株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

「生成AI活用基盤」を構築しデータ整備をする|DXの方法論6

今まで、DXを社内で推進する方法を、組織論的に説明してきましたが、生成AI活用の鍵は社内外の「データ」に着目することです。この「データ」を生成AIで利用できる形で、データウェアハウス(情報倉庫)保存することが極めて重要です。私はこれを生成AI活用基盤と呼んでいます。これがないと、生成AIの効果は、限定的になると考えます。

社内の受発注データなど定型データを生成AI活用基盤に保存する

ビジネスのプロセスでは、様々なデータが出現します。例えば、売上や仕入れなどの受発注データは、社内の業務システムの中にあります。これらを生成AIで自由に分析できる様な形で、生成AI活用基盤に保存すれば、業績向上にすぐ活用できます。先に書いたように細かな分析を実施すれば、業績向上の糸口が掴めるので、生成AIを活用して分析します。

これらのデータは既に定型化されており、生成AI活用基盤の構築はそんなに難しくはないと思います。これらの定型データを、IT部門に依頼せずとも、誰もが自由に生成AIで活用できるようになれば、飛躍的に経営判断のスピードアップが可能になります。

社内で未活用の非定型データを生成AI活用基盤に保存する

また、社内には顧客との面談記録、報告書類、出退勤時間のデータ、さまざまな目的で作られたExcelファイルに至るまで、多種多様なデータが存在します。しかし、今までは大半のデータがうまく活用されずに廃棄あるいは放置されていました。生成AIでの活用を前提に、これらを生成AI活用基盤に保存すれば、業務効率化が可能になります。

今まで人が、いちいち判断を加えながら作業していたような事柄、例えば、Excelでできた、顧客との面談記録を分析し、新商品の販売リストを、生成AIに作らせる事も可能になります。また、CSVデータで存在する過去の出退勤データから、長時間残業をする可能性のある人材を探し出し、その上司に残業削減のサポートを依頼するメールを打つなど、今まで社内システムになかったデータや、バラバラのシステムに格納されていたデータを活用することで、面倒だった事から解放されます。

具体的には以下のステップで進めます。これは経営者が主導し、全社で進めるべき仕事です。

  1. 社内にあるデータを、まずは集める
  2. 社内の業務システムのデータを、必要な部署が自由に使える様にする
  3. 生成AI活用基盤の管理ルールを作り、安定的に運用する

1.社内にあるデータをまずは集める

定型データについては、社内のシステムから、生成AI活用基盤に持ってくる仕掛けを、IT部門に開発してもらいます。最近は簡便なツールも数多く出現しているので、そんなに難しくはないと思います。

また、非定型データについては、少しでも生成AIが読みやすいように、ルールを作ってデータを保存していきます。表形式になったもの、箇条書きにしたものは、生成AIでも活用が容易です。

2.社内の業務システムのデータを必要な部署が自由に使えるようにする~データの民主化

集まったデータは、生成AI活用基盤に体系的に保存します。データは誰もが自由に使えるようにするのが基本ですが、業績情報や個人情報の様な、機密情報にはアクセス制限をかけて、どの部署の誰なら利用できるかを決め、制御する必要があります。加えて、生成AIにも一定の制御が必要になります。これはIT部門が対応すべき作業です。

3.生成AI活用基盤の管理ルールを作り安定的に運用する

次に、DX推進チームとIT部門が協力し、生成AI活用基盤の管理・運営を、安定的に行うようにします。特に非定型データの管理は重要です。新旧データが混在したりすると、せっかくの生成AIでも望む仕事はしてくれません。これらのデータの追加、更新、削除のルールを作り、正しく運営しないといけません。組織的にデータがおかしくならないように、チェックする体制が必要でしょう。

生成AI活用基盤を活用しDXを実現する

生成AI時代のDX成功の鍵は「データ保存ルールの徹底」だと考えています。生成AIはある意味、集合知なので、自社に最適化している訳ではありません。日本流の現場仕事でデータを丁寧に管理し、業務の精度を向上させましょう。これは生成AI活用における差別化になります。

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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)

1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。

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