DX推進に人と金をつける|DXの方法論3
DXを経営目標とする企業は非常に多くあります。しかし、人と予算をセットで確保して、本気でDXを推進しようとする企業が少ないのも事実です。本気であるなら、新たに人材を確保し、必要な予算を既存業務に対するIT投資とは別枠で確保して進めることをお勧めします。
人材を確保する~DX推進をIT部門に丸投げしないで
DXをIT部門に丸投げする企業も多いですが、IT部門は社員から「パソコンが壊れたので、すぐ対処して欲しい」「ネットワークにつながらない」などの社内サポートで、一日中呼ばれ続けるのが日常となっているのです。なので、現状のIT部門のメンバーを増員するなり、新たにDX推進チームなど別部署を作り、DX教育を施した人員を配置する方が現実的です。
インソースでは別部署を作って生成AI開発を実施~文系出身者で開発
生成AI活用に際し、システム部門は生成AIの導入と活用基盤の構築、コスト管理を担い、IT部門以外の出身者で新設した部署で、AIエージェントやAIアプリケーションの開発を行っています。AI開発は理系ではなく、文系で文書作成能力の高い人材をあてています。AI=理系という固定概念は捨てた方が良いと思います。
予算を確保する~特に教育予算確保を
研修会社の社長だから言うのではありませんが、生成AIを導入するだけでは、DX化は成し遂げられません。社内で生成AIなり、ITを使いこなせる人材が多数必要です。また、教育を通じて、DX無関心層や反対勢力を減らすことも可能です。教育予算を想定以上に確保することをお勧めいたします。前述の通り、AIエージェントは、若手なら3日ぐらいの研修で開発できる様になるので、早くスタートするのが得策です。
経営者自らDX推進を熱く語る
「経営計画に入れ、人も予算もつけた。後は部下が、がんばってくれるはず」ではDXは推進されません。神輿に乗る様な姿勢では、まず、うまくいきません。新規事業開発と同じで、経営者の本気を示す必要があります。
経営者が率先して、DX推進を情熱的に語るべきです。DXで自部署の課題が解決できる事、自社の未来が開ける事を熱く語り、DX推進の支援者を増やしていくのです。私の経験では週に最低3回、1年間で100回ぐらい語らないと人は動きません。熱意と回数がセットで必要です。
経営者がDX推進に関わり続ける~保護とテコ入れと激励
私の経験では、組織の中でDXの様な新しい事をやるチームは、たとえ経営者が設置したものであっても、たぶん迫害されます。新しい事は常に社内の負担が増える割には成果が乏しいからです。よって、経営者がDX推進チームを積極的に守ってあげないと、期待した成果が上げられないばかりか、DX推進チームが瓦解する可能性があります。社内に対しチームが頑張っていることをアピールして守ってあげることが大事です。
また、定期的にチームのテコ入れを行うことも必要です。2週間に1回程度、全メンバー参加のミーティングを開催し、進捗確認や各メンバーの抱える課題を確認し、激励すべきです。小さな事の様に思えますが、継続して経営者が関わり続ける事が重要です。
新たな課題対応も必要~攻めの姿勢で組織の生産性向上、採用・配置転換、事業強化
課題1:組織とチームの生産性向上も大事
DX先進企業では、生成AI導入により、働く個人の生産性は上昇し、残業時間抑制につながった事例などは出ていますが、チームや企業全体の生産性が、向上していないとのお悩みも出ています。単に生成AI導入を実現するだけではダメで、会社全体、各部、各チーム単位で真剣に、徹底的に、生成AIを活用する目標設定が必要です。AIを社内の新しモノ好きの、高価なTOYで終わらせない、経営者の執念が必要です。
課題2:採用、配置転換、組織強化、攻め姿勢で対策を!
AIスタートアップCognition社が2024年に開発したDevin(デビン)に代表される、人に代わって自律的にソフト開発をするAIは2025年現在、入社4年目社員と同程度の実力があると言われています。近い将来のソフト開発者余剰を予測し、日本国内でも、新卒採用を抑制するシステム開発会社が出始めています。
経営者としては、今後の採用人員数や、ホワイトカラー人材の職種転換について、考える必要があります。また、一方、人材が確保できれば、営業や新規事業部門の強化が、はかれるチャンスも生まれます。いずれにしろ、生成AI時代の組織に、早めに攻めの姿勢で、対策を考え始める方が良いと思います。
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<本記事の筆者>
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長
舟橋 孝之(ふなはし たかゆき)
1964年生まれ。神戸大学経営学部商学科卒業後、株式会社三和銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、システム開発や新商品開発を担当。店頭公開流通業で新規事業開発を担当後、教育・研修のコンサルティング会社である株式会社インソースを2002年に設立。2016年に東証マザーズ市場に上場、2017年には東証第一部市場(現プライム市場)に市場変更。
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