか?)、リスク管理の視点、生産性の視点などで課題を見つけ出して指摘すべきです。

ただ、会議の場で部下に詰問する様に質問を投げるのは止めておきましょう。質問は部下に対する攻撃とみなされ嫌われます。

課題が分かれば戦術を変更するのみ。素早く対策を指示します。

③頭の整理のための会議は有効~準備して積極的にやるべき

業績向上やリスク管理のためのフレームワークを事前に作成し、参加者全員で問題を洗い出し、頭の整理をするワークショップの様な会議も有効です。会議の時間は、参加者全員が問題の洗い出しに集中せざるを得ないので、一気に問題点が明確になり、課題解決のスピードアップが可能になります。

リスクマトリックスを作る~リスク項目の洗い出しには特に有効

リスク管理はマネージャーの仕事の中でも特に重要です。リスクは洗い出せば減るという特性があります。会議の場で、多くのリスク項目を即座に洗い出し、リスクマトリックスを作成して、発生頻度が高く、発生した場合の損害額が大きいリスクを明確にします。

リスクマトリックス

具体的には、一人10個ずつリスクを洗い出し、ホワイトボード上に作ったリスクマトリックスに議論しながらプロットしていきます。1~2時間で立派なリスクマトリックスが完成します。

④業務報告だけの会議はやらない

チーム一人一人の進捗報告を会議の場で実施するのは、好みません。メールやチャットツールで現状が分かれば充分だし、進捗が遅れていれば、どうすればよいか一緒に、いろいろ考えてあげる必要があるので、わざわざ全員を集めて聞く話ではないのです。

業務を記録すれば業績は上がる

私はよく、一日の仕事内容を記録するのをお勧めしています。各個人にとっては、日々の振り返りになるし、記録があれば、マネージャーは部下へ個別にアドバイスでき生産性が上がります。一時流行したレコーディングダイエットと同じ原理です。ツールはなんでもよいですが、Microsoft office365やGoogleカレンダーなどに集約するのが良いと思います。

⑤会議のためだけの資料はできるだけ作らない

私は、マネージャーである自分のための資料を部下に作成させるのを好みません。そんな時間があれば、業務の実行量を増やすことを優先すべきだと考えています。なので、インソースでは、稟議書の様な判断のエビデンスとして必要な資料や、社内外に配布する資料は別として、会議の場で一度しか使わない資料は作らない様にしています。作ってもA4、1枚程度を限度としています。

会議は組織を動かすために必要なツール

会議は「悪者」ではなく、マネージャーが組織を動かすために必要なツールです。

大切なのは、情報収集や進捗確認の場にしないこと。課題を特定し、方向性を示し、決定と指示を行う会議には価値があります。目的が明確で、参加者の時間を最大限に生かす会議運営こそ、マネージャーの成果を左右するといえます。

本コラム「コミュニケーションの方法論」シリーズでは続いて、「面談で部下の信頼感を醸成」「職場コミュニケーションの基本は報連相+指示」についてお伝えします。

ロジカル・ファシリテーション研修~会議中の意見をわかりやすく整理する

本コラムで紹介したリスクマトリクスの作り方など、論理的思考に基づいて議論を進行するためのスキルを身につける研修です。

ロジカルシンキングのフレームワークを、どのように会議や議論の場に取り入れるのかを学びます。その上で、議論の材料を集めたいときや、ややこしい問題を整理したいときなど、議論におけるシーン別に有効なフレームワークを用いて演習を行います。

よくあるニーズ・お悩み

  • ついつい、議論が脱線してしまう
  • 意見が拡散するばかりで、結論が曖昧になる
  • 話すうちに問題の本質が見えなくなり、議論が空回りする

本研修の目標

  • 会議の場に論理性が必要な理由を理解する
  • 会議の場でのフレームワークの使い方を身に付ける

>公開講座の詳細はこちら

<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

セットでおすすめの研修・サービス

生成AIプロダクト「AI-OJT」

現場での事故や不祥事を未然に防ぐ教育を、もっと実効性のあるものにしたいという企業の声に応える形で誕生したのが、事故予防に特化した生成AIプロダクト「AI-OJT」です。

「AI-OJT」は、社内に蓄積されている事故報告書などの文書をAIが自動で解析し、数分でケーススタディ教材を生成する仕組みを提供します。これにより、企業ごとの実態に即した教育コンテンツをスピーディーに内製化でき、従業員一人ひとりにとってリアルな学びを実現します。情報共有の新たな形を、ぜひご体験ください。

>AI-OJTの詳細はこちら

会議の効率化と参加意識向上を両立するスキルアッププラン

組織のお悩みや課題に合わせて、最適な提案をするコア・ソリューションプランの一つです。ファシリテーションや根回しに必要なスキルを向上させ、会議の効率化を図ります。

同時に参加者の発言力向上や会議内容を共有化し、全社員が業務に関与できる組織をつくります。

>プランの詳細はこちら

管理職向け意識調査|人材アセスメントサービス

課題発見・戦略思考・部下育成などの管理職層に必要なスキルをどの程度意識できているか、自己評価により見える化します。

例えば、管理職研修を企画する際に事前調査として行うことで、自組織の管理職層全体の強みや課題が分かり、より効果の高い教育が実現できるようになります。調査結果は、管理職を中心とした全社の人材育成体系・人事評価制度の見直しに活用することもできます。

>管理職向け意識調査の詳細はこちら

コミュニケーションの方法論シリーズ

  1. 本当にあった「朝礼の導入」で業績が伸びた話|コミュニケーションの方法論1
  2. 会議はムダ?答えはNO、やり方次第ではマネージャー最大の武器に|コミュニケーションの方法論2
  3. 離職防止を実現する面談のコツ~不幸・失敗が9割の自己開示でスタート|コミュニケーションの方法論3
  4. マネージャーが仕掛けるべき「チームの勢い」の作り方|コミュニケーションの方法論4

関連研修シリーズ