DXを推進する具体的な7ステップ|DXの方法論5
DXの具体的な進め方ですが、私は以下の7つのステップで進めるのが良いと考えます。この推進の話は、経営者や部下の多い部長クラス以上のマネージャー向けで書きました。部下の数が少ない、みなさんは「自らがDX推進リーダーになる」と、読み替えていただければ良いと思います。
- DX推進チームのメンバーを抜擢する
- DX推進リーダーに必要な資質
- DX推進者チームを教育する
- DX推進チームを中核戦力として、DX推進の小さな実績を作る
- DX化の土壌を作る
- DXスキル保有者を全社に拡大する
- 経営者・マネージャーの夢想を実現する
1.DX推進チームのメンバーを抜擢する~意欲がある隠れた人材を探す
次に自社の若手を数名抜擢して、DX推進チームを作り、DXを活用した業務改善を、ちょっとはじめてみることです。現場業務を知っていて、生成AIやDXが好きそうな若手を3~5名抜擢してやらせてみましょう。
DX推進者に求められる資質とスキルは3つ
- 現場の業務やプロセスを知っていること
- 業務改善や業績拡大の意欲があること
- 達成意欲が高く粘り強いこと
※加えて、ExcelなどIT活用についての知識があればなお良し
この基準で見る限り、普通に仕事で優秀な人をDX推進者に抜擢すれば良いのですが、「忙しいので、うちのエースを抜かないください」など、現場が抜擢を阻むのが現実だと思います。なので、別視点から、素養のありそうな人材を抜擢するべきです。
隠れた逸材を探せ~ドンくさい人に注目
私がDXの様な新しい事をやる際、担当者として注目するのは、「達成意欲」と「粘り強さ」はあるが、現職の評価は、さほど高くない人材です。
一般的な仕事は、スケジュールを気にしつつ、いろんな部署、いろんな事に目配せをしながらパラレルに進める必要があります。いわゆる職場でドンくさい人と呼ばれがちな人は、このパラレルが苦手です。ただ、こういった人材は一つの事だけに集中すると、非常に力を発揮する人材が多いと思います。こういった人はDXや新規事業の様な、スケジュールの縛りは厳しくないものの、頭も体ものめり込んで、粘り強く取り組まないといけない仕事に向いています。
私は、今でこそマルチな仕事をこなしていますが、20代はぴったりの意欲はあるが、ドンくさい人材でした。営業部門から、わずか入社半年でIT部門に異動になり、じっくりと粘り強くやる仕事に代わったお蔭で、早期退職せずに済みました。よって、パラレルが苦手な人材を抜擢し、DX推進者にするのが、人材の活性化にもすごく良いと思っています。
DX推進者の抜擢にはアセスメント活用が有効
こういった隠れた人材を抜擢するのは、人事も直属の上司も、隠れた才能には関心を持っていないので、なにがしら判断のためのデータが必要になると思います。こんな場合にはDXスキルアセスメントが有効です。インソースでは、こういったアセスメントを開発しています。良かったらご活用ください。トライもできるので、問い合わせてみてください。
2.DX推進リーダーに必要な資質
DX推進を主導するリーダーの抜擢は、DX革命の成功のカギを握ります。そのリーダーに求められる資質は、推進者に求められるスキルに加え、現場業務に精通している事と、経営者と同じ視点で事業を見られることの、2点が必要です。
現場業務に精通していること
あるべき論の全社的なDX化は、一見、論理的で凄く良く見えます。しかし、DXを使っていくのは業務に携わる、現場で働く人たちですので、DX活用の場面で、現場に無理があればうまくいきません。現場の課題を、徐々にDXで改善することを想起し、ステップを踏み進めていける、賢い人材が必要です。推進リーダーにはそういった人材が必要です。
経営者と同じ視点で事業を見られること~長期利益が分かること
これはなかなか難しいのですが、経営者と同じ損得勘定ができる人材が求められます。企業には短期、中期、長期の損得がありますが、全社DXの実現は時間がかかり、長期利益の実現に、ほかなりません。社内外の環境が変わろうと、経営者視点で、粘り強くDXの実現に専心できる、賢さが必要です。
AIやITに強くなくていい~リーダー力重視
DX推進リーダーは、将来の幹部候補生の中から選んでください。社内で新しい事業をスタートさせたり、新店開設をやるようなものです。今現在、ITは弱いのであれば、DX推進リーダーに抜擢し、自ら知識をつけて育ってもらう事で、経営者として必要な新分野開拓力も身に着くと思います。(知識やスキルなら、インソースの教育やコンサルで身につけられます)
3.DX推進チームを教育する~2025年型のスキルを身につける
2025年型のDX推進チームには、生成AIを活用して、業務を変革できるスキルが必要だと考えます。そのために、以下の5つのスキルを身につける必要があると考えます。
①ITの基礎知識~ITが得意なことを知っている
ITに関する基礎知識として、連続処理だとか、定型処理など、「ITが得意なこと」を知っている必要があります。また、最近の生成AIは、判断業務やチェック業務なども、得意であることを、知っている必要があります。また、データベースの活用知識も重要です。
②プログラミングスキル~生成AIとPythonで業務システムを作れる
生成AIの複雑なプロンプトを作成するスキルと、Pythonのプログラミングスキルで業務システムを作成するスキルは、2025年現在、極めて有効です。バイブコーディング(生成AIでプログラムを作る技術)が普及してきており、以前より簡単かつ、ハイスピードでシステム開発ができるようになっています。
生成AIが作ってくれたコードを、Pythonで加工し、求めるシステムに組み上げることができれば、DX推進者として、現場で望むシステムを短時間で作り上げる事が可能です。
③業務改善力
業務をIT化する際、今の業務のやり方を改善し、効率化するのが基本です。例えば、効率の良い仕事は、業務フロー図を作成すると、一直線になります。しかし、効率の悪い仕事は、途中で手戻りが発生するポイントが存在するなどして、ジグザクな図になります。このような業務は一直線に進むように、IT化と同時に業務改善も実施します。
よって、業務を図式化したり、業務を数値化したり、過去の業務改善事例を、たくさん学ぶなどして、業務改善スキルを強化する必要があります。
④要件定義力
発見した課題に対し、どうITを適用するかを着想し、文書化するスキルが要件定義力です。上記3つのスキルを踏まえて、IT化の仕様を作成します。身に着けるには、やはり場数を踏むのが一番です。あれこれ考えたり、やってみて、粘り強く身につけていくのが現実的です。
⑤ITに関するコストとリスク
ITの活用には、多額のコストがかかります。IT化のコストで、経営が行き詰まる事すらあります。DX化するとなれば、費用対効果が重要になりますが、コストが分からなければ判断できませんし、社内の説得もできません。
また、情報漏えい、サイバー攻撃なども増えています。リスク感覚なしにDX化はありえません。また、リスク対策のコストも知っておく必要があります。
4.DX推進チームを中核戦力として、DX推進の小さな実績を作る
DX推進チームのスキルで、各部署の小さな課題を、まずは解決してみましょう。例えば当社であれば、健康診断業務の自動化、営業会議資料への個人別売上データの転記などを実施し、生成AIやPythonなどが役に立つことを社員に示しました。
健康診断の自動化では、福利厚生担当者の作業時間が7割ほど削減され、営業会議資料の自動作成では、全社で年間1,200時間の削減効果が出ました。
5.DX化の土壌を作る~組織全体で生成AIの感動を共有する
DX化は、ある種の革命です。革命の実現には多数の同志が必要です。そのためには、生成AIの利用ができる環境を社内に作り、社員に教育を施して、生成AIをできるだけ多数の人が利用できる様にします。マネージャーが感じた「感動」を組織全体で共有するのです。
6.DXスキル保有者を全社に拡大~新入社員のDX人材化がおすすめ
生成AIを皆が活用し、小さな実績が結果として出ると、全社にDX活用の機運が高まってきます。そうすれば、しめたものです。革命は成功しつつあります。次は追加メンバーを多数、養成していきます。特にお勧めなのは、新入社員をDX人材化することです。若ければ覚えは早いですし、何より現場人材を抜かなくていいので、社内の抵抗も少ないです。
インソースでは、5年前より生成AI活用の際に必須となる、Pythonプログラミングスキルを、新入社員全員に付与してきたので、今では営業担当者を含む100名以上の若手が、プログラミングできるようになっています。なので、先に申し上げたバイブコーディングで多様なIT開発を進めており、DX活用例がどんどん出てきます。
7.夢想を実現する~AIによる教育システム、AI営業の実現
改めて、マネージャーの夢想したDX化の青写真を、具体化する時は来ました。社内にはマネージャーの夢想を、DXでどうやったら実現できるかの、要件定義ができる人材が多数生まれています。このタイミングでIT事業者や、コンサルも加えてDX化を推進すれば、低コストかつスピード感を持って、実現できると思います。
私の夢想は、生成AIを活用した、社内教育システムであり、営業担当者の代わりに、提案書類を作ってくれるAI提案システムでした。実は既に実現もしています。
AI社内教育システム~AIアプリケーション
実はAI-OJTと名付けた、AIアプリケーションを既に開発しています。社内で発生する業務上のトラブルや、事故の発生を、防止する目的で開発しました。生成AIが事故報告書からケーススタディを自動作成し、回答しながら学ぶものです。難問揃いで、教育効果の高い仕組みとなっています。外販もしています。

AI提案システム~社内AIエージェント(社内)
これは、過去の社内データから提案書を作成する、社内AIエージェントとして開発しています。当社は幸い過去データが豊富に残っているので、活用しながらチューニングしていく方針です。

AIと対話しながら経営戦略を練る時代~これもインソースで提供しています
企業経営は判断の連続です。孤独な作業とも言えます。「株式の3割を持ち、将来は有望と自分では考える投資先が、資金不足に陥っている。増資を引き受けるべきか?」こういった課題があった場合、経営者として決断しないといけません。ただ、思い入れがある出資だった場合、感情的になり、経営判断が鈍る場合もあります。一方、財務部門や会計士などに相談しても、現時点の企業の財務価値での判断でのアドバイスになり、これまた妥当ではない気がします。
私はこういったアンビバレンツな判断をする場合、AIを活用するようにしています。「感情が入ることで判断が鈍る」「財務価値だけだと違う気がする」様な場合、先に生成AIに投げ、生成AIとのコミュニケーションの中で知見をもらい、考えを膨らませ、心を整えています。
AI戦略参謀FIRA
優秀なベンチャー企業が開発した、経営戦略を練る際、経営者の相談相手となるAIを、インソースでは代理販売しています。AIが600種類の人格を持ち、AI同士で議論を戦わせて、上記のようなアンビバレンツな相談内容にも対応しアドバイスできる、優秀なAIをご提供しています。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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