本当にあった「朝礼の導入」で業績が伸びた話|コミュニケーションの方法論1
私は一人でいるのが好きなタイプです。パーティや宴席でも絶えず浮いてしまっています。明るくきらきらとした人柄で部下を魅了し、マネージャーシップを発揮するような事ははまずできません。
それでも、20代からシステム開発のプロジェクトマネージャーやインソースの社長として、コミュニケーションを活用してきました。本シリーズでは、そんな私のコミュニケーション方法論を書いてみたいと思います。
コミュニケーションの目的は「情報の流通量を最大にすること」
「情報はいくら使っても減らない特別な存在である」。
インソースを創業した直後、大学時代に聞いた、この言葉を思い出しました。原材料や資金は使えば減るし、人は働けば疲れてしまいます。一方、情報はいくら使っても減ることはありません。ゼロから事業を立ち上げたインソースの様な弱い存在であっても、徹底的に情報を活用すれば、勝てるチャンスが生まれるかもと考えました。
そこで、商談の中で日々発生するさまざまな情報を、一人だけに留まることがないように、どんどん流通させるようにしました。例えば、ある担当者の営業好事例を他の担当者が提案書として再利用したり、WEBサイトの原稿にしたり、メールやFAXに加工して多数のお客様に流したり、などをすれば、勝てるのではと考えたのです。また、朝礼、会議などで情報を流通させる事でも生産性を上げてきました。
朝礼はマネージャーのコミュニケーションツール
朝礼のコストは年間2億1千万円
朝礼は最も基本的な、マネージャーのコミュニケーションツールです。組織全体をよりよい方向に動かすために使わない手はありません。
インソースでは、2025年現在、グループ全社員700名参加の朝礼を、週2回実施しています。改めて、この朝礼にかかるコストを試算してみると、700名×2時間/週×時給3千円×50週=2億1千万円/年とびっくりするぐらい巨額になっています。朝礼は参加するのも開催するのも面倒で億劫ですが、コストと苦労に見合う効果はあると思っています。
業績を上げる秘訣は2つだけ~認知度向上と朝礼の実施
私が銀行の次に勤めた、写真チェーンでのお話です。わずかな期間で業績不振店を次々に立て直すフランチャイズオーナーがいました。
秘訣をお伺いすると、変える事はたった2つ。
1つ目は、入り口の「ねこのディスプレイ」の位置を毎日変え、お客様に小さな驚きを与えること。
2つ目は、毎朝朝礼を実施することでした。
『お客様の店舗への認知が高まり、社員がやるべき事を理解し実行すれば、業績はあがる』との事でした。私が起業して22年、まさにその通りでした。
業績を上げる朝礼の方法と内容
創業当初は全員集まって朝礼を実施していましたが、現在は全国の社員がオンラインで参加しています。内容は受注状況、各部で開発した新コンテンツの概要、営業担当者が集めてきた売れ筋情報、トラブル・クレームがあればその内容など、あらゆる情報の共有を目指しています。
加えて、創業以来ずっと、毎週、その時の私の考えを1枚のパワーポイントにまとめ、自社の課題として発表しています。
創業期、朝礼で抜けモレ防止を緻密に実施
創業時は9時30分始業、朝礼もなし、業績は大不振。8時30分始業にして毎日朝礼を実施したら、業績は大きく伸びました。朝礼でやるべき事を指示し、事前に抜けモレを防げたのが大きかったのだと思います。当時朝礼でやっていたことは、後々システム化・仕組み化したため、現在、朝礼は週2回実施に落ち着いています。
朝礼は自分がやるべき事の方向性をあわせる場
朝礼は他者のトラブルやミスの事例を学ぶ場であり、インソースの様に若手が多い組織においては、判断力向上のための場でもあるのです。朝礼を通じて、ミスを減らしたりすることで、業績向上のスピードを上げる事ができます。
朝礼は一体感をあげる効果があり、モチベーション評価ツールにも使える
朝礼は面倒ですが、皆が参集するのは、ルールで決まっているからだけではなく、集まる事で安心感を持つからだと思います。ディスプレイ越しでも同じ時間を共有すれば、一体感は高まります。
朝礼は理由があれば欠席できます。ただ、欠席しがちな人は仕事に対するモチベーションが落ちている事が多く、退職してしまう人もいると感じています。そのため、不参加者には人事から声をかけてもらっています。シンプルなことですが、こうしてモチベーション評価ツールとしても朝礼を活用しています。
朝礼で話しても意味がないこと
よく朝礼でスケジュールの共有をしている場面を見ますが、はっきり言って時間の無駄だと思います。メンバーが何をしているか知りたいときは、スケジュール管理ソフトを見ればいいだけで、わざわざ発表する必要はないのではないでしょうか。朝礼で発表すべきなのは、共有をしてメンバーの利益になる情報です。
朝礼を業績を底上げする「情報循環の装置」にする
朝礼は、単なる儀式ではなく、組織の生産性と業績を底上げするための「情報循環の装置」とすることが重要です。コストが大きいからこそ、共有すべき価値ある情報を集め、組織全体の動きを整える場として最大限に活用するべきでしょう。
本コラム「コミュニケーションの方法論」シリーズでは、続いて「会議の方法論」「面談で部下の信頼感を醸成」「職場コミュニケーションの基本は報連相+指示」についてお伝えします。
段取り研修~管理職としての基本的マネジメントスキルを理解する
管理職にとって必要な「段取り」とは何か。それは、組織を維持・拡大し、業務改善及びその支援をするために必要なものです。「部下育成・指導」「業務改善」「目標管理」「リスク管理」の4つの能力から構成されます。
本研修では、管理職に求められる役割を、上司・部下の視点から改めて認識します。そのうえで、成果をあげる管理職に必要な3つのマネジメントスキル「①部下指導・育成力、②業務管理力(推進・改善) 、③リスク管理力」を習得します。
よくあるニーズ・お悩み
- 管理職業務をしていく上で、マネジメントの考え方や手法を一から学びたい
- 管理する立場から上司や部下とのコミュニケーションの取り方を知りたい
- 目標管理やリスクマネジメントの具体的なポイントが分からない
本研修のゴール
- 求められる役割への認識強化
- 部下育成~具体的な「ほめ方」「叱り方」などの指導方法
- 業務改善~組織の改善対象を具体的な行動計画書に落とし込む
- リスク管理~「起こり得る可能性」と「影響度」からリスクの優先順位をつけ、対策を考える
<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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